インボイス制度に関する実務上のよくある質問 その2
最終更新日:2023年11月29日
なお、文中で「国税庁インボイスQ&A」と記載しているものは
「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和5年10月改訂)」を指します。
よくある質問<売手編>
Q1:取引先から返品を受けた場合や売上に対して値引きをした場合、インボイス発行事業者として何か対応が必要ですか?
A1:インボイス発行事業者は課税事業者に返品や値引きを行った場合には「返還インボイス」を交付する義務があります。
ただし、令和5年度改正により、返品や値引きの金額が税込1万円未満の場合には返還インボイスを取引先に渡さなくてよいこととなりました。
返還インボイスを発行する場合には
- 自社名及び登録番号
- 返品・値引き等を行った日付及び返品・値引き等の基となった販売日
- 返品・値引き等の基となった販売・サービス内容(軽減税率対象の場合は販売内容及びその旨)
- 返品・値引き等の金額を税率ごとに合計した金額(税込又は税抜)
- 返品・値引き等の消費税額又は税率
このうち2の基となった販売日ですが、一定の期間の記載で問題ないとされていますので、例えば
- 月単位
- ○月~△月分
【参考】国税庁インボイスQ&A問27・28、国税庁インボイスQ&A問60・61
インボイスのテンプレート紹介
Q2:月まとめの請求書(合計請求書)ではなく納品のつど取引先に渡している納品書をインボイスとすることは可能ですか?
A2:インボイスの様式については法律などで決まっていないため、納品書をインボイスとすることは可能です。
なお、インボイスに記載する消費税額については、ひとつのインボイスにおいて税率ごとに1回のみ端数処理を行うこととされています。
納品書をインボイスとするのであれば、納品書上でのみ消費税額の端数処理を行う必要があります。
納品書とは別に月まとめの請求書を発行される場合には、月まとめの請求書上においては消費税額の端数処理を行わず、1ヶ月分の税込合計金額のみ記載するなどの対応を検討してください。
月まとめ請求書に登録番号を記載すると、受け取った側はどの書類がインボイスに該当するのか判断に悩むかもしれません。
納品書をインボイスとする場合には月まとめ請求書には登録番号などインボイスと誤認させるような情報は記載せず、取引先には納品書がインボイスとなる点を伝えておく方が親切でしょう。
【参考】国税庁インボイスQ&A問25、国税庁インボイスQ&A問57、国税庁インボイスQ&A問67
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【インボイス制度対応】納品書(青・明細25行)
インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応した、ブルーベースの納品書テンプレートです。
合計請求書には取引明細が入らない場合など、納品書をインボイスとするケースがありますが、そのような場合にご利用ください。
登録番号記入欄、税率区分欄を設けた明細欄(25行)、そして10%・8%(軽減税率)それぞれの区分別小計・消費税額は自動計算されます。また、外税/内税/非課税の切り替えや端数処理の設定も可能です。
エクセルで編集してご利用ください。
Q3:インボイスは手書きで作成したものでも問題ないのでしょうか?
A3:インボイスは手書きで作成したものでもまったく問題ありません。
ただし、取引内容や消費税額などインボイスとするために必要となる項目の記載を漏らさないよう注意しましょう。
今まで使っていた請求書や領収書の用紙に必要事項を追記すればインボイスとして使えます。登録番号については、自社の登録番号のハンコを準備するなどして対応する方法も考えられます。
【参考】国税庁インボイスQ&A問26
よくある質問<買手編>
Q4:コインパーキングを利用した際に受け取った領収書はインボイスではありませんでした。この場合でも自動販売機特例により仕入税額控除を受けることは可能でしょうか?
A4:自動販売機特例はコインパーキングには適用できませんので、このケースでは仕入税額控除を受けることはできません。
インボイスなしで仕入税額控除が可能な自動販売機特例の対象となる自動販売機や自動サービス機とは、1つの機械で代金の受領とサービス提供がすべて自動で行われるものとされています。
該当するものとしては
- 飲食料品等の自動販売機
- コインロッカー
- コインランドリー
- 金融機関のATM利用時の手数料
コインパーキングや小売店内のセルフレジ、自動券売機などについては、機械そのものがサービス提供を行っておりませんので自動販売機特例を適用することはできません。
なお、御社の2期前の課税売上高が1億円以下(または前期の最初の6ヶ月の課税売上高が5千万円以下)である場合には、2023年10月1日から2029年9月30日までの税込1万円未満の取引については、一定の事項が記載された帳簿の保存により仕入税額控除が可能となっています(少額特例)。
このケースに該当する場合には、コインパーキングで受け取った領収書がインボイスでなくても仕入税額控除を受けられます。
【参考】国税庁インボイスQ&A問47、国税庁インボイスQ&A問111
Q5:クレジットカードで決済した費用については、クレジットカード会社が毎月発行するカード利用明細で仕入税額控除を受けることができるのでしょうか?
A5:クレジットカード会社が発行したカード利用明細は通常はインボイスの要件を満たしていませんので、仕入税額控除を受けるためにはカード加盟店から受領したインボイスの保存が必要となります。
ちなみにクレジットカード会社のホームページ等ではインボイス対応する旨の記述を見かけることがあります。
これはあくまでクレジットカード会社が直接請求するカード年会費などについてインボイス対応するという意味であり、クレジットカード会社が発行する毎月のカード利用明細がインボイスになるわけではありませんのでご注意ください。
なお、ガソリン代について石油元売り会社の名前で提供されるカードの中には、給油時のレシートがインボイスとならずに、別途発行される請求書がインボイスとなるケースもあるようです。
どの書類がインボイスに該当するかについては慎重にご確認ください。
【参考】国税庁質疑応答事例:クレジットカード会社からの請求明細書
Q6:クレジットカード会社が発行するETCカードについてはクレジットカード会社が発行するカード利用明細がインボイスに該当せず、別途高速道路会社が運営するホームページ(ETC利用照会サービス)からダウンロードした簡易インボイスのデータを保存する必要があると聞きました。毎回データをダウンロードして保存しなければならないのでしょうか?
A6:ETC利用料金の簡易インボイスデータのダウンロードについては特別な取扱いがあります。ETC利用料金については、インボイス制度開始直前まではETC利用照会サービスからダウンロードした簡易インボイスのデータを保存する必要があるとされていました。
しかしながら、インボイス制度開始直前に国税庁より
「お問合せの多いご質問(令和5年9月15日掲載))」
の追加問(4)において、ETCの利用が多頻度で保存が困難なときは
A) クレジットカード会社が発行するカード利用明細書を保存する(ただし個々の高速道路の利用内容がわかるものに限ります)
B) A)に加えて利用した高速道路会社等ごとの任意の一取引について簡易インボイスをダウンロードして保存する
という方法で問題ないとされました。
ここでいう「任意の一取引」とは高速道路会社等がインボイス発行事業者の登録を取りやめない限りは、年度や月単位ではなく事業を継続する中で簡易インボイスを1回だけ取得・保存することで構わないということです。
なお、ETCについてはクレジットカード会社が発行するもの他に高速道路会社が発行するものもあり、カードの種類により何がインボイスとなるか異なるようです。
どの書類がインボイスに該当するかについては、自社でご利用中のETCカードの種類やETC会社からの案内等を参考にご判断ください。
【参考】国税庁インボイスQ&A問103
執筆者情報
加藤博己税理士事務所 所長 加藤博己(税理士・ファイナンシャルプランナー)税理士でありながらその枠にとどまらず、中小企業や個人事業主の経理業務の効率化をわかりやすく指導する専門家。中小企業の経営者が経理業務に苦戦する姿を見て、今後の中小企業の発展にはIT面からのサポートも欠かせないと考え、クラウド会計の導入やITを活用した顧問先業務の効率化を推進中。
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