仕事の効率を考える-「5S」の効力

最終更新日:2023年12月04日

仕事の効率を考える -「5S」仕事の5つの基本技-
4月は1年の中でも「新しい」ものが似合う季節です。「新学年」「新入生」「新年度」「新生活」「新製品」「新サービス開始」などなど。

アナタのまわりでも、そしてアナタ自身にもこの4月、何かの「新しい」が始まっていることでしょう。

そんな時こそ、「新しい習慣」を身につけるチャンスです。今年から新しく仕事を始める人も、この道何十年の人も「仕事の基本」はすべて同じ。今回はそんな最も大事な「仕事の基本」の一つ・・・をご紹介します。
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「5S」って何?

突然ですが「5S」って聞いたことがありますか?

「5S」とはその昔、日本製品が「安かろう」「悪かろう」と言われた1950年代に、今や世界を代表するあの自動車会社から生まれた活動のことです。

そしてその5Sは、今や自動車などの製造業に留まらず、建設業、流通業、サービス業、IT業、病院、福祉関係にいたるまで、ほとんどの業種・業態で活用されています。さらに、その考え方は、日本に限らずアメリカ、ヨーロッパ諸国から、中国、韓国、マレーシア、ベトナム、タイなど・・・世界中で「SEIRI」「SEITON」などと呼ばれて使われています。

そうです。「5S」とは、5つの活動の頭文字の「S」のことなのです。

この5つのSが世界中のあらゆる人に使われているのは、地域も業種も関係なく、仕事に、ビジネスに携わるすべての人たちに共通して有効だから。つまり大袈裟に言ってしまえば【人類共通の仕事の5つの基本技】!なのです。

「人類共通」ですから、これから新しいビジネスや生活が始まる人たちや、初心に帰るべきベテランさんにも、そしてアナタ・・・にも有効な考え方と言えます。

それでは、その5つのSをご紹介するとともに、中身を見ていきましょう!

整理―SEIRI

まず、最初のSは「整理(SEIRI)」です。整理とは何なのでしょうか?整理とは「キレイにすること?」「キチンと並べること?」いいえ。違います。

整理とは【必要なものと必要でないものを分けて必要でないものを捨てること】です。そしてその整理の対象は、物理的なモノに限りません。例えば、PCの中にあるファイル、メールを見る時間、情報や電話で話す内容、そしてちょっとした仕事などなど、あらゆるものが整理の対象です。

少し前に流行った「事業仕分け」なども、整理の一つと言えるでしょうね。マネジメントの父と呼ばれたP・ドラッカーは「マネジメントとは捨てること」とまで言い切っています。

つまり、捨てるという行為が「大切なことを絞り込む」ということに繋がり、「大切なことを絞り込む」行為が「大切なものとは何か?大切でないものは何か?」という、もっとも仕事の基本であることを考えることにつながっていくのですね。

整頓―SEITON

整理が終わったら次は「整頓(SEITON)」です。整頓とは何でしょう?

整頓とは、【必要なものだけを、誰でもがわかるように表示して、置き場を決めて、きれいに置くこと】です。

よく「整理・整頓」と言いますが、この言葉でなぜ最初に「整理」がくるのか、これでわかりますよね?整頓は、整理が終わってから、つまり『●表示して ●置き場を決めて ●きれいに置く』行為は、必要なものだけでやりたいからです。不必要なものまで表示したり、置き場を決めるのは無駄ですからね。整頓の前に整理で不必要なものは無くなってもらいたいのです。

そしてもう一つ、ここで大切なのは「表示すること」です。たとえ整頓する対象がキレイに並んだとしても、それが「表示」されていなければその整頓した人にしかわかりません。「誰もがわかる」というのが大事なのです。自分がいない時や、人にすぐに頼める状態であるということが、仕事の効率を上げるときに非常に重要な点だからです。

清掃―SEISOU

ここまで2つのSを説明しました。実は「5S」は、最初はこの整理のSと、整頓のSの2Sからスタートしたのです。ですので、ここから登場する3つのSは、徐々にこの2Sの完成度を上げるために改善されて追加されたものです。

その改善・追加のSの最初が「清掃(SEISOU)」のSです。

この意味はもう説明の必要もないですよね?清掃とは【身の周りのものや職場の中をきれいに、汚れのない状態になるように掃除すること】です。

もちろんきれいに掃除するという行為自体にも意味はあるのですが、清掃をすることによって、普段の異常に気づいたり、無意識にたまってしまう「不必要なもの」を見つけたりすることに役立ちます。

清潔―SEIKETSU

4つ目のSが「清潔(SEIKETSU)」です。
3つ目の掃除と4つ目の清潔は似ていますね。ちょうど1つ目の整理と2つ目の整頓が密接な関係にあったように、この掃除と清潔も同様の関係といえます。

清潔、とは一言でいうと【清掃された状態を常に高いレベルで維持すること】です。実はこれが簡単そうですごく難しいのです。ここからが、業種や扱う品目、つまりそれぞれの仕事の中身にかかわってくるからです。

「昨日やったから今日はやらなくても大丈夫」と思う人もいるでしょうし、「1週間に一度清掃すれば大丈夫」だと思う人もいるでしょう。「清潔ばかりを意識していたら肝心の仕事が疎かになっちゃうよ」と言う人もいるでしょう。

ですので、大事なのは「常に高いレベルで維持」できているかどうか?です。毎日やらなくても、週に一度でも、高いレベルに維持できていれば問題はないかもしれません。しかし、その「高いレベル」という目標に到達しているためには、「常に」という条件を満たすためには、それなりの頻度が必要になってくるはずです。

躾―SITSUKE

最後のS、それが「躾(SITSUKE)」です。(最近では「躾」という言い方が<上から目線だ~~>ということで5つ目のSは「習慣」=SHUKANにしよう・・・という人もいるようですが)

5Sの中での躾とは【4S(整理・整頓・清掃・清潔)を常に維持していくことが体質となっていること。また4Sのレベルを常に改善しようとする“姿勢が維持”されていること】です。


1回や2回の4Sではだめです。ちょうど「年末の大掃除」のように、「あ~!スッキリした!今日は気持ちいいや!」というのでは、5Sは完成されていません。最後のSが足りないのです。
言い方を換えると、「年末の大掃除」が必要のない状態、ない仕事、になっているように、日頃から習慣化されているようになっていることが「躾」と言えます。

そして最後に重要なのが、この「常に改善」の「姿勢を維持」することです。

「もっと、わかりやすく」「もっと便利に」「もっと早く」「もっと簡単に」「もっと楽に」やれる方法はないかしら?ということを、ずっと、いつも、考えている・・・そして思いついたら直ぐに行動に移して、その成果が次の4Sに繋がっていく。そんな状態にまでなるのが「5S」です。

「5S」がすべて

いかがでしょうか?
5Sの内容を一通りお伝えしましたが、どう思われましたか?

「なんだ!かんたんじゃん!」と思われた人もいるでしょう。
「簡単に見えそうだけど、やると大変だろうな」と思われた人もいるでしょうね。

5Sは簡単というのも正解ですし、大変だというのも正解です。要は習慣化できるかどうか・・・です。最初の立ち上がりが大変というのはどの世界でも同じです。習慣化できれば日々のアクションは簡単になってきます。

5Sはやってみるとその効果は絶大!だと言われています。仕事の内容や効率、精度はもちろんのこと、ある人は「5Sをやると人格まで変わる」とまで言っています。

さぁ、どうですか?この春、新しい始まりの時期・・・に、5Sをアナタも始めてみては?

執筆者情報

橘高総合広告研究所 代表 橘高唯史(中小企業診断士・フリーライター)
大手百貨店系通信販売カタログのディレクター業務に20年携わり、そこで培った「売れる理由」を体系化して2017年にコンサルタントとして独立。現在は公的機関の経営相談員やセミナー講師を務める一方、ライターとして執筆活動も行なっている。
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