2024年問題が運送業界に及ぼす4つの影響と事例にみる対策を解説

最終更新日:2024年03月11日

2024年問題が運送業界に及ぼす4つの影響と事例にみる対策を解説
運送業では、働き方改革法案により人手が不足する2024年問題に直面しています。法律の改正により、ドライバーの働きやすい環境が整えられる反面、輸送力の低下が懸念される問題です。今回は、物流業界における2024年問題の概要や課題、解決に向けて大手企業の取り組みを紹介します。
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物流業界における2024年問題とは

物流業界で取り沙汰される2024年問題とは、2024年4月1日以降にトラックドライバーの時間外労働上限が年960時間に制限されることに由来する問題です。
働き方改革法案により、ドライバーの勤務時間が制限され、輸送力などに影響が出ると考えられています。
そもそも、物流業界は業務の特性上、長時間労働になりがちです。ドライバーの不足や通販サイトの即日配送サービス、新しい生活様式などさまざまな要素が影響しているからです。
特に、ドライバー1人あたりの負荷が高まっているため、国を挙げてこれを改善しようとしています。

2024年問題が抱える4つの課題

2024年問題は、大きく分けて4つの課題を抱えています。

人手不足

労働時間が制限されることで、物流を担うドライバーが不足する懸念があります。
今までと同じ輸送量を担保する場合、現在のドライバーだけではカバーできません。新しく、物流業界へとシフトしてくれる人材の確保が必要となり、それまでは人手不足が続くでしょう。
ただ、近年は人手が不足している業界が多く、ドライバーの確保には時間がかかると考えられます。特に大きな課題であると認識すべきです。

人件費の増加

2023年4月から、中小企業を含めて月60時間を超える時間外労働に対して、50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。もし、現時点で時間外労働が常態化していて、月60時間を超えている状態ならば、法改正により必然的に人件費が増加します。
また、時間外労働に制限が設けられることで、今までのように業務が回らなくなるかもしれません。たとえば、2人で輸送していた商品を3人で輸送するように変更するなどです。仮に時間外労働の上限により個々の残業が減少したとしても、雇用する人が増えては結果的に人件費が増加してしまいます。

物流コストの上昇

人材不足に起因して、物流コストが上昇すると考えられます。上記で解説したとおり、人手不足から人件費の増加が見込まれる状況です。運送会社は、増加した人件費を物流コストに転嫁する必要があるため、これは避けられないでしょう。
ただ、荷主に請求できる費用には限界があり、転嫁できる費用にも限界があると考えるべきです。物流コストの上昇を避けることは難しいですが、以下で解説する対策などを採用し、最小限に抑えることが望ましいです。

取引量の制限

2024年問題でドライバーなどの人数が不足すると、取引量に制限をかけざるをえません。
例えば、毎日500個の荷物を引き受けていた営業所が、400個までに上限を引き下げるなどです。ドライバーの数が不足して輸送能力が減少するならば、このような制限は日本中で設けられるようになるでしょう。
もし、制限を強化せざるを得なくなると、今までと同じようなサービス提供は難しくなるはずです。たとえば、通販サイトで注文された商品を翌日中に配送する要望には応えられないかもしれません。これは、荷主との関係に大きな影響を与える可能性がある要素です。

2024年問題の解決に向けた対策

2024年問題を解決するためには、以下3つの対策を取り入れていくことが求められます。

契約の見直し

2024年問題が顕著になってくると、ドライバーは今までと同じ労働環境では働けません。そのため、荷主とは輸送に必要な期間やその方法、コストなどの契約を見直す必要があります。
契約の見直しが失注につながるかもしれませんが、少子高齢化が進む昨今において人手の確保にも限界が生じると考えられるため、今までと同じだけの輸送力を提供できない可能性を加味して、様々な面から契約の見直しを検討する必要があるでしょう。

作業の効率化

作業の効率化を図らなければ、2024年問題の解決はできません。現状、物流業界が取り扱う荷物の数は非常に多く、これからもこの状況が続くと考えられます。仮に人手が減ってしまっても、効率よく輸送できる仕組み作りが必要です。
例えば、デジタルツールを利用した最適な配送ルートの算出などがあります。ドライバーの感覚で配送ルートを決定するのではなく、AIなどにデータを取り込ませ、最善の配送ルートを導き出してもらうものです。
また、荷物の積み降ろしを効率化するために、専用の設備を導入する選択肢もあるでしょう。人力の作業を機械化することによって、所要時間を短縮する方法です。設備投資は必要となりますが、2024年問題の解決に向けてある程度はやむを得ません。

勤務間インターバル制度の導入

従業員を適切に管理するため、勤務間インターバル制度を導入する必要があります。この制度は、前日の終業時刻と当日の始業時刻との間に、一定以上の休息時間を設けるものです。
運送業界のドライバーは、終業してから始業までの時間が短かったり、深夜勤務で曖昧であったりします。これを解決するために、制度としての導入が必要です。
もし、勤務間インターバル制度を導入するならば「継続11時間を基本とし、継続9時間を下回らない」という基準を考慮する必要があります。宿泊を伴う長距離貨物運送は、勤務間インターバル制度の例外とはなっていますが、今まで以上に従業員を守る意識が必要です。

2024問題の解決に向けた対応事例

2024年問題の解決に向けて、企業は取り組みを始めているため、今回は具体的な事例を3種類紹介します。

パレット化によるトラック台数の削減

日清食品とアサヒ飲料は、パレットサイズの異なる両者の製品を、効率よく同時に輸送するスキームを確立しました。
飲料と食料品であり、本来は異なったパレットで輸送したりそもそもパレット化されていなかったりしましたが、効率よく輸送するために両者が共存できるパレットを用意しました。
結果、重貨物である飲料の上に軽量な食料品を配置する輸送スキームが確立され、従来の方法よりも必要なトラックの数が20%減少しています。
また、トラックの台数が減少しただけではなく、荷物の積み下ろし方法にも改良を加えたことで、荷役作業の負荷が軽減、時間も短縮されました。
【参考】日清食品、アサヒ飲料、日本通運が関東~九州間における共同輸送を2020年9月11日(金)から開始 日清食品グループ

DXによる配送効率アップ

アスクル株式会社は、配送効率を高めるために、関連システムのDX化を進めています。商品受注から在庫の確保、出庫や配送までの流れをAIやRPAなどのツールで処理することで、少ない人手で処理できるようにしたものです。
特に、AIに大量のデータを学習させることで、道路の混雑状況を加味した配送ルートの自動作成に成功しています。また、配送日時の変更を自動的に受け付け、それを配送ルートに改めて組み込む機能なども実装されました。これらによって配送効率を高め、人手不足をカバーしています。
【参考】デジタルトランスフォーメーション銘柄2023|経済産業省

共同輸送による人材不足の解消

再度、日清食品とアサヒ飲料の事例ですが、異業種企業による混載により、共同輸送が実施されています。
効率よく、1台のトラックに積載し輸送することによって、本来ならば不足するドライバーの数を担保することが可能です。それぞれの企業が独自にドライバーを確保することがなくなり、効率よくドライバーに働いてもらえるようになりました。
なお、共同輸送はそれぞれの拠点間を結ぶものです。1台のトラックで、日清食品もアサヒ飲料も訪問する仕組みであり、どちらかの拠点まで荷物を運んだり回収したりする必要はありません。
【参考】「物流の2024年問題」への対応について|経済産業省
「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」を策定しました|経済産業省

まとめ

運送業に影響を与える2024年問題について解説しました。
法律の改正により、時間外労働の上限時間が今までよりも低く設定されるため、これが輸送力などに影響する問題です。
2024年問題を解決するためには、業務の効率化を図ったり新しい働き方を採用したりしなければなりません。今回、事例を紹介したとおり、2024年問題の解決に向けて対策している企業があります。このような企業の事例も踏まえながら、問題を解決したり影響を最小限に抑えたりすることを心がけていきましょう。

監修者情報

みのだ社会保険労務士事務所 代表 蓑田真吾(社会保険労務士)
大学卒業後、鉄鋼関連の企業に総合職として就職し、その後医療機関人事労務部門に転職。約13年間人事労務部門で従業員約800名、新規採用者1,000名、退職者600名の労務、社会保険の相談対応にあたる。社労士資格取得後にみのだ社会保険労務士事務所を開設し、独立。東京都社会保険労務士会所属(登録番号 第13190545号)。
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