「インボイス登録番号の通知が間に合わない!」という場合の対処法
最終更新日:2023年12月19日
今から申請しても登録番号がわかるのは1ヶ月後
この時期に出てくる質問として
「インボイスの登録番号が9月末までに手元に届かない場合、10月のインボイス発行はどうすればいいのか?」
というものがあります。
国税庁が公表している情報(2023年11月30日時点)では、インボイスの登録通知までにかかる期間は
- 電子申告で申請した場合:約1ヶ月
- 書面で申請した場合:約1.5ヶ月
とされています。
少し前までは電子申告で約1.5ヶ月とされていましたが、登録申請が少し落ち着いてきたせいか期間が短縮されました。
とはいえ1ヶ月での登録通知が保証されているわけではありませんので、今から電子申告で申請しても9月末までに通知が来ない可能性は高いです。
法人は通知がなくても登録番号はわかりますが、登録が完了するまではインボイスに登録番号を書くことはできません。
個人事業者については、通知がないと登録番号はわかりませんので、通知が来るまでは要件を満たした形でインボイスを発行することができません。
その一方で、2023年9月30日までに登録申請をした事業者については2023年10月1日に登録したものとして扱ってもらえます。
従って、登録通知が届くのが仮に10月31日だったとしても10月1日以降の売上などについてインボイスを発行することが可能です。
登録番号がわからない場合の対応方法
登録番号の通知が来るまでのインボイス発行方法
では、9月30日までに登録申請をしたものの10月に入っても登録通知が手元に届かない期間の対応方法について確認しておきましょう。
最近この対応方法を解説する資料が国税庁から公表されています。
インボイス制度の開始に向けて特にご留意いただきたい事項
インボイス制度において特にご留意いただきたい事項
どちらの資料にもほぼ同じ内容が書いてありますが、今回は「インボイス制度の開始に向けて特にご留意いただきたい事項」で確認します(この資料の2枚目に対応方法が記載されています)。
10月以降、登録番号の通知が来るまでの対処法として
- 事前にインボイスの交付が遅れる旨を先方に伝え、登録番号の通知を受け取った後に取引先にインボイスを交付する
- 通知を受けるまでは登録番号のない請求書等を交付し、登録番号の通知を受け取った後に改めて取引先にインボイスを交付し直す
- 一旦登録番号以外の必要な項目を記載した請求書等を取引先に渡しておき、登録番号の通知を受け取った後にすでに交付した請求書等との関連性を明らかにした上で、登録番号を書類やメール等で連絡する
この3つの方法の中では3が現実的な対応方法でしょう。
1の場合、取引先が待ってくれるのであれば問題ありませんが
「登録番号がわからないので請求書を発行できません」
といった説明で納得してくれない事業者もいるのではないでしょうか。
取引先の印象が悪くなる可能性もありますので、あまり積極的にオススメできる方法ではありません。
2の方法については、登録番号の通知が来たあとに改めてインボイスを発行する手間が生じます。
同じような請求書等を2回発行することになりますので、2回目の発行である点をわかりやすく記載しておかないと、受け取った側が勘違いして重複して支払ってしまうかもしれません。
3については、登録番号の通知が届くまではインボイスとして必要な記載項目のうち登録番号以外を記載した請求書等を発行します。
登録番号が手元に届いたら登録番号を取引先に連絡するための書類を作成し、その書類を保管するようお願いしましょう。
なおこの方法については
「すでに交付した請求書等との関連性を明らかにした上で」
とされています。
通常インボイスとして使用する請求書等には発行した事業者の名称や住所の記入があり、税務署から受け取った登録番号の通知書にも納税地と事業者の名称が記載されています。
例えば税務署から手元に届いた登録通知書のコピーを渡して保存してもらえば元の請求書等との関連性は明らかになるでしょう。
ただし、登録通知書のコピーをいきなり送りつけられても取引先の方は何をして良いのかわからず混乱するかもしれません。
そのため取引先に渡す文書の中に
- 既に発行した請求書等は登録番号の記載がないため、そのままではインボイスとして認めてもらえないこと
- インボイスとして認めてもらうためにはこの文書を保管してもらう必要があること
- いつの取引から登録番号を記載したインボイスを発行するか
といった説明を加えておいた方が、取引先もスムーズに対応できます。
あとから個別に連絡できない小売店などの対処法
今回の資料では、事後的に個別に登録番号を購入者に連絡するのが難しい小売店などの対応方法についても触れています。
具体的には
B)登録番号通知後にHP等で「弊社の登録番号は『T1234…』となります。令和5年10月1日から令和5年●月●日(通知を受けた日)までの間のレシートをお持ちの方で仕入税額控除を行う方におきましては、当ページを印刷するなどの方法により、レシートと併せて保存してください」と掲示
なお、こうしたお店で領収書などを受け取った場合、買手の経理処理には注意が必要です。
受領した領収書などを確認した時は登録番号の記載がありませんので、経理担当者は「インボイス以外」と判断する可能性が高いです。
購入した担当者が経理担当者にインボイスに該当する旨をきちんと伝えておかないと、せっかく全額を仕入税額控除できるところ、部分的にしか控除せずに消費税の申告書を作成することになります。
金額的には大きな影響はないかもしれませんので、割り切って「インボイス以外」として処理するのも一つの方法ですが、会社としての対応は決めておいた方がよいでしょう。
買手の仕入税額控除はどうなる?
同じ資料の中に、買手側の取扱いとして、登録番号のないインボイスを受領した場合に
- その事業者がインボイス登録を受けることが確認できている
- あとで正式なインボイスもしくは登録番号のお知らせをもらって保存する
もし登録番号を事後的にもらえなかった場合も、修正申告ではなく翌課税期間での仕入税額控除の減額で構わないとのことです。
インボイスは「一つの書類」で完結しなくてもいい
今回は国税庁の公表資料を参考に、今年の10月以降インボイスの登録通知が手元に届くまでの間の対処法を確認しました。
インボイスの取扱いについては意外と柔軟に対応してくれますが、そのうちの一つが
「インボイスは一つの書類で完結していなくてもOK」
という点です。
この考え方があるため、今回のような対応も認められることとなります。
将来、税務調査の場面などにおいて
「インボイスとして不備がある」
と指摘された場合も、他の書類で不足している記載事項を補完できないか検討してください。
いろいろなところに関わってくる考え方となりますので、ぜひアタマの片隅に入れておきましょう。
執筆者情報
加藤博己税理士事務所 所長 加藤博己(税理士・ファイナンシャルプランナー)税理士でありながらその枠にとどまらず、中小企業や個人事業主の経理業務の効率化をわかりやすく指導する専門家。中小企業の経営者が経理業務に苦戦する姿を見て、今後の中小企業の発展にはIT面からのサポートも欠かせないと考え、クラウド会計の導入やITを活用した顧問先業務の効率化を推進中。
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