在宅勤務導入に「テレワーク助成金」を活用しよう!
最終更新日:2023年12月05日

ただ、テレワークを実施したことがない事業者や、「どうやればよいのか?わからない」「テレワークの環境を用意するにはコストもかかるし」といった事業者の方々もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、テレワークに関する支援策や助成金について簡単にまとめてみました。まずは最初にこの記事を読んで、「それなら一度やってみよう!」と検討してくだされば嬉しいです。
「テレワーク」3つの支援策
今、テレワークを始めようと思ったら、使える支援策は次の3つがあります。実はこの3つの支援策は管轄する省庁が違います。
1.テレワークマネージャー派遣事業<総務省>
2.働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)<厚生労働省>
3.IT導入補助金<経済産業省>
総務省は、「電信電話」を管理しているので、その機能拡大としてテレワークを、厚生労働省は「働き方」を管理しているので、在宅勤務という要素でテレワークを、そして経済産業省は、「経済の活性化」を管理しているので、「サービスの拡大」という要素でテレワークを支援しようというわけです。
1の「テレワークマネージャー派遣事業」は、簡単に言えば「専門家を無料で使えますよ」というもの。3の「IT導入補助金」は、「オンラインネットワークで今までにないサービスを展開」して、売上を拡大しようとする事業者さんをサポートしようというものになります。
そして今、最も注目を集めているのが、2の「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」です。
「テレワーク助成金」について
「テレワーク助成金」と言えば、一般的にはこの「働き方推進支援助成金(テレワークコース)」のことを指します。また、従来のコースに加えて「新型コロナウイルス感染症のためのテレワークコース」が新設されました。そこで、今回はこの助成金についてご説明しましょう。
どんな人がもらえるの?-「対象事業者」について
まず、このテレワーク助成金を申請できる対象事業者のチェックです。以下の要件に当てはまる事業者の方であれば、この助成金申請の資格があります。
●労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業主であること
…厚生労働省の助成金の財源は保険料ですので、この条件は常についてまわります。
●次の表に該当している事業主であること
…いわゆる中小企業の範囲内という条件ですね。
業種 | A 資本金または出資額 | B 常時雇用する労働者 |
---|---|---|
小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他業種 | 1億円以下 | 300人以下 |
●テレワークを新規で導入する事業主(すでに試行的に導入しているものでもOK)
…テレワークの助成金ですので、この条件は当たり前ですよね(苦笑)
なお、「新型コロナウイルス感染症のためのテレワークコース」の場合、申請・交付決定前であっても2020年2月17日以降に取り組んだことであれば助成対象となります。
なお、今回特設された新型コロナ特例では要件として示されていませんが、通常のテレワークコースではもうひとつ項目があります。
●時間外労働の制限その他の労働時間等の設定の改善を目的として、在宅またはサテライトオフィスにおいて、就業するテレワークの実施に取り組む意欲があり、かつ成果が期待できる事業主であること
…説明を聞くと難しいように感じますが、要は「テレワークを使って、しっかりと残業時間を減らすように取り組みます」という意思を持っている方という意味です。これは後に説明する「成果達成」という項目に関連してきます。
どうすればもらえるの?-「実施する取り組み」について
では、具体的に何をすれば助成金をもらえるのでしょうか?それは次の5つの取り組みを、1つ以上実施することとなります。
1)テレワーク用通信機器の導入・運用
…シンクライアント端末(パソコン等)(*1)/VPN装置/ウェブ会議用機器/ソフトウェア/保守サポートの導入/クラウドサービスの導入/サテライトオフィス等の利用料 など
※ただし、パソコンやスマートフォンなどの購入はシンクライアント端末以外のものは対象外です。
*1…シンクライアント端末とは、外部のサーバーが処理をして、端末はその処理結果を表示するだけの機能を持つ端末機器のことを言います。個々のパソコンの内部ではデータを持たず処理をしないので、機器が盗難にあったり紛失したりしても、データが流出する怖れがありません。仕事用とはいえ、いわゆる個人が自身で使えるようなパソコンはシンクライアント端末とは言いません。
2)就業規則、労働協定等の作成、変更
3)労務管理担当者に対する研修
4)労働者に対する研修、周知、啓発
5)外部専門家(社会保険労務士など)による導入のためのコンサルティング
何に助成してくれるの?-「支給対象」について
実施する取り組みについてはわかりましたが、それでは、具体的には何について助成してもらえるのか?次の9つが対象となります。
1)機械装置購入費
2)(専門家への)謝金
3)会議費
4)委託費
5)旅費
6)雑役務費
7)印刷製本費
8)借損料
9)備品費
加えて、「新型コロナウィルス感染症対策のためのテレワークコース」では次のものも対象となります。
10)パソコンやルーター等のレンタル・リースの費用(ただし5月31日までに利用し、支出されたもの/シンクライアント端末以外でも可)
会議費や、旅費まで支給対象に入るなど、かなり広範囲な対象となっています。
いくら助成してくれるの?-「助成額」について
さて、気になる「助成額」ですが、これは、「新型コロナウイルス感染症のテレワークコース」と通常の「テレワークコース」で割合が異なります。前者の場合は対象経費の1/2ですが、後者の場合は「成果の達成度」によって助成金額が違ってきます。
通常のテレワークコースの場合は次のようになります。
成果目標の達成状況 | 達成 | 未達成 |
---|---|---|
補助率 | 2/3 | 1/2 |
1人当たりの上限額 ※ | 20万円 | 10万円 |
1企業当たりの上限額 ※ | 150万円 | 100万円 |
※1人あたりの上限額×対象労働者数と1企業あたりの上限額の少ない(額が低い)方
成果目標ってなに?チェックポイントみたいなもの?
今回のようなパンデミックによって一時的に在宅勤務という体制を取るだけなら、成果目標の達成状況まで問わない新型コロナウイルス向けの助成金を申請したほうが早いでしょう。ただ、これを機に、本格的にテレワークを導入したいとお考えなら、時間はかかりますが通常コースで申請したほうが助成額は大きくなります。
「新型コロナウイルス感染症のテレワークコース」の場合、定められた要件は、事業実施期間中(2020/2/17~5/31)に
・助成対象の取り組みを行うこと
・テレワークを実施した労働者が1人以上いること
※少なくとも1人は直接雇用する労働者であることが必要です
※受け入れている派遣労働者がテレワークをおこなう場合も対象となります
です。これに対して、通常のテレワークコースでは、実施実績のほかに所定外労働時間(残業時間)の削減目標が定められています。
達成度を測るポイントは次の3つです。
1)評価期間内に、1回以上、対象となる労働者全員に、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施する
…つまり、「まずテレワークをちゃんと(1回以上)実施してくださいね」という条件です。サテライトオフィスは、レンタルオフィスでもOK。そのレンタル代も助成の対象となります。
2)評価期間において、対象となる労働者が、在宅またはサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した日数は週間平均で1日以上
3)所定外労働の削減について、労働者の月間平均所定外労働時間を前年と比較して5時間以上削減させる
この3つの成果目標が達成しているか?未達成か?で、最大50万円も助成金に差がついてしまいます。
成果目標が達成されたかどうかは、事業実施期間(交付決定から令和3年2月15日まで)の中で、1ヶ月から6ヶ月の期間で設定する「評価期間」(*2)で判断されます。
*2…評価期間は、申請者が事業実施計画を作成するときに、自身で設定します。
「テレワークを実施するなら本気で、しっかりと取り組んで欲しい」という狙いがこのような成果目標というルールになっているのでしょう。ですので、「テレワークを実施するなら、今だけの対処ではなくて、しっかりと根付くようにやっていこう!」と思って実施されることをおすすめします。
申し込みはどうやったらいいの?-申請の流れについて
「よし!それじゃ、思い切ってテレワークを導入してみよう!でも、どうやって助成金をもらったらいいの?何から始めたらいいのかな?」という方のために、簡単な手続きの流れをご説明します。
(1)交付申請書の提出
「働き方改革推進支援助成金交付申請書」を、必要書類とともにテレワーク相談センターに提出します。締め切りは、新型コロナ特例版は2020年5月29日(金)まで、通常のものは2020年12月1日(火)までです。
提出し審査に通れば後日厚生労働省から「交付決定通知書」が送付されてきます。
(2)計画に沿って取り組みを実施
交付が決定されたら、ご自身が作成した事業実施計画書に沿ってテレワークの取り組みを実施します。
(3)支給申請
実施する事業期間が終了したら、テレワーク相談センターに助成金の支給を申請します。
新型コロナ特例版の場合は、2020年7月15日(水)が提出の締め切りです。
審査に通れば、「支給決定通知書」が送られ、助成金が給付されます。
◎手続きの詳細は、厚生労働省のホームページに掲載されています。
・働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
・働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
また、「テレワーク相談センター」 にお問い合わせください。
⇒電話:0120-91-6479(受付時間:平日9:00~17:00)
⇒Eメール:sodan@japan-telework.or.jp
まとめ
新型コロナウィルス感染症の対策で俄然注目を集めている、在宅勤務やテレワーク。でも、本来は「従業員の育児や仕事との両立を応援したい」「従業員の通勤の負担を減らしたい」「従業員の家庭でのワークライフバランスをもっと整えてあげたい」「従業員にもっとやる気を出してもらいたい」、そして「優秀な人材を確保したい」ということのために、テレワークは力を発揮するものだと思います。
コロナショックという逆境をチャンスに変えるためにも、「テレワーク導入」を一度しっかりと考えてみてはいかがでしょうか?
※今回の記事は令和2年4月29日時点の情報を元に作成しています。今後の情報の更新などにご留意ください。
執筆者情報
橘高総合広告研究所 代表 橘高唯史(中小企業診断士・フリーライター)大手百貨店系通信販売カタログのディレクター業務に20年携わり、そこで培った「売れる理由」を体系化して2017年にコンサルタントとして独立。現在は公的機関の経営相談員やセミナー講師を務める一方、ライターとして執筆活動も行なっている。
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