売買契約書とは?《テンプレートあり》種類や書き方を分かりやすく解説!
最終更新日:2024年06月19日

執筆者: 宅地建物取引士 桜木 理恵
この記事では、売買契約書の役割や種類、書き方を解説します。また、売買契約書を作成する際の注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
- 売買契約書とは?
- 売買契約書の種類は?
- 不動産の売買に関する売買契約書
- 商品の売買に関する売買契約書
- 企業間等で継続的な取引を行う際の売買契約書
- 売買契約書の書き方と内容
- 売買契約書に印紙税は必要?
- 売買契約書のテンプレート・雛形はこちら
- 売買契約書を作成する際の注意点とは?
- 公平性を大切にする
- 具体的に記載する
- 契約不適合責任に注意する
- 売買契約書の取引・管理の重要性と課題について
- まとめ
売買契約書とは?
売買契約書とは、売主・買主間で商品やサービスの提供などの売買取引を行う際に取り交わす契約書のことです。
民法では、売買は売主・買主の合意のもとに成立すると定めており、必ずしも書面を作成する義務はありません。しかし口頭による約束では、支払いが行われないなど不利益を被る可能性があります。特に企業間の取引や高額な取引をする際には、売買契約書は欠かせない書類といえるでしょう。
売買契約書を作成することで取引内容を明確にでき、売主・買主が互いに合意したことを証明できます。そのためトラブルを未然に防ぐためだけでなく、トラブルが発生した際にも証拠として役立つでしょう。
なお、売買契約書には、取引する内容に合わせた事項を盛り込む必要があります。少なくとも商品やサービスの内容を詳細に明確にするようにし、売買価格や数量、納入期限など基本的な項目を記載します。
また、解除条件や自然災害などの不可抗力による損害が発生したときの損害賠償額の上限を定めておくことで、万が一のリスクに備えることができます。
出典:民法| e-Gov法令検索
売買契約書の種類は?
売買契約書には、個人間の売買契約や企業間の取引に際して締結するものなど、様々な種類があります。この章では、代表的な売買契約書3タイプについて解説します。
不動産の売買に関する売買契約書
戸建てやマンション、土地などを売買する際には、不動産売買契約書を作成します。不動産売買も民法上は口頭でも成立しますが、不動産ごとに状態や条件が異なるため、トラブルを防ぐためにも売主・買主間で売買契約を作成するのが一般的です。
また、不動産会社が不動産の売買仲介をする場合は、宅地建物取引業法により37条書面の作成が義務付けられています。宅地建物取引業法の第37条によって定められているため「37条書面」と呼ばれますが、宅地建物取引業者が宅地や建物を売買又は交換する際に交付しなければならない書面のことです。不動産売買契約書に37条書面に記載するべき事項を記載することで、売買契約書と37条書面を兼ねるのが一般的です。
なお、不動産の種別や条件、内容により、売買契約書の種類は異なり、取引に合わせて作成します。
たとえば以下のような契約書があります。
- 不動産売買契約書
- 土地売買契約書
- 土地建物売買契約書
- 区分所有建物売買契約書
- 売買予約契約書
- 買戻し特約付売買契約書
- 借地権付建物売買契約書
また、取引する不動産の種別や条件によって多少異なりますが、少なくとも以下の事項を記載するようにしましょう。
- 売主・買主の氏名・住所
- 売買代金・支払い方法、支払い時期
- 対象不動産の所在や地番、面積、構造など
- 引き渡し時期・所有権移転登記の時期
- 売買代金以外に授受する金銭
- 契約解除となる条件(手付解除・ローン特約など)
- 損害賠償額・違約金に関する定め
- 契約不適合責任について
出典:宅地建物取引業法|e-Gov法令検索
商品の売買に関する売買契約書
商品の売買を行う際に締結する売買契約書は、企業間同士の取引だけでなく、企業と個人が取引を行う際にも作成します。前述のとおり、売買は当事者間の口頭の約束でも成立します。売買契約書の内容に関して当事者の双方が同意すれば、契約内容は基本的に自由に設定することができます。
売買取引する商品を特定できるように、商品名や製造番号や仕様、カラー、数量などを記載し、価格や納入期限など間違いないように明記しましょう。
また自然災害など不可抗力によって商品が滅失や毀損した場合の危険負担や、契約内容と異なる商品が納品された場合に備えて、契約不適合責任について定めておくと安心です。
契約不適合責任とは、以下のような責任をいいます。
買主が売主に対して、商品の補修や代替品の納品を請求できる権利
●代金減額請求権
買主が売主に対して、商品に数量不足や不良品があった場合に、代金を減額することを請求できる権利
●損害賠償請求
買主が売主に対して、納入が遅くなったことによって損害が発生した場合に損害賠償請求をできる権利
●契約の解除
買主が売主に対して追完について催告したのにもかかわらず契約の履行をしないときは、契約を解除して代金の返還を求めることができます。
企業間等で継続的な取引を行う際の売買契約書
企業が特定の企業と取引を行う場合、同じ商品やサービスを継続的に売買することがあります。しかしその都度打ち合わせをし、契約書を作成するのは非常に煩雑です。
取引をスムーズに進めるためにも、すべての取引に共通する事項は基本契約で締結し、都度異なる事項については、個別契約で対応するのが一般的です。たとえば、取引する製品や価格、納品場所などは基本契約で定め、納品日や数量は個別契約に記載します。
ただし状況や内容によっては、基本契約と個別契約のどちらが優先するのか不明確になるケースがあるので注意が必要です。一般的には直近に契約したほうが優先されますが、契約書にどちらに基づいた取引なのか、明記しておくようにしましょう。
なお、個別契約は、便宜上「注文書」と「注文請書」の形式を採用することもあります。
ちなみに基本契約と個別契約には、それぞれ以下の事項を明記するようにします。
基本契約 | 契約の目的・代金・納品場所・危険負担・契約不適合責任・基本契約と 個別契約の関係 |
個別契約 | 商品の数量・仕様・代金とその支払い方法・商品の引渡し時期と場所 |
売買契約書の書き方と内容
売買契約書の形式に、法的なルールはありません。取引する商品やサービスなど、取引に応じて必要な項目を記載するようにします。また記載する項目の順番も自由にレイアウトすることができますが、テンプレート(雛形)を参考にしていただくと、わかりやすくまた記載漏れもなくて済みます。
売買契約書に記載すべき主な項目は、以下のとおりです。
おもな項目 | 内容 |
基本合意 | 売主・買主を明示し、契約の目的を明らかにする |
売買取引の目的物 | 商品の名称や個数、サービスの内容 |
代金と支払い方法・時期 | 商品の金額やサービスの代金、支払い方法と時期 |
引き渡し場所・方法 | 商品の納品場所・受け取り方法・引き渡し期日 |
所有権の移転時期 | 商品の所有権が移転する時期 |
検査について | 商品の検査方法やその期間 |
遅延損害金 | 遅延損害金の利率 |
契約不適合責任 | 不良品や数量不足があった場合の定め |
危険負担 | 自然災害など不可抗力により商品が滅失した場合の 支払いについて |
契約の解除について | 売主・買主のいずれかが契約の履行をしないときなどに 契約を解除できる定め |
損害賠償について | 相手側に損害を与えたときの損害賠償について |
トラブルが発生したときの対応 | 契約書に記載していないことでトラブルが生じた場合は 協議の上解決する旨 |
売買契約書に印紙税は必要?
課税文書に該当する売買契約書を作成する場合は、収入印紙を貼付して、印紙税を納める必要があります。契約金額や文書の種類によって、納める印紙税は異なります。
なお、不動産の譲渡に関する契約書と建設工事請負に関する契約書については、2027年3月31日までは、以下のとおり軽減措置が適用されます。
文書の種類 | 売買契約書 |
第1号文書 | 譲渡に関する契約書 例:不動産売買契約書・土地賃貸借契約書 |
第2号文書 | 請負に関する契約書 例:工事請負契約書 |
第7号文書 | 継続的取引の基本となる契約書 |
【第1号文書】
記載された契約金額 | 税額 | 軽減後の税額 |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1千円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
【第2号文書】
記載された契約金額 | 税額 | 軽減後の税額 |
100万円以下 | 200円 | ―― |
100万円超200万円以下 | 400円 | 200円 |
200万円超300万円以下 | 1千円 | 500円 |
300万円超500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
【第7号文書】
1通または1冊につき | 4千円 |
出典:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
印紙税額 |国税庁
売買契約書のテンプレート・雛形はこちら
売買契約書は、売り手と買い手の間で、商品やサービスを取引する際に、様々な約束(目的、代金、引渡、契約不適合責任など)を書面として取り交わすものです。トラブルを未然に防止するためにも、適切な売買契約書が必要です。Word(ワード)形式のテンプレートは無料でダウンロードしていただけます。
売買契約書 のテンプレート一覧へ
売買契約書は、売り手と買い手の間で、商品やサービスを取引する際に、様々な約束(目的、代金、引渡、瑕疵責任など)を書面として取り交わすものです。トラブルを未然に防止するためにも、適切な売買契約書が必要です。Word(ワード)形式のテンプレートは無料でダウンロードしていただけます。
売買契約書を作成する際の注意点とは?
売買契約を作成するうえで、とくに注意すべきポイントを3つ紹介します。
公平性を大切にする
売買契約書は売主・買主双方の合意があれば、ある程度自由に契約内容を定めることができます。しかし、一方ばかりが極端に不利な内容にしてしまうと、後々トラブルに発展しやすいため注意が必要です。売買取引はなるべく公平性を保つようにし、契約内容や条件を取り決めましょう。
具体的に記載する
売買契約書に記載する内容は、なるべく具体的に記載するようにします。あいまいな部分を残しておくと、売主・買主間で齟齬が生じるおそれがあり、トラブルに発展しかねません。
たとえば引き渡し場所だけでなく、配送方法や時間、買主が立ち会う必要があるのかなど、なるべく詳細についても明記しておくとよいでしょう。
契約不適合責任に注意する
商品が売買契約書に定めた内容や数量と異なる場合、買主から契約不適合責任を問われ、損害賠償請求や契約の解除を求められる可能性があります。売買契約書を作成する場合は記載ミスがないように注意し、不良品があった場合のルールや対応を明記するようにしましょう。
売買契約書の取引・管理の重要性と課題について
売買契約書は売買取引の内容を明確にし、売主・買主双方が契約に合意したことを示す重要な文書です。売買契約書の期限が過ぎたまま放置しないように注意し、必要に応じて迅速にチェックできるように管理する必要があります。
たとえば紙の売買契約書であればデジタルファイルにし、クラウド上で管理しましょう。また更新期限をリスト化するなどして、期限切れを防ぎます。
売買契約書は企業にとって、機密情報ともいえます。情報漏洩などのリスクを最小限に抑えるためにも、適切に保管しなければなりません。デジタルファイルへのアクセス権限を設定し、閲覧できる人を制限することも必要です。
契約書の数や種類が多く、管理が難しい場合は、契約書管理システムの導入もおすすめです。導入コストはかかりますが、業務の効率化をはかることができ、売買契約書の管理が一元化できます。
まとめ
売買契約は売主・買主双方の合意があれば、契約内容や条件を自由に定めることができます。たとえば商品の仕様や取引条件、引き渡し方法などはできるだけ具体的に記載するようにし、万が一に備えて危険負担や契約不適合責任について明記するようにしましょう。
また売買契約書は、締結後の管理も重要です。売買契約の期限切れにも注意し、業務の効率化やセキュリティ面も重視して、大切に保管するようにしてください。
執筆者情報
桜木 理恵(宅地建物取引士)大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持
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