身元保証書とは?目的や書き方を紹介【テンプレート付き】
最終更新日:2024年08月28日

この記事では身元保証書の概要や書き方について解説します。身元保証書のテンプレートも紹介しますので、ぜひ活用してください。
- 身元保証書とは過失時の賠償責任の契約書
- 身元保証人と本人の関係性や人数
- 身元証明書との違い
- 身元保証書の書き方とポイント
- 身元保証書のそれぞれの必須項目
- 身元保証書の記入例
- 身元保証書のQ&A
- 身元保証書の提出はしなくてもいい?
- 身元保証書は自分で書いてもいい?
- 会社が身元保証人の収入などを調べることはある?
- 正社員じゃなくても身元保証人になれる?
- 身元保証人がいない場合はどうする?
- まとめ
身元保証書とは過失時の賠償責任の契約書
身元保証書とは、企業が採用した労働者が過失または故意により企業側に損害を与えた場合に、労働者本人と保証人が連帯して賠償責任を負うことを約束する契約書です。
日本では雇用に限らずお金を借りるときなどにも保証人を求めることがありますが、身元保証人もこうした人による保証の一種です。
通常、身元保証書は入社のタイミングで求められます。本書は労働条件の通知書などのように、法律上必ず必要な書類というわけではありません。ただし、従業員によって会社が損害を被った際の損害賠償の履行をより確実にするために、身元保証書の提出を求める会社は多いです。
雇用についての身元保証は「身元保証に関する法律」と「民法」という2つの法律によって、内容や方法に規制が設けられています。
まず「身元保証に関する法律」によって、期間の定めがない契約は3年で、期間を定める場合は最長5年といった制限が設けられています。
また、「民法」によって、保証の限度額を定めることや書面によって契約することが必須となっているほか、保証人は行為能力者であることと、弁済をする資力を有することが条件として規定されています。
出典:民法(債権法)改正|法務省
昭和八年法律第四十二号(身元保証ニ関スル法律)
身元保証人と本人の関係性や人数
どのような人が身元保証人になれるのかということや人数については法律では決められていないため、会社が自由に決めることができます。
ただし、身元保証人の役割は、会社から従業員への損害賠償が発生した場合の保証であるため、支払い能力がある人でないと保証人にする意味がありません。
そのため、未成年者や働いていない人(年金生活の父母や祖父母など)は保証人にできない旨が会社で指定されることがあります。通常は、働いている親や兄弟姉妹に身元保証人となってもらうように依頼するケースが多いと考えられます。
人数については通常は1名で、多くても2名でしょう。あまりに多いと、身元保証人の候補者を探す新入社員に過度の負担をかけてしまいます。
身元証明書との違い
身元保証書と似たような名前の書類に「身元証明書」があります。両者はまったく違う書類ですので注意しましょう。
身元証明書とは、証明対象となる人が、成年被後見人(精神上の障害で一人で意思決定できないと家庭裁判所に審判を受けた人)や破産者といった日々の契約などの行為に制限を受けていない人であることを、自治体が証明する書類です。自治体によっては身分証明書という名称となっている場合もあります。
成年被後見人などの制限行為能力者は保証人にはなれません。しかし、採用時に制限行為能力者でないことを証明するために、わざわざ身元証明書を求められることはないので、勘違いしないようにしましょう。
身元保証書の書き方とポイント
身元保証書は法律で書き方が決まっているわけではなく、通常は会社が準備した書類に本人と身元保証人が署名します。以下で、身元保証書の書き方とポイントを解説します。
身元保証書のそれぞれの必須項目
保証契約については、書面で締結しないと効力を発生しない旨が民法で規定されています。そのため、保証契約の一種である身元保証書も、書面で締結する必要があります。
身元保証書には、一般的に以下の項目を記載します。
なお、6)の極度額については、そもそも保証書内に記載しないと身元保証契約が有効にならないため、必ず記載が必要です。
・現住所
・氏名
・生年月日
2)保証人に関する事項
・現住所
・氏名
・生年月日
・本人との関係
・職業
・連絡が取れる電話番号
3)保証を開始する日
4)保証書の作成日
5)保証期間
6)保証する額の上限(極度額)
身元保証書の記入例
身元保証書の必須項目である、保証期間と損害賠償の上限額(極度額)の記入例は以下のとおりです。
・保証期間
身元保証の期間を定めない場合は、身元保証に関する法律によって保証期間が3年となります。最長で5年間にすることができるので、保証期間を定める場合は5年間にすることが多いでしょう。
なお、保証期間を自動更新する規定は判例により無効とされていますので、会社側で身元保証を延長したければ更新の都度、新たに契約を締結することになります。
記入例
・損害賠償の上限額(極度額)
保証により身元保証人が賠償すべき上限額は、民法の規定により必ず記載する必要があります。
記入例
ちなみに、身元保証書の有効性のうえで押印は必須ではありませんが、身元保証人の押印が必要な書式も多いです。
押印により、身元保証人本人の意思で保証人になったことが確認できるようにするという目的ですが、身元保証人の実印と印鑑証明書までを求めることはあまりないかもしれません。
出典:昭和八年法律第四十二号(身元保証ニ関スル法律)
身元保証書のQ&A
身元保証書を提出する上で気になる点や疑問点をまとめました。会社から身元保証書の提出を求められたときの参考にしてください。
身元保証書の提出はしなくてもいい?
身元保証書は法律で必ず提出を求められる書類ではありません。万が一、身元保証人の候補者がいない場合には入社する会社の担当者に確認を取りましょう。
身元保証書の提出が雇用契約締結の条件になっていて、そのことを本人に内定時などに通知していた場合には、身元保証書を提出しないことによる内定取り消しの可能性もあります。
この点については、会社がどれだけ身元保証人を重視しているかによりますので、いずれにしても担当者に確認してみるのが良いでしょう。
身元保証書は自分で書いてもいい?
身元保証書は、会社と身元保証人の間で締結される保証契約書です。そのため、契約締結者である身元保証人に書いてもらう必要があります。
いくら親族だからといっても、勝手に書類を記載してしまうと身元保証書が無効になるだけではなく私文書偽造となります。必ず身元保証人本人に記載してもらうようにしましょう。
会社が身元保証人の収入などを調べることはある?
身元保証人について、職業や収入などを調べられることはないでしょう。
ただし、身元保証人が本当に実在しているかどうかなどを確認するために、運転免許証などの身分証明書のコピーを身元保証書に添付することを求められる可能性があります。この場合は身元保証人になる人に対応してもらえばよいでしょう。
正社員じゃなくても身元保証人になれる?
身元保証人となれる人については民法で「弁済をする資力を有すること」と定められています。そのため、経済的に自立していて、万が一損害賠償することになった場合に耐えうる資力を持った人であることが必要です。
無収入の人などはこの要件を満たさないので身元保証人になる資格はありませんが、それ以外であれば正社員でなくとも身元保証人になることはできます。
出典:民法
身元保証人がいない場合はどうする?
どうしても身元保証人になってくれる人がいない場合には、まずは会社に相談しましょう。身元保証を行ってくれる保証会社もありますが、お金がかかりますし、会社としてもそこまでの負担を強いるのは本意ではないかもしれません。
いずれにしても、身元保証人が見つからないから入社を断念するということはないようにしましょう。
まとめ
身元保証は、古くからの日本で行われてきた慣行であり、今でも多くの会社で入社時に身元保証を求めることがよくあります。実際に会社が従業員に損害賠償を求めることができるケースは限られていますので、過度に不安になることもありません。身元保証書の提出を求められた場合は、その趣旨をよく理解したうえで、法律上の要件を満たす人を身元保証人になってもらうように依頼しましょう。
執筆者情報
司法書士事務所V-Spirits 代表 渋田貴正(税理士・司法書士・社会保険労務士)法書士事務所V-Spirits代表、税理士法人V-Spirits社員税理士。
税理士法人V-Spiritsでは、開業時の融資サポートや事業計画の策定支援、会社設立支援、開業後の税務顧問など起業家のためのワンストップサービスを行っている。
プロフィールを見る >
関連記事
採用・求人 のテンプレート一覧へ
人材の採用活動、また、従業員を雇用する際に使用する各種書類のテンプレートが無料でダウンロードできます。求人票、採用内定通知書など採用活動で使用するものから、労働契約書・労働条件書や身元保証書など、雇用契約・入社手続きで使用するものなど各種そろっています。Word(ワード)またはExcel(エクセル)で編集できます。