電子契約のメリットと導入時の注意点

最終更新日:2023年12月05日

電子契約のメリットと導入時の注意点
現在、業種を問わず広く普及した電子契約。
企業として電子契約を導入するメリットは、なんといっても『コスト削減』や『スピーディーな契約締結』を可能にすることではないでしょうか。
そして、コンプライアンスの強化や改ざん防止などのセキュリティ機能が高いことも電子契約のメリットです。

それを可能にするのが「電子契約システム」です。
システム内で契約書のアップロードから送受信、保存・管理等すべての業務を完結させることができます。
そして、契約の相手方がシステムを導入していなくても利用できるため、相手方にとっても負担がありません。

それでは、電子契約の導入を検討するにあたって、そのメリットや手続き面での懸念点などをみていきましょう。
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電子契約、法的な効力は大丈夫?

従来は、紙媒体の契約書に署名捺印をして契約締結を完了するのが一般的でした。
最近では、関連する法整備も進んだため、あらゆる業種において電子契約を利用できる環境が整いました。

電子契約では、インターネットを利用して「電子契約ファイル」を送受信することで契約を締結するため、従来の「署名捺印」の代わりに、「電子署名」や「タイムスタンプ」を付与する形式で契約を締結します。
そして、当然のことですが、電子契約は法的効力が生じる契約となります。
これは、「電子署名法」にてしっかり保証されているからです。

しかしここで重要になってくるのが「真実性の確保」です。電磁的な文章は、紙媒体の文章に比べて改変や改ざんが容易です。そこで、それを防止するためにも「電子署名」や「タイムスタンプ」を付与した電子契約が求められています。
法的な効力の証拠を残すためにも、この仕組みを備えた電子契約システムを利用することが重要になってきます。

導入前に、自社の契約業務フローを確認する

電子契約システムを導入する前に確認しておくべきことは、自社がどのような体制で契約業務を管理し運用しているかという点です。

「電子化したい契約書の種類」、「契約書作成の頻度」、「契約対応にかかる期間」、「自社内での承認ルート」、「保管方法」などを確認し、導入後のスムーズな管理・運用を実現させるためにも、業務フローのどこに負担や時間がかかっているのかを明らかにしたうえでの検討・整備が必要になります。

検討した結果、導入範囲を絞り段階的に電子契約へ移行する方が効果的な場合もあるでしょう。
契約書は通常社外の取引先と締結するものですから、電子化を進める場合には、相手先の同意も必要です。また、相手先の手間が少なくて済む形式のシステムを選定するなど、配慮や検討も必要となってきます。

電子契約システムにも様々な種類がありますので、自社内外の前提条件を整理したうえで、どうような電子契約システムを導入すべきかの検討に移りましょう。

「事業者型」と「当事者型」の2つの手続き方法

前段で「電子契約システムにも様々な種類がある」と述べましたが、電子契約の方法は『電子証明書』の用意の仕方によって「事業者型」と「当事者型」の2つの方法があります。

事業者型の方法とは

電子契約システムを導入し、社外の取引先と契約業務を進めるうえで、契約の相手先の負担が気になるケースがあるかと思います。

「事業者型」の電子契約方法は、契約当事者ではなく、電子契約システムの事業者側で電子証明書を用意し、メール認証という形式にて契約者の本人性を担保する方法になります。
要するに、電子契約システムを利用して契約すれば、契約する当事者が「電子証明書」を用意し付与する必要がないため、非常に簡易的に、負担なく電子契約を締結することができます。
ただし、容易に勧められる反面「電子証明書」を電子契約のシステム事業者任せとするため、本人性を担保する点において不安が残るかもしれません。

当事者型の方法とは

前述の「事業者型」と比べると、契約当事者の負担がかかる一方、本人性の担保が高いのが「当事者型」の方法になります。
当事者型では、「電子証明書」を契約当事者それぞれが取得し契約書に付与する方法になるからです。

契約の相手先を考慮したうえで、どちらの形式が適しているかを検討する必要がありそうですね。
続いて、電子契約のメリットを確認していきましょう。

電子契約のメリットとは?

経費のコスト削減

電子契約では、従来の紙の契約書が不要になるため、コピーの用紙代・印刷代、送料等がカットできるほか、膨大な書類の保管に必要となるスペースの家賃がカットできる可能性もあります。

印紙税のコスト削減

そして、紙の契約書の場合、課税文書に該当する契約書には収入印紙の貼付が必要となり「印紙税」が発生しましたが、電子契約の場合には「印紙税」もかかりません。契約金額によっては印紙代も高額なりますし、チリも積もればで金額もバカになりませんから、メリットが大きいですね。
印紙税に該当するかどうかの判別や、印紙金額を確認したりする手間も省けますので、業務効率もよくなります。

業務効率化

紙の契約書では、契約締結の方法として郵送して署名捺印をいただくケースも多いかと思います。
郵送料がかかるだけでなく、郵送対応にあたる作業も手間です。また、万が一、返送されてきた契約書に不備があった場合にはさらなる手間がかかってしまいます。
電子契約はこのような労力から解放してくれますので、契約業務にかかる時間が短縮し業務効率化が期待できます。

さらには、紙の契約書は保管するためのコストがかかるだけでなく、過去の契約書を確認したいような場合に、わざわざ保管場所から書類を探してピックアップしなければなりません。すぐにはデータを引き出すことができないわけです。

電子契約システムを利用すれば、契約締結から保管までをシステム上にて一括管理できますので、管理業務についても効率化が期待できます。

契約締結のスピードアップ

ビジネスはスピードが命です。
紙の契約書の場合には当事者が対面にて物理的に時間を確保して契約締結をするか、郵送にて対応する必要があるため、スピーディーな契約締結は難しかったのではないでしょうか。
電子契約では、インターネット上で契約内容のデータを確認し、合意すればすぐに契約を締結することが可能です。スピード命のビジネスシーンにおいて致命的な遅れを回避することができます。

セキュリティ強化

紙の契約書の場合には、紛失、誤って破棄してしまうリスク、また、改ざんや、アナログな管理体制により契約の更新期限を逃してしまうようなリスクなど、契約締結から保管・管理まであらゆるリスクが存在します。
一方、電子契約システムには、セキュリティ機能や様々な設定機能が備わっていますので、このようなコンプライアンス上のリスクを防ぐ効果も期待できます。

ただし、そのための大前提として、セキュリティ対策機能が充実した電子契約システムを選定する必要があります。
電子ファイルとしてインターネット上に保管されるデータを守るためにも、ネットセキュリティに関する情報漏えいリスク対策は必須となります。

まとめ

電子契約には様々なメリットがありますが、システムを導入しても、生かされなければ意味がありません。また、場合によってはこれまで解説してきたメリットがあまり期待できないケースも考えられます。
電子契約システムの導入を検討する際には、前述したメリットを自社がどれくらい享受できるのかを事前に検証する必要があります。

コロナ禍を経てリモート環境や電子化が加速するなかで、電子契約システムも今後ますますと普及していくことが予測されます。
しかし、導入にあたってはイニシャルコストがかかりますし、運用を行うにあたってはランニングコストもかかります。また、導入当初はシステムに慣れるまでの負担も発生するでしょう。そして、相手方への配慮も必要です。
せっかくコストをかけて導入しても、メリットや効果の期待がそれほどでもなければ、負担の方が大きくなってしまいます。

事前の調査や検討を十分にしていただいて、最も効果のある電子契約システムを導入してください。

執筆者情報

エニィタイム行政書士事務所 代表 中村 充(行政書士)
早稲田大学商学部卒業後大手通信会社に入社、法人営業や法務業務に携わる。2009年に行政書士資格を取得し、2017年、会社設立及び契約書作成に特化した事務所を開業。弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士等各種専門家との連携体制を構築し、企業活動のバックオフィス業務すべてのことをワンストップで対応できることも強み。
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行政書士KIC事務所 代表 岸 秀洋(行政書士・銀行融資診断士)
司法書士事務所での勤務を経て、2006年に行政書士試験に合格、2014年に行政書士登録開業する。司法書士事務所勤務時代から約100件以上の会社設立サポートを経験してきたなかで、単なる手続き業務にとどまらない伴走者としてのサポートをしていきたいと考え、事業計画・損益計画の作成から融資のサポートや資金繰り計画など財務支援までおこなうのが強み。
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