カスハラ・就活ハラスメント防止義務化! 法改正に伴う押さえておくべきポイント解説

最終更新日:2026年10月30日

カスハラ・就活ハラスメント防止義務化! 法改正に伴う押さえておくべきポイント解説
令和8年10月1日、労働施策総合推進法等を改正する法律(いわゆる「カスハラ対策法」。令和7年法律第63号)及び男女雇用機会均等法の改正が施行されました。
この改正を一言でいうと、「お客様からの嫌がらせや、就職活動中の学生へのハラスメントから働く人を守る対策が、従業員1人の会社も含めて、すべての会社の『義務』になりました!」ということです。

「商品に何の問題もないのに『新しい商品と交換しろ!』と何時間も詰め寄るお客様」
「面接の場で、採用の適性判断に関係のない性的な質問を浴びせる面接官」

こうした言動に悩まされてきた現場は、決して少なくありません。
悪質なクレームで心を傷め、退職に至ってしまう社員もいるほどのカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)。採用担当者からの立場を利用した不当な嫌がらせによる就職活動の意欲の低下を招く就活ハラスメント(以下「就ハラ」)。SNSでの炎上なども相まって、もはや社会問題です。
東京都のカスハラ防止条例をはじめとする条例整備の動きも進むなか、ついに国が法律でカスハラ対策を義務付けることになりました。
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今回の改正によって、これまで法令上の義務ではなかったカスハラ対策が会社の「法的義務」となりますので、非常に注目されています。
なお、今回の義務化には、「カスハラ」と「就ハラ」の2つが含まれます。
さて、会社は、この改正にどう向き合えばよいのでしょうか?

そこで、本コラムでは、今回の法改正に伴いココだけは押さえて欲しい!というポイントを解説します。

本コラムとあわせて「規程」を配布しています!

本コラムでご紹介する対策は、「カスタマーハラスメント防止規程」及び「就活ハラスメント防止規程」として整理しています。
両規程は無料でダウンロードできますので、貴社の体制に合わせて活用してください。
(規程本文中の[ ]内は、貴社の体制に応じて修正する箇所です。)

カスタマーハラスメント編

まずはここ!「カスハラ」とは?

まずは、用語の確認から!

  • ハラスメント=相手を苦しめる嫌がらせのこと
  • カスタマーハラスメント(カスハラ)=お客様や取引先など、「会社の外」からの嫌がらせ
  • 就活ハラスメント(就ハラ)=就職活動中の学生などに対するセクシュアルハラスメント(法律上は「求職者等に対するセクシュアルハラスメント」)

「カスハラ」は、次の3つの要素を、すべて満たすものをいいます。

(1) 誰が言うか

お客様、取引の相手方、施設(駅、空港、病院、学校等)の利用者など、事業に関係を有する者です。
B to Bの取引先の担当者も含まれますので、注意が必要です。

(2) 言い方はどうか

業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えた言動であること。(簡単にいうと、「常識的に考えて、やりすぎ」と評価される言い方・やり方ということです)
電話やSNS等のインターネット上で行われるものも含まれます。

(3) 言われた結果、その影響はどうなるか

その言動により、社員の就業環境が害されること。(簡単にいうと、社員が「働きにくい」と感じるほど、心身の苦痛を受けている状態ということです)

カスハラの典型例

要求の内容がアウト!

  • そもそも要求に理由がない、または商品・サービスと全く関係のない要求(性的な要求、プライバシーに関わる要求等)
  • 契約等により想定しているサービスを著しく超える要求
  • 対応が著しく困難な、または対応が不可能な要求(契約金額の著しい減額の要求等)
  • 不当な損害賠償要求

手段や振る舞いがアウト!

  • 身体的な攻撃(殴る、蹴る、物を投げつける等)
  • 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要等)
  • 威圧的な言動、継続的・執拗な言動、拘束的な言動(不退去、居座り等)

これらは一例であり、該当性の判断は、言動の経緯や状況、頻度・継続性等を総合的に考慮して行うこととされています。
「内容」または「手段や振る舞い」の一方だけが許容範囲を超えていても、カスハラに該当し得る点に、注意が必要です。

「普通のクレーム」との違いは?

「届いた商品が壊れていたので、返金してほしい」といった正当な苦情は、カスハラではありません。
また、障害者から「不当な差別的取扱いをしないでほしい」「合理的配慮(その人に応じた便宜的な対応)を提供してほしい」と求められること自体も、カスハラには当たりません。
一方で、「契約金額の著しい減額の要求」「土下座の強要」「長時間にわたる居座り」等は、まさにカスハラの典型例です。
「正当なクレームなのか、カスハラなのか」の線引きが難しい場合には、現場で結論を出すことなく、会社の相談窓口に相談する、というルールにしておくことが大切です。
なお、ハラスメント対策が会社の義務となる対象は、今回の改正で次のとおり広がりました。

これまで義務化されていたもの今回から新たに義務化
●セクシュアルハラスメント
●パワーハラスメント
(中小企業も2022年から)
●妊娠・出産等に関するハラスメント
(マタハラ等)
●介護休業に関するハラスメント
(ケアハラ)
●カスタマーハラスメント
(カスハラ)
●就活ハラスメント
(求職者等セクハラ)

よくある誤解

「サービス業だから、ある程度の無理な要求は我慢するものでは?」
いいえ、違います。社会通念上許容される範囲を超えた言動は、業種を問わずカスハラになり得ます。「我慢するもの」として放置することなく、毅然と対応することが大切です。
「対応した社員の態度に問題があったから、仕方ないのでは?」
社員の対応に問題があった場合でも、相手の言動が許容範囲を超えていれば、カスハラに該当し得ます。こうしたカスハラを誘発しないためにも、社員の商品知識や対応力を高める研修等を通じて、カスハラの原因そのものを解消することが、指針上「望ましい取り組み」とされています(法的義務ではありませんが、取り組むことが大切です)。

会社がしなければならないことは?

今回の改正で、会社(法律上は「事業主」)は、カスハラ対策を「雇用管理上の措置義務」として講じなければならなくなりました。
「雇用管理上の措置義務」とは、「働く人の管理の面で、会社が必ず講じなければならない対策」のことです(難しく考える必要はありません)。
なぜ、会社まで責任を負うのか?
お客様の言動は、現場の社員にはどうにもできない「外」の問題です。だからこそ、守る立場にあるのは会社であり、「社員を守るのは、会社の役割」として法律が義務付けた、ということです。
なお、対策を講じる際には、消費者の権利や、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供義務に留意する必要があります。「毅然とした対応」にも、留意すべき点があるのです。
対策の大枠は、次の「3つ」+カスハラならではの「1つ」です。

(1) 方針を決めて、周知すること

「カスハラには毅然とした態度で対応し、社員を守ります」という方針を明確にし、すべての社員に周知します。
併せて、「その場の対応の方針は管理監督者に指示を仰ぐ」「可能な限り社員一人で対応させない」「犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する」「本社・本部等へ情報共有を行い、指示を仰ぐ」といった対処の内容も、あらかじめ定めて周知することが求められます。

(2) 相談窓口と手順を整えること

相談窓口をあらかじめ定めて社員に周知するとともに、相談窓口の担当者が適切に対応できるようにします。
相談対応の手順を定めたマニュアルを整え、担当者を研修することも大切です。(相談窓口の対応を外部の機関に委託することもできます)
相談窓口は、本人からの相談に限らず、同僚や管理監督者からの申出、匿名の相談も含めて、広く受け付ける仕組みにしておきましょう。

(3) 事後に迅速・適切に対応すること

事実関係を迅速かつ正確に確認した上で、被害を受けた社員への配慮を行い、再発防止に向けた措置を講じます。
配慮のための措置としては、「管理監督者等が対応に代わること」「被害者と相手方とを引き離すための措置(配置転換等)」「産業医・産業カウンセラー等による相談対応」等があります。

(4) (カスハラならでは!)悪質なカスハラへの「抑止のための措置」

特に悪質と考えられるカスハラへの対処の方針をあらかじめ定め、社員に周知し、その対処を実施できる体制を整備することが義務になります(相手への警告書の発出、商品・サービスの提供停止、事業所への出入禁止等が具体例です)。

社員にも「責務」があります

社員には、会社が講ずる対策に協力すること、他社の従業員に対する言動に必要な注意を払うこと(SNS等への悪評の投稿は、いわゆるカスハラと評価され得ます)が、努力義務として求められます。
また、会社には、他社からカスハラに係る事実確認等の協力を求められた場合に、これに応じるよう努力しなければならない旨の努力義務が課されていますので、注意が必要です。
そのほかにも、相談者のプライバシーを保護すること、相談したことを理由にした不利益な取扱い(解雇、減給等)をしないことも、併せて義務になります。
なお、対象は「労働者1人でも」すべての事業主です。「うちは小さな会社だから関係ない」とはならない点に注意が必要です。

罰則はどうなっている?

措置義務そのものには、直接の罰則がありません。
しかしながら、厚生労働大臣または都道府県労働局長による助言・指導・勧告の対象となり(労働施策総合推進法第42条第1項)、勧告をしてもなおこれに従わない場合には、「企業名等の公表」もあり得ます。(同条第2項)
さらに、行政から報告を求められた際に応じない場合または虚偽の報告をした場合には、「20万円以下の過料」(刑事罰ではありませんが、国への金銭負担です)の対象となる点にも、注意が必要です。(同法第45条第1項及び第51条)

なお、行政上の罰則がないとはいえ、カスハラの被害を受けた社員について会社の対応が不十分であった場合には、安全配慮義務違反(労働契約法第5条)等に基づき、会社の責任が問われることにもなり得ます。
「義務を果たしていれば」会社を守ることになる、ということです。

なお、ここまでにご紹介した措置は、「カスタマーハラスメント防止規程」に条文化しています。
規程本文に加え、別紙にはカスハラの典型的な態様、状況別・類型別の対応方針、対応レベル表、対応記録書、警告書のテンプレートまで、一式をそろえています。
詳細は、規程をダウンロードしてご確認ください。
また、厚生労働省が発行しているリーフレットについても併せてご確認をお願いします。
※参照:厚生労働省リーフレット

就活ハラスメント編

就活ハラスメント対策のここが新しい!

就活ハラスメントの対策は、男女雇用機会均等法の改正によって、同じく令和8年10月1日からすべての会社の義務になりました。
対象となるのは「求職者等」です。

  • 企業の求人に応募する者(求職者)
  • 会社説明会、インターンシップ、OB・OG訪問その他の採用に資する活動に参加する者
  • 教育実習、看護実習その他の実習を受ける者

「性的な言動」により求職活動等が阻害されることが就ハラであり、オンライン面接やSNS上のやり取りも含まれます。
「性的な言動」とは、性的な内容の発言(性的な事実関係を尋ねること等)と、性的な行動(必要なく身体に触ること、性的な関係を強要すること等)を指します。

就ハラの典型例

  • インターンシップ中、社員が学生に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行い、学生が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと。
  • OB・OG訪問等で社員を訪問した学生が、性的な関係を求められ、求職活動の意欲が低下していること。
  • インターンシップ中、社員から執拗に私的な食事に誘われ、求職活動の意欲が低下していること。

就ハラは、男性も女性も、加害者にも被害者にもなり得る問題です。同性に対するものも該当します。

採用担当以外の社員にも注意を!

就ハラは、面接官等の採用担当者だけの問題ではありません。説明会や懇親会に参加する社員、OB・OG訪問に応じる一般の社員による言動も対象です。
また、大学のキャリアセンター等から就ハラに係る相談・情報提供があった場合には、連携して適切に対応することが望ましいと、指針上示されています。
義務措置の特色は、次の2点です。

(1) 「求職活動に関するルール」をあらかじめ決めること

例:面談の時間・場所・実施体制の指定、2人きりにしない、やり取りに用いるSNSの指定、懇親会・飲み会への配慮

(2) 相談窓口を「求職者にも」周知すること

採用ページや採用案内書に相談窓口を掲載することがポイントです。
さらに、求職者から通報・相談があったことを理由として、選考評価その他の取扱いにおいて不利益を与えてはならない旨も、義務化されています。

就ハラの対策も、「就活ハラスメント防止規程」として条文化しています。
規程本文に加え、別紙として、就ハラの典型的な態様、求職活動に関するルール(選考時の質問・SNS・懇親会)、受付記録書を揃えています。
詳細は、規程をダウンロードしてご確認ください。
また、厚生労働省が発行しているリーフレットについても併せてご確認をお願いします。
※参照:厚生労働省リーフレット

実務編

今日から始める!会社の3ステップ

STEP1 まずは「規程の整備・周知」を行う

あわせて配布する「カスタマーハラスメント防止規程」「就活ハラスメント防止規程」をベースに、定義・非該当行為・基本方針・相談窓口・初期対応・対応の引継ぎ(エスカレーション)・警察通報・対応レベル表・抑止措置・研修・記録・経営層への報告まで、必要な項目を一式明文化しましょう。
「規程があること」自体ではなく、全社への周知・研修こそが義務の本体です。
規程の整備に当たっては、施行日を定めた附則の記載、就業規則に組み込む場合の労働基準法に基づく意見書手続(労働者の意見を聴く手続)の要否についても、確認しておきましょう。
整備した規程は、終わりではなく、始まりです。事案の発生状況及び対応内容を集約して定期的に経営層に報告し、規程及び運用を点検・見直すサイクルまで整えることが大切です。

STEP2 「現場で使える手順・記録」を整える

録音・録画等による証拠化、対応記録書の様式、状況別(対面・電話・訪問)・類型別の対応方針、警察通報の基準、警告書のテンプレート等を整備しましょう。
特に、事案の程度を「軽微」から「悪質」までレベル分けした「対応レベル表」を定めておくと、現場の判断ブレを防ぐことができます。
「現場の勘」を「会社の基準」にしてしまいましょう!
記録を残す際には、相談者のプライバシー(性的指向・ジェンダーアイデンティティを含む)に十分留意し、個人情報の取扱いに配慮することも忘れないでください。

STEP3 「採用フローの見直しと研修」を行う

面接での質問リストの作成(業務の適性判断に関連しない質問をしないこと)、SNS・連絡先に関するルール、懇親会等の運用、面接官への研修、採用ページへの相談窓口掲載等を進めましょう。
研修は、新入社員だけでなく、管理監督者及び経営層に対しても、それぞれの役割に応じて実施することが大切です。
面接官の配置や懇親会等の運用を見直す際には、「2人きりにしない」「時間や場所をあらかじめ定める」といったルールの運用状況も、あわせて確認しましょう。

まとめ

今回の改正によって、ハラスメント対策の義務の対象が、社員同士の関係(パワハラ等)から、「お客様」や「学生」を含む幅広い相手へと大きく広がりました。
「罰則がないから大丈夫」というわけではありません。ハラスメントのない会社であることは、採用力や企業のブランド、ひいては顧客との信頼関係そのものに直結します。
義務化は、あくまでもスタートラインです。
対応に迷ったときは、現場で判断せず、相談窓口に相談する。この「立ち止まって相談する」習慣こそが、会社と社員の両方を守る、いちばんの備えになります。
まずは「規程」という土台を整え、誰でも毅然と対応できる体制をつくっていきましょう。
これまで「お客様は神様」という商慣行に苦しんできた現場の社員にとって、今回の法改正は「毅然とした対応への後押し」となります。
本コラムでご紹介した両規程は、無料でダウンロードが可能です。
まずは規程をダウンロードして、貴社の「規程」という土台作りから始めてみてはいかがでしょうか。

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