建設業の一人親方とは?知らないと損する課題と解決法5選を解説

最終更新日:2023年12月25日

建設業の一人親方とは?知らないと損する課題と解決法5選を解説
建設業には、一人親方と呼ばれる働き方があります。従業員を持たず、自分自身ですべての業務をこなす働き方です。1人ならではの魅力がありますが、それと同時に課題もあります。今回は知っておきたい課題とその解決法を解説します。
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建設業における一人親方とは

最初に、建設業における一人親方とは、どのような働き方であるのか解説します。

一人親方という働き方

建設業における一人親方とは、従業員を雇用せずに、親方だけで案件をこなす働き方です。一部、家族を従業員に含む場合がありますが、基本的には本人だけで従業員はいません。
以前は「1人でできるほど一人前になった」ということを一人親方と呼ぶことがありましたが、現在では独立して1人で働くことを指す場合が大半です。
従業員を雇用していないため、給料を支払う手間が発生せず、自分を中心に仕事を受注したり取り組んだりできます。
ただ、1人だからこそ課題が生じることもあるため注意しなければなりません。

意図しない一人親方は違法の可能性あり

自分から個人事業主になったのではなく、会社からの指示で一人親方になった場合は違法の可能性があります。
たとえば、所属する会社から仕事を発注され、指示を受けながら作業するなどです。
これは、偽装請負と呼ばれる違法行為に該当する可能性があります。
一人親方でありながら、勤務時間を管理されたり現場で細かく指示を受けたりする場合は、法律面で注意しなければなりません。

一人親方として働くにあたっての5つの課題

一人親方として働くことには魅力がありますが、それと同時に課題があります。
5つの課題があるため、それぞれの課題について理解を深めましょう。

労働時間の管理

一人親方は、労働時間を管理していないことがあり、これが問題になりかねません。
長時間労働は体調の悪化などを招く原因となり、最終的には休職につながります。
仕事を受注できなくなると、収入が途絶えて生活に影響が出るでしょう。

安全性の確保

建設現場で働く以上は、安全性の確保を特に重視する必要があります。
最大限の安全性を確保できていないと労災が発生する原因となりかねません。一人親方が怪我すると収入が途絶える原因となるため、これは非常に重要な課題です。
基本的には、発注者が安全性の確保を心がけなければなりません。ただ、一人親方が元請けとなる仕事は「ちょっとした仕事だから大丈夫」と慢心による失敗が生じるかもしれません。
どのような状況でも安全第一で仕事に取り組むことが求められます。

社会保険への加入

一人親方は会社員ではなく個人事業主に分類されるため、自分自身で社会保険へ加入しなければなりません。
ただ、これを認識しておらず、適切に加入できていない課題があります。
国民健康保険や国民年金等に加入し、適切に保険料を支払わないと、差し押さえなどの問題に発展しかねません。一度手続きしてしまえば後は支払うだけであるため、対応することが求められます。

契約内容の吟味

契約時には契約内容の確認が求められます。
一人親方にとって不利益のある契約内容となっている可能性があるため、詳細を評価しなければなりません。
ただ、一般的に契約書は難解な用語が利用されるため、自分自身での吟味は難しいことが課題です。
多くの場合、提供された契約書の内容に合意するしかないのが実情でしょう。また、残念ながら契約書のように書面が発行されない環境もあります。
どちらの場合も契約面での課題を払拭できません。

各種税金の支払い

個人事業主であるため、自分自身で売り上げや経費などを管理し、確定申告や納税が求められます。ただ、確定申告は部分的に複雑な内容を含み、その難易度から一人親方の課題になりやすい要素です。
たとえば、個人事業主と法人では、経費に算入できる支出の範囲が異なります。
これを理解せずに確定申告することで、税額の算出を誤り、税務署から指摘されるかもしれません。

一人親方が課題を解決するためにやるべき5つの取り組み

一人親方が課題を解決するためには、以下の取り組みが必要です。

規則正しい労働時間の確保

自分自身で規則正しい生活を意識し、決まった労働時間を確保するようにしましょう。
具体的には、始業時間と終業時間を明確にし、基本的にはその範囲内で働くようにします。規則正しく勤務時間を確保することで、生活もそれに沿ったものとなるはずです。
一人親方のように個人で仕事していると、勤務時間が不規則になりがちです。会社員のように管理されるわけではなく、労働基準法の対象外でもあるため、認識が甘いことも背景にあります。

安全性対策の徹底

建設業で働く以上は、安全性対策を徹底しなければなりません。
さまざまな危険にさらされる可能性があり、一人親方はこのような危険を回避することが重要です。負傷などすると、工事を受注できなくなってしまいます。
なお、本人が安全性対策を意識することは重要ですが、発注者が積極的に取り組まなければなりません。労働安全衛生規則等の改正により、一人親方など自社の人材以外に対しても安全性対策が必須となりました。
もし「一人親方であるから」という理由で安全性対策がないがしろにされているならば、自分から適切な対策を求めることも大切です。

一人親方向け労災保険への加入

厚生労働省の調査によると、建設業は労災の多い業種に分類されます。
そのため、一人親方も労災が発生することを想定し、労災保険へ加入することが大切です。転落や転倒、熱中症などさまざまな労災が考えられるため、これらをカバーできるようにします。
なお、個人では加入できないイメージがあるかもしれませんが「一人親方労災保険組合」など、個人向けの労災保険が存在します。
保険料を納めれば一人親方でも労災保険へ加入できるため、このような制度を活用しましょう。

エージェントなどの活用

仕事を探す際には、一人親方向けのエージェントを活用することを検討しましょう。
エージェントとは、事前に条件などを登録しておくことで、それに適した案件を紹介してくれるサービスです。無料で利用できることが多く、報酬の交渉や契約作業など、一人親方だけでは負担になりやすい部分を代行してくれます。
一人親方が自分自身で案件を探し報酬の交渉、契約作業まですると負担が大きくなります。特に、日中現場で働きながら次の案件を探すとなると、休息できる時間が短くなるでしょう。
しかし、エージェントなど外部のサービスを活用すれば、日中働いている間に次の案件を探してもらえます。また、契約などを代行してもらえることでトラブルの発生を抑制できるなど、一人親方の負担を総合的に軽減してくれるため、積極的に活用すべきです。

事業者向けサービスの活用

近年はクラウドサービスを中心に、事業者向けのツールが提供されるようになっています。
たとえば、確定申告を支援するツールや請求書を発行するツールなどです。もし、自分自身で対応できることを増やしたいならば、このような各種サービスを活用すると良いでしょう。
サービスを利用しても、最初は専門的な知識の習得が求められます。ただ、理解してしまえば、一人親方として対応できることは増えるはずです。
すべてを外部に委託するとコストが高くなるため、事業者向けのサービスを活用し、自力での対応できることを増やすようにしてみましょう。

インボイス制度への対応

2023年10月1日より、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度が開始されました。「適格請求書発行事業者」に登録することにより、インボイス(適格請求書)を発行することができます。

【参考】
正しいインボイス作成のために理解しておきたい「6つの記載事項」
免税事業者がインボイス登録を判断する際に注意すべきポイント

インボイス制度に対応していない場合、発注した側が消費税の仕入税額控除制度を利用できないなどのデメリットがあります。
これから一人親方が仕事を受注するにあたって、インボイス制度へ対応しているかどうかは重要になるはずです。
発注側の納税金額に影響するため、対応していないと仕事が減少する可能性もあります。一方で、インボイス事業者登録をすれば、課税売上高が免税範囲であっても消費税の納税義務が生じ、事務処理負担も増えるなど悩ましいところではありますが、もし実際に受注状況に悪影響が出るようであれば、上記の事業者向けサービスなどを活用して事業者登録をすることも検討しましょう。

まとめ

一人親方として働くことには利点がありますが、同時に課題も生じます。
特に課題については事前に理解して、対策を意識しておかなければなりません。理解しておかなければ、損したりトラブルが発生したりする可能性があります。
なお、課題を解決する方法には、クラウドサービスの活用など自分自身での対応とエージェントなど外部による対応が考えられます。
自分の働き方などをふまえて、損失を抑えられる方法を選択することが大切です。

監修者情報

みのだ社会保険労務士事務所 代表 蓑田真吾(社会保険労務士)
大学卒業後、鉄鋼関連の企業に総合職として就職し、その後医療機関人事労務部門に転職。約13年間人事労務部門で従業員約800名、新規採用者1,000名、退職者600名の労務、社会保険の相談対応にあたる。社労士資格取得後にみのだ社会保険労務士事務所を開設し、独立。東京都社会保険労務士会所属(登録番号 第13190545号)。
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