商売繁盛?ずる賢い? タヌキの話

最終更新日:2017年05月12日

商売繁盛?ずる賢い? タヌキの話
皆さんは「タヌキ」と聞いて何をイメージしますか?
店先や玄関でよく見る置物を思い浮かべた人が多いのではないでしょうか。あるいは「タヌキおやじ」という言葉をつぶやいた人もいるかもしれません。
実物は滅多に目にすることがないのに、日常のあちこちで登場し、いろんなイメージを持たれている動物。それがタヌキです。
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商売繁盛 八相縁起 信楽焼の狸が店に置かれるワケ

よく店の玄関に鎮座している信楽焼のタヌキの置物。
「信楽焼といえばタヌキ」というくらい今ではメジャーな存在になりましたが、中世に始まり、日本の六古窯の一つと言われた信楽焼の長い歴史の中にタヌキが登場したのは案外最近のことなのです。明治時代に作られ始めた置物が昭和の時代になって脚光を浴びた、比較的新しい名物です。
タヌキ=「他抜き」、つまり、他に抜きんでる、という意味があり、商売繁盛の縁起物とされています。
その他にも、「信楽狸の八相縁起」あるいは「八相緑喜」といって、タヌキの体の部位やアイテムが縁起のよい物事を表しています。
まん丸で大きな目は「正しく見る」、愛嬌のある顔は「愛想のよさ」、大きなお腹は「大胆な決断」、尻尾は「終わりをしっかりと」、そして金袋は「金運」。アイテムも同様に、傘は「悪事災難除け」、徳利は「人徳」、通い帳は「信用第一」を示しています。商売上重要なことが勢ぞろいしていますね。
これは信楽町観光協会のページでも紹介されています。
そのような理由から、縁起のよい信楽焼のタヌキを入口に置くのです。

なにはともあれ、まあるい目でちょこっと首をかしげた愛嬌のある顔を見ると、思わず暖簾をくぐりたくなってしまうという人もいるくらいですから、それなりに効果はあるのでしょう。

信楽焼の親子狸

ちなみに、余談ですが、信楽焼のタヌキの大きな金袋、これは、金職人が金箔を作るときタヌキの毛皮を使って一匁の金(ちょうど5円玉の重さ)を八畳大の金箔に叩き出していたということから、「タヌキの金袋は八畳敷き」といわれるようになりました。これは、大きく広がっていることの比喩としても使われます。

時には必要? タヌキおやじのしたたかさ

もうひとつ、「タヌキおやじ」という言葉があります。「あの人はタヌキだよな~」そんなセリフを聞いたこともあるでしょう。
辞書を引くと、タヌキは「人のよさそうなふりをしていて、実際にはずるがしこい者」と書かれています。
「タヌキおやじ」「あなたはタヌキだよね」と言われたらあまりうれしくはないと思いますが、仕事において「食えないヤツ」「油断のならない人」というのは、悪い意味ばかりでもありません。かの徳川家康も、「タヌキおやじ」と称されていますから。

ですが、もともとは「狸」という字は、大陸ではヤマネコを意味していました。これが日本に入ってきたとき、ヤマネコが日本にほとんどいなかったため、狸の文字はタヌキにあてがわれました。鋭い目をしたヤマネコと、丸い目をしたタヌキ。それらが混じり合い尾ひれがついて、今日のイメージになったのかもしれません。
こうしてタヌキは、人間をだまし、ウサギさんに火をつけられて沈められる可哀想な動物になってしまいました。
でも本当は臆病もので、大きな音に驚いて狸寝入りするどころか本当に気絶してしまう小心者なのです。

岩場を歩くタヌキ

余談:タヌキにまつわるエピソード ラクーンの毛皮

最後に、自分が仕事で体験した、タヌキにまつわるエピソードをひとつ。
10年前、ファッション業界では激震が走りました。コートの襟を温かそうに飾っている毛皮の「ラクーン」表示を、明確に使い分けよという指示が公正取引員会から出されたのです。
どういうことかというと、ラクーンはアライグマのことですが、便宜上、タヌキもラクーンと表記していました。1万円前後のダウンコートですからアライグマの毛を使うことなく、タヌキ、しかも中国のタヌキの毛を使っていました。それを、タヌキ、チャイニーズラクーンと表記せよ、というお達しが出たわけです。
その後、特に毛皮の名称を大きく打ち出すことはやめ、商品タグに小さく「チャイニーズラクーン」「タヌキ」と書くようになってしまいました。

置物は縁起物としてありがたがられているのに、なんだかタヌキがかわいそうになるエピソードです。

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