不動産売買契約書とは?《テンプレートあり》記載内容や注意点などを徹底解説!
最終更新日:2024年06月19日
執筆者: 宅地建物取引士 桜木 理恵
この記事では、不動産売買契約書に記載すべき事項と、確認すべきポイントや注意点を紹介します。不動産売買契約の実際の流れや必要書類についても解説しますので、不動産売買契約書のテンプレート・雛形とあわせてぜひ参考にしてください。
不動産売買契約書とは一体何?
不動産売買契約書は、売買が成立したことを証明する大切な書類です。しかし民法によれば、売買は売主・買主の合意のもとに成立するとしており、必ずしも書面を作成する義務はありません。つまり「買う」「売る」の口約束でも成立します。
とはいえ、高額な取引であることが多い不動産売買契約において、契約書を作成せずに取引することはまずありません。個人間売買であっても、売主・買主間で作成するのが一般的です。
宅地建物取引業者が不動産の売買や交換、賃貸について仲介する場合は、宅地建物取引業法により、一定の事項を記載した書面の交付が義務付けられています。これを37条書面といいますが、不動産売買契約書に37条書面に記載すべき内容を盛り込むことで、不動産売買契約書=37条書面とするのが一般的です。
ちなみに37条書面は、不動産売買契約成立後遅滞なく交付する必要があり、宅地建物取引士による記名が義務付けられています。
出典:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方|国土交通省
不動産売買契約書の主な内容一覧
不動産売買契約書に記載すべき12の基本的事項について解説します。
- 売主・買主の氏名および住所
- 対象不動産の所在・地番
- 売買代金・支払い方法・支払い時期
- 対象不動産の引き渡し時期
- 所有権移転登記の申請の時期
- 売買代金以外に金銭の授受がある場合はその金額と支払い時期
- 契約解除となる条件
- 損害賠償額・違約金の予定
- 融資が受けられなかったときの措置
- 天災地変など不可抗力による損害の負担について
- 契約不適合責任について
- 公租公課の税負担について
売主・買主の氏名および住所
不動産売買契約の当事者である、売主と買主の氏名および住所を記載します。たとえば売主や買主が複数人いる場合は、それぞれの住所・氏名を記載することになります。認印を押印しても問題はありませんが、実印を押印するのが一般的です。
対象不動産の所在・地番
対象不動産を特定するために、登記簿の記録を参考に不動産の所在や地番を記載します。区分所有建物(マンション)の場合は、専有部分の表示とは別に、一棟の建物についても明記します。
不動産の種類 | 記載事項 |
土地 | 所在・地番・地目・地積・持分(共有の場合) |
建物 | 所在・家屋番号・種類・構造・床面積・延床面積 |
区分所有建物 | 建物の名称・所在・構造・延床面積・専有部分の階数の部屋番号・家屋 番号・種類・付属建物の有無・敷地権の種類とその割合・借地の場合は 地代やその期間・土地の所有者の住所・氏名 |
売買代金・支払い方法・支払い時期
売買代金は、売買契約締結時に手付金、引渡し時に残代金を支払うのが一般的です。
契約書には売買代金の総額・手付金の金額・残代金の金額と、それぞれの支払い時期と支払い方法を記載します。なお、中間金の支払いがある場合は、その金額と支払い時期も明記します。
対象不動産の引き渡し時期
対象不動産の引渡し時期を記載します。買主が売主に残代金支払った日に対象不動産を引渡し、通常は所有権移転登記も同日に申請しますが、特約等により別に引渡し日を定めた場合はその期日を記載します。
所有権移転登記の申請の時期
対象不動産の所有権移転登記の申請の時期を記載します。買主が残代金を支払った当日に、所有権移転登記を申請するのが一般的です。特約等により別に引渡し日を定めた場合はその期日を記載します。
売買代金以外に金銭の授受がある場合はその金額と支払い時期
売買代金以外に売主・買主間で授受すべき精算金があれば、その金額および授受する時期を記載します。たとえば固定資産税や都市計画税、マンションであれば管理費や修繕積立金などを売主・買主間で決済日において精算するのが一般的です。
契約解除となる条件
不動産売買契約が解除になる条件について定めたときは、解除できる条件と期日を記載します。たとえば以下のような条件が考えられます。
手付解除 | 相手側が契約の履行するまで、もしくは手付解除期日が到来する前 までは手付金を放棄することで解除できる |
住宅ローン特約 | 買主が金融機関から融資を受けられなかったときに解除できる特約 |
買い替え特約 | 買主が自宅の売却ができなかったときに解除できる特約 |
損害賠償額・違約金の予定
万が一、相手側の債務不履行により損害が生じた場合に備えて、損害賠償額をあらかじめ定めておき、その予定について記載します。損害賠償額を売買代金の20%とすることが多く、実際の損害が20%よりも少ない場合でも、不当に過大でなければ原則20%の違約金を請求できます。
融資が受けられなかったときの措置
買主が不動産の購入にあたって金融機関で住宅ローンを借り入れるケースで、もし融資が受けられないときは白紙にできる特約をつけた場合は、融資先や融資額を記載し、ローン特約期日までにその内容で融資が成立しないときは解除できる旨を記載します。
天災地変など不可抗力による損害の負担について
天災地変などの不可抗力により、引渡し前に対象不動産が滅失や毀損した場合の負担について、定めがあるときはその内容を記載します。不可抗力とは一般的に地震や津波、台風などによる自然災害をさしますが、戦争や反乱なども該当します。
不可抗力が原因で対象不動産が滅失した場合は、売主・買主いずれかの申し出により解除できるとするのが一般的です。
契約不適合責任について
売買契約で定めた状態と異なり、引渡し後に対象不動産に欠陥やキズ、数量に不足などがあった場合の売主の担保責任について定めがあるときは記載します。また瑕疵担保保険の加入の有無を記します。
公租公課の税負担について
固定資産税や都市計画税など、売主・買主間で負担について定めた場合はその旨を記載します。固定資産税等は1月1日の所有者が納税義務者になり、途中で切り替わることがないため、決済日に売主・買主間で精算するのが一般的です。
出典:宅地建物取引業法|e-Gov法令検索
不動産売買契約書のテンプレート・雛形はこちら
不動産売買契約書には記載すべきこと多く、トラブルを未然に防ぐためにも不足する事項がないように作成することが重要です。
テンプレートBANKでは、不動産売買契約書のテンプレートを各種用意しています。
不動産の種別に合わせて選ぶことができ、書面契約・電子契約の両方に対応(選択式)しているので便利です。Word形式のテンプレートを、無料でダウンロードしていただけます。
不動産売買契約書で確認すべきポイント・注意点
不動産売買契約書に記載されている事項はすべて重要ですが、とくに確認すべきポイント・注意点を紹介します。
売買の対象である不動産の所在や面積、構造などに間違いがないか確認しましょう。通常登記簿に記録された内容を記録しますが、万が一誤りがあった場合には売主は契約不適合責任を問われる可能性があります。
● 引渡しの条件・時期
通常売主は決済日に残代金を受取り、対象不動産を引き渡すことになります。しかし引き渡し猶予の特約がつけられている場合は、引き渡しまでに猶予期間が発生し、買主はその期間中は引き渡しを受けることができないため注意が必要です。
● 契約不適合責任について
契約不適合責任とは、契約で定めた内容と異なる状態で引き渡した場合に、売主が問われる責任です。しかし売主・買主の合意により契約不適合責任を免責とすることも可能です。また契約不適合責任については、その責任の範囲や期間について確認することが重要です。
● 特約や解除に関する事項
不動産売買契約には解除できる条件やその期日、また売主・買主間で定めた特約が記載されています。手付解除や住宅ローン特約、引き渡し猶予特約などが一般的ですが、定めた場合は条件や解除できる期日についてよく理解しておく必要があります。
不動産売買契約の流れ
不動産売買契約を締結する際の一般的な流れを、4つのステップで解説します。
ステップ1:重要事項説明
不動産売買契約締結前には、宅地建物取引士から重要事項説明書にそって、対象不動産について重要事項の説明をします。書面契約の場合は、売主も同席して行うのが一般的です。電子契約の場合は事前に買主に重要事項説明書(電子ファイル)を送付し、パソコンなどの端末を利用して行うことになります。
ステップ2:不動産売買契約書の読み合わせ
次に売買契約書に記載した内容を売主・買主で確認しますが、通常不動産会社の担当者が読み上げます。不動産売買契約を締結する前に、今一度売買代金や引き渡し日、条件などに間違いがないかチェックします。
ステップ3:不動産売買契約の締結
不動産売買契約書に記載された内容に問題がなければ、売主・買主は署名・捺印をします。不動産売買契約書は課税文書であるため、締結の際は印紙を貼る必要があります。また、双方の印で、割印(消印)することも忘れないようにしましょう。
なお、電子契約の場合は印紙を貼る必要はなく、ツールを用いて電子署名・電子押印(タイムスタンプ)を行います。
ステップ4・手付金の授受
最後に、買主は売主に手付金を渡します。不動産売買契約書に記載された内容を確認してから手付金を授受する必要があるため、買主は当日現金で用意するのが一般的です。
なお、手付金は、残代金支払い時に売買代金の一部となります。つまり、残代金を支払うまではあくまでも手付金であり、たとえば手付解除期日までであれば、買主は手付金を放棄することで契約を解除できます。
電子契約の場合は、手付金を不動産会社に預けておき、締結後に担当者を介して支払うことになります。
不動産売買契約に必要な書類
不動産売買契約に際して、売主・買主が準備すべき書類をそれぞれ紹介します。
売主に必要な書類
不動産売買契約に際して、売主が準備すべき書類を一覧にまとめました。なお、必要書類は、不動産の種別によって多少異なります。
必要書類 | 詳細 |
本人確認書類 | 運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど |
登記済証または 登記識別情報通知書 | 発行されたタイミングによって異なる |
実印 | |
印鑑証明書 | 発行後3カ月以内のもの |
収入印紙 | 売買価格に応じて納める印紙税は異なる。なお2027年3月 31日までは印紙税については軽減措置があります |
固定資産評価証明書 | 固定資産税・都市計画税の精算の根拠として |
建築確認済証・検査済証 | 建物の場合 |
境界確認書・土地測量図 | 土地の場合 |
購入時のパンフレットや 管理規約 | マンションの場合 |
仲介手数料 | 不動産会社へ支払う手数料で、売買契約時に半額を 支払うのが一般的。残りを決済時に支払う |
2027年3月31日までに作成する不動産売買契約書については、軽減措置が対象になります。軽減後の税額は、それぞれ以下のとおりです。
記載された契約金額 | 税額 | 軽減後の税額(2027年3月31日まで) |
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1千円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
買主に必要な書類
不動産売買契約に際して、買主が準備すべき書類を一覧にまとめました。以下のとおりです。
必要書類 | 詳細 |
本人確認書類 | 運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど |
実印 | |
印鑑証明書 | 発行後3カ月以内のもの |
収入印紙 | 売買価格に応じて納める印紙税は異なる。なお2027年3月 31日までは印紙税については軽減措置があります |
手付金 | 売主へ支払うもので、売買代金の10%程度が一般的 |
仲介手数料 | 不動産会社へ支払う手数料で、売買契約時に半額を 支払うのが一般的。残りを決済時に支払う |
まとめ
不動産売買契約書は、売主・買主間で取り決めた売買代金や引き渡し条件、時期などを明確にするために重要な書面です。トラブルを未然に防ぐためにも、記載漏れがないように注意しましょう。
テンプレートBANKでは、電子契約にも対応した不動産売買契約書のテンプレートを各種用意しています。
Word形式のテンプレートのダウンロードは無料です。不動産売買契約をスムーズに進めるためにも、物件の種別に合わせて選択の上ご活用ください。
執筆者情報
桜木 理恵(宅地建物取引士)大学在学中に宅地建物取引士に合格。新卒で大手不動産会社に入社し、売買仲介営業担当として約8年勤務。結婚・出産を機に大手ハウスメーカーのリフォームアドバイザーに転身し約5年勤務。その他信託銀行にて不動産事務として勤務経験あり。現在は不動産の知識と経験を活かし、フリーランスのWebライターとして活動。不動産や建築にまつわる記事を多数執筆。「宅地建物取引士」「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」「管理業務主任者」所持
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