離職防止のアイデア|成功事例や取り組みの重要性を解説
最終更新日:2025年06月05日

本記事では離職防止につながる取り組みと企業の成功事例を解説します。
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働きやすい会社を作る6つのポイント
- 離職防止につながるアイデア
- 柔軟な働き方の推進
- 評価制度の整備
- 社内コミュニケーションの活性化
- 離職防止の成功事例
- 早期離職率の割合
- 従業員の主な離職理由
- 業務内容・働き方に対する不満
- 評価・待遇に対する不満
- 人間関係に対する不満
- 将来性に対する不安
- 離職防止への取り組みや施策をおこなうことが重要な理由
- 人材確保の重要性が増している
- 採用・教育コストの削減につながる
- 企業イメージの保護・向上につながる
- 従業員のモチベーション低下を防ぐ
- まとめ
離職防止につながるアイデア
人材の定着が多くの企業で課題となる中、従業員が安心して働ける職場作りが求められています。「柔軟な働き方の推進」「評価制度の整備」「社内コミュニケーションの活性化」の3つの観点から、離職を防止する取り組みを解説します。
柔軟な働き方の推進
働き方の多様化が進む中で、柔軟な働き方を導入することは、従業員の定着率を高めるために重要な施策のひとつです。
たとえば、リモートワークやフレックスタイム制度、短時間勤務などが挙げられます。これらの制度を用意することで、従業員は育児・介護と仕事の両立、通勤時間の削減、業務効率の向上を実現可能です。ライフスタイルやキャリアのニーズに合った働き方を選択できることから、自社への満足度が高まり、定着率の向上が期待できます。
ただし制度を導入する際には急激な変化による混乱を避けるため、段階的に進めることが大切です。たとえばリモートワークでは一部の職種や曜日から試験的に導入し、運用状況を分析しながら調整する方法があります。
評価制度の整備
従業員が自身の能力に対する評価に不満を抱くと、モチベーションの低下や離職につながる可能性があります。
そのため、公平で透明性のある評価制度を整備することが重要です。適切な評価を通じて正当なポジションや報酬を与えることで、従業員の意欲を引き出し、定着率を高められます。
公平な評価を実現するには、評価者への教育も欠かせません。客観的な視点で評価をおこなえるよう、社内研修や教育を実施し、評価基準や手法などを学ぶ機会を提供しましょう。
また、従来の評価制度に加え、新しい手法を取り入れることも有効です。
たとえば、「360度評価」は上司や同僚、部下など多方面からの意見を取り入れることで、公平性を高めると同時に、従業員の多様な貢献を発見することにつながります。
「MBO(目標管理制度)」では、従業員自身が設定した目標にもとづき評価をおこなうため、主体性が育まれ、モチベーションの向上が期待できます。
社内コミュニケーションの活性化
職場でのコミュニケーションが希薄になると、従業員同士のつながりが弱まり、従業員が抱える悩みや変化に気づきにくくなります。その結果、離職を防ぐための適切なサポートができず、退職者の増加につながる恐れがあります。
したがって、社内コミュニケーションを活性化させる取り組みは、従業員の定着率を高めるうえで非常に重要です。
具体的な施策としては、1on1ミーティングの実施やコミュニケーションツールの活用などが挙げられます。こうした取り組みは、若手やリモートワーク環境下でも受け入れられやすいのが利点です。
また、社内イベントやランチミーティングも形式を柔軟に工夫すれば効果的です。直属の上司や部下との交流に限らず、他部署の従業員とも気軽にコミュニケーションをとる機会を提供できます。多様な視点や意見に触れることで、従業員同士が刺激を受け合い、孤立感の解消やモチベーション向上が期待できます。
もちろん、日常的に上司や同僚が積極的に声をかけることも、従業員の悩みに早期に気づき、適切に対応するために重要です。
離職防止の成功事例
離職防止には従業員が働きやすい環境を整え、職場の魅力を高めることが欠かせません。柔軟な働き方や労働環境の改善、コミュニケーション活性化によって定着率向上や組織活性化を実現した企業の具体的な実践例を紹介します。
1. 柔軟な働き方の推進@i.element_text1>
A社では柔軟な働き方を推進した結果、離職率を28%から4%にまで引き下げることに成功しました。
具体的には100人100通りの働き方を目指し、人事制度を従業員が考え構築する取り組みをおこない「最大6年間の育休制度の策定」や「選択型人事制度」などを導入しました。
飲食サービス業のB社では、働くエリアを限定して働きやすさを目指した「転勤のない地域限定コース」を導入しています。
飲食サービス業界の離職率は約20%ですが、B社の入社半年後の離職率は10.5%(2023年度)にとどまっています。
参照:令和5年雇用動向調査結果の概況|厚生労働省
12ページ目「2 産業別の入職と離職」
2. 労働環境の改善@i.element_text1>
C社はオフィス環境を改善するためのフリーアドレス制の導入や、労働時間を適正化するための業務プロセス改革に関する相談窓口の設置など、多彩な取り組みを実施しています。
また、定型的な業務を自動化するRPAの導入で業務の自動化を進め、作業時間の大幅な削減も実現しました。
D社は部署に関係なく同じようなレイアウトの「ユニバーサルレイアウト」を取り入れました。
異動先のオフィス環境が似ているため、従業員はスムーズに作業に取り掛かることができ、環境の変化に対する負担やストレスの軽減に成功しています。
3. コミュニケーションの活性化@i.element_text1>
E社では個人面談の実施と育成体制の強化に取り組んだ結果、新入社員の意見を吸い上げ、不満や不安を解消できたことが離職防止につながりました。
F社は従業員の健康管理とコミュニケーション活性化ができるアプリを導入しました。
日ごとの歩数やAIの食事アドバイスに関する話題を通じて従業員同士の会話が増え、コミュニケーションの活性化につながっています。
早期離職率の割合
令和6年に公表された厚生労働省の調査によると、就職後3年以内の高卒離職者の割合は38.4%で、大卒離職者の割合は34.9%です。前年比では、高卒離職者が1.4P、大卒離職者が2.6P上昇しており、若年層の定着に課題が生じている可能性があります。
また、事業規模別に見ると5人未満の事業所では高卒離職率が62.5%、大卒離職者が59.1%であるのに対し、1,000人以上規模では高卒離職者27.3%、大卒離職者が28.2%です。
ここから、事業規模が大きいほど離職率が低いことがわかります。理由として、大規模事業所では労働環境や教育体制が整備されており、勤務制度や福利厚生も充実しているケースが多いことが考えられます。
さらに、産業別に見ると、離職率の高い産業の上位3位は次の通りです。
1位:宿泊業、飲食サービス業(高卒65.1%、大卒56.6%)
2位:生活関連サービス業、娯楽業(高卒61.0%、大卒53.7%)
3位:教育、学習支援業(高卒51.3%、大卒46.6%)
これらの業界では不規則な勤務形態や長時間労働、顧客対応のストレスといった要因が離職率を押し上げている可能性が考えられます。
参照:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
従業員の主な離職理由
従業員の離職理由はさまざまですが、業務内容や働き方、評価や待遇、人間関係、そして将来性への不安が主な理由として挙げられます。
以下ではこれらの離職理由について掘り下げ、企業に必要な改善点を解説します。
業務内容・働き方に対する不満
業務内容が本人の希望や適性に合っていない場合、モチベーションを保てず、不満が蓄積されて離職の原因となることがあります。こうした問題を防ぐには、定期的な業務内容の見直しや、従業員とのコミュニケーションを通じて希望や適性を把握することが重要です。
また、長時間労働や休日出勤が続く職場では、心身に負担がかかり、従業員の不満が高まります。ワークライフバランスを重視する従業員にとっても、プライベートの時間が確保できない状況は大きなストレス要因となり、離職に直結するリスクがあります。
このような状況を改善するには業務の進め方や働き方を見直すことが必要です。たとえば業務プロセスを効率化して時間外労働を削減する取り組みや、フレックスタイム制度の導入、ノー残業デーの設定といった施策が挙げられます。
評価・待遇に対する不満
評価や待遇への不満は転職を考えるきっかけになります。たとえば「評価基準が不明確で評価者の主観が影響している」「成果を出しているのに給与が上がらない」といったケースです。
特に年齢や勤続年数のみを重視する制度だと、優秀な若手の離職につながります。
評価や待遇に対する不満を改善するには、従業員が「正しく評価されている」と実感できるように評価の基準を明確にすることが大切です。成果だけでなくその過程も評価に加えることが望ましいでしょう。
また、高く評価した場合にはそれに見合う給与を支給するなど、報酬制度の見直しも必要です。
人間関係に対する不満
人間関係に対する不満も、離職率を押し上げる大きな要因のひとつです。人間関係が悪いと業務の円滑な遂行を妨げ、仕事の質が悪化します。悩みや不安があっても相談できず、言いたいことも言えないため、ストレスがたまります。
特にパワハラやセクハラなどのハラスメントが横行している場合、大きなストレス要因となり、離職につながります。
こうした問題を改善するために、管理職のマネジメントスキルを向上させるための施策の実施や、オープンなコミュニケーションがとれる環境作りに努めることが大切です。
将来性に対する不安
従業員が会社の将来性に不安を抱くことも、離職の大きな要因です。たとえば、市場環境の変化に対応せず革新性に欠ける会社や、長時間労働が常態化している会社などは、成長が期待できないと判断されやすくなります。
また、業績の悪化や売上げの低迷など、競争力の低下や成長の停滞が明らかになっている場合、従業員は自身のキャリアへの影響を懸念して退職を決断することがあります。
この問題を防ぐには、企業が市場環境の変化に迅速に対応し、競争力を維持するための具体的な成長戦略を打ち出すことが必要です。たとえば既存事業の見直しや技術革新を進めることで将来性のある企業だと示すことができます。
従業員が安心して働ける環境作りも重要です。働き方改革を進めて長時間労働を改善し、従業員が心身の健康を保ちながら働き続けられる職場を作る必要があります。
離職防止への取り組みや施策をおこなうことが重要な理由
離職防止への取り組みは人材確保やコストの削減、企業イメージの向上につながります。ここからは離職防止が企業にとって重要な理由を4つ解説します。
人材確保の重要性が増している
少子高齢化や人口減少に伴う労働力人口の減少により、人材確保の難易度が年々上昇しています。
また、終身雇用制度の崩壊や政府が推進する労働市場の流動化、働き方や価値観の多様化によって、転職に対するハードルも低下しました。
このような背景の中、離職を防ぐことは、企業にとって極めて重要な課題です。
特に優秀な人材を失うことは、単に労働力が減少するだけでなく、サービスや製品の質の低下を招きかねません。その結果、顧客や取引先からの信頼が失われ、企業全体の競争力を著しく損なうリスクがあります。
そのため、離職防止策を講じることで既存の人材を定着させ、組織の基盤を安定させることは、企業が存続し成長を続けるうえで欠かせない取り組みです。
採用・教育コストの削減につながる
人材の採用には、求人サービスの利用料や面接の実施費用、人件費など、さまざまなコストがかかります。さらに、採用後の研修や資格取得支援など、教育にも多大なコストが必要です。
誰かが離職すれば、これらのコストを失うだけでなく、再度採用から教育までおこなわなければなりません。
一方で、離職率が低下すれば、採用や教育にかかるコストを削減できます。その分、企業はコア事業へのリソース投入を強化でき、企業の成長を加速させられます。
したがって、離職防止策は人材を維持するためだけでなく、企業の利益向上にも直結する重要な取り組みです。
企業イメージの保護・向上につながる
従業員の定着率が高い企業は、「安定した職場環境」や「従業員の満足度が高い」といったポジティブな印象を与え、企業イメージの向上につながります。これにより、採用活動に好影響を与え、優秀な人材が集まりやすくなります。
また、企業イメージの向上は取引先や消費者からの印象にもよい影響を与え、結果として企業の成長と業績向上にも寄与します。
一方で、従業員の定着率が悪化すると、企業イメージの低下を招きます。離職率が高いという事実は求職者にネガティブな印象を与え、応募を避ける原因となります。
企業のイメージが低下することで業績にも悪影響を与える恐れがあります。
したがって、離職防止策は企業イメージの保護・向上に直結する重要な取り組みです。
従業員のモチベーション低下を防ぐ
従業員が離職すると、残った従業員の業務負担が増加し、疲労やストレスが蓄積してモチベーションの低下を招きます。
この状態が続くと、よりよい環境や条件を求めて離職する恐れが生じます。その結果、連鎖退職が起これば、人員不足により企業の活動維持が難しくなるリスクも高まります。
こうした事態を防ぐためにも、従業員がモチベーションを維持しながら働ける環境を整え、離職を防ぐことは極めて重要です。
まとめ
人材確保の重要性が高まっている中で、離職を防止して定着率を高めることは、採用コストの削減や企業イメージの向上につながり、企業の長期的な成長を支えます。アイデアとしては、柔軟な働き方の提供や評価制度の透明性向上、コミュニケーションの促進などがあります。
紹介した企業の成功例を参考にしつつ、自社に合った方法で離職防止に取り組みましょう。
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