借用書とは?《テンプレートあり》効力や正しい書き方などを徹底解説!
最終更新日:2024年07月22日
この記事では、借用書の書き方や効力などについて解説します。ダウンロードしてすぐに使えるテンプレートもご用意していますので、これから借用書を作成する方はぜひご活用ください。
借用書とは
借用書とは、借りた事実、借りた日等、貸し借りの内容を明確にし、お金を借りた人が返済の約束をするために作成する書面です。借用書には、貸し借りの当事者、借りた日、金額や返済期日などを記載し、借主が作成して貸主に提出します。
借用書を作成する目的とは?
借用書を作成する目的は、主に次の2つです。
- 貸し借りの事実や内容を明確にしておくため
- トラブルが発生した際の証拠にするため
口約束によるお金の貸し借りであっても、返済の義務はあります。しかし、口頭でのやり取りだけでは証拠が残らず、認識の違いなどからトラブルに発展する可能性があります。
たとえば、貸したお金の返済を求めても、相手が「借りた事実はない」「あれはもらったお金だ」と主張すれば、証拠がない以上追及することができません。
一方、借用書があれば、貸し借りの事実や具体的な内容について、貸主と借主で認識を共有できるだけでなく、証拠を残すことができます。
特に裁判では証拠が重要です。お金が返済されない場合は、貸主が裁判を申し立てて、銀行預金や給料の差し押さえ手続きをとらなければなりません。
しかし、借用書がなければ、お金を貸した事実や相手が返済の約束をしたことが立証できないため、差し押さえが認められず、回収が困難になる恐れがあります。
また、借主に借用書を作成してもらうことで、返済義務を意識づける効果もあるでしょう。トラブルの防止や借主に返済を促すためにも、借用書を作成することが重要です。
借用書の法的効力について
借用書は、お金の貸し借りを証明する書面であり、法的効力も有しています。借主は、借用書で定められた内容に従い、借りたお金を返済しなければなりません。
ただし、借用書の内容に不備があったり、公序良俗に反する内容が記載されていたりする場合は、無効になる可能性があります。
借用書と金銭消費貸借契約書の違いは?
借用書と同様にお金の貸し借りを証明する文書に「金銭消費貸借契約書」があります。借用書と金銭消費貸借契約書の違いは次の通りです。
金銭消費貸借契約書 | ・借主と貸主が共同で作成する契約書 ・貸主が合意しているため証拠としての能力が高い |
借用書 | ・借主が単独で作成し、貸主に提出する書面 ・貸主が合意しているとは限らない |
証拠力の高い金銭消費貸借契約書を作成するのが望ましいですが、どちらにも法的効力はあります。個人間で貸し借りの事実を証明するのであれば、貸主が当該内容につき合意をしていないという主張することは現実的にはあまり考えにくいため借用書でも問題はありません。
借用書は誰が作成するべき?
借用書を作成するのはお金を借りた人です。
法律上は貸主が作成しても問題ありませんが、借主が作成することで、借主の意思でお金を借りたという証明になります。
そのため、借主が書面を用意し、必要な事項を明記して作成するようにしましょう。
借用書の主な記載事項と法的に有効な書き方
借用書に記載する主な記載事項は下記の通りです。
- 表題と借主の氏名
- 借入額と借入日
- 返済期日と返済方法
- 利息
- 遅延損害金
- 期限の利益の喪失
- 借用書の作成日
- 借主の氏名と住所
- 借主の押印
表題と貸主の氏名
借用書の冒頭には「借用書」と表題を記載します。他にも「借用証書」や「念書」と記載するケースもあります。
借用書は、貸主が誰かわかるように、表題の下に貸主の氏名や名称を記載します。
貸主が個人の場合 | ○○殿 |
貸主が法人の場合 | ○○株式会社 御中 |
借入額と借入日
同じく、借入額と実際にお金を借りた日を借入日として記載します。
また、記載した借入額の近くに「貴殿より上記金額を借用しました」など、お金を借りたという事実を明記するようにしましょう。
返済期日と返済方法
返済期日と返済方法についても、具体的に記載することが重要です。返済方法が分割返済か一括返済かによっても、返済期日が異なります。
返済する手段にも口座振り込みや手渡しなどがありますが、記録が残る銀行振込にするのがおすすめです。また、銀行振込の手数料については借主負担と記載するのが一般的です。また、可能であれば返済先の口座情報も記載することが望ましいです。
利息
借りたお金に利息をつける場合は、年率を記載します。借用書に利息を記載していなければ、貸主は借主に対して利息を請求することができません(民法第589条)。なお、商人間において貸し借りをしたときは、商法513条1項により、利息の合意がなかったとしても、貸主は、法定利息を請求することができます。
また、利息については利息制限法が適用されるため、法律の範囲内で定めるようにしましょう。
遅延損害金
遅延損害金とは、支払期日に遅れた場合に加算される賠償金のことです。遅延損害金を定めておけば、返済日を守ってもらいやすくなります。
遅延損害金は、利息制限法で定められた上限金利の1.46倍まで設定が可能です。貸金業者などでは年率14.6%〜20%程度で設定されるケースが多いです。
期限の利益の喪失
分割返済の場合は、一定回数支払い遅れが発生した際に、残債を一括で返済するという「期限の利益の喪失」を盛り込んでおくのが一般的です。
分割返済でお金を借りた場合は、借主には一定の期日が来るまでは全額を返済しなくてよいという権利(期限の利益)があります。
期限の利益を盛り込むことで、借主の支払いが遅れた場合に、全額の返済を求めることができます。
借用書の作成日
借用書の一番最後には、借主の氏名や住所を記載しますが、その上に借用書の作成日を明記しましょう。
借主の氏名と住所と捺印
最後に、借主の氏名(名称)と住所を記載し、捺印します。
借主が個人の場合 | 署名捺印が望ましい |
借主が法人の場合 | 名称を印字した上で、印鑑登録をされた実印を押印するのが一般的 |
署名捺印や記名押印をすることで、借主の意思でお金を借りた証明ができ、裁判になった場合も証拠として認められます。
借用書テンプレート
借用書を作成するときのポイントと注意点
借用書を作成する際は、トラブル防止のため、次のポイントを意識しましょう。
- 借入額は大字(だいじ)を使用する
- 手書きの場合はボールペンや万年筆で作成する
- PCで作成する場合は署名捺印や記名押印をする
- 1万円以上の借入には収入印紙を貼る
- トラブルを防止したいなら公正証書で作成する
借入額は大字(だいじ)を使用する
借用書に借入額を記載する際は、「大字」を使用して文字を詰めて記載するのがポイントです。大字で記載することで、借入額を勝手に改ざんされるリスクが軽減できます。
数字 | 大字 |
---|---|
1 | 壱 |
2 | 弐 |
3 | 参 |
4 | 肆 |
5 | 伍 |
6 | 陸 |
7 | 漆 |
8 | 捌 |
9 | 玖 |
10 | 拾 |
100 | 佰・陌 |
1000 | 仟・阡 |
10000 | 萬 |
たとえば、30万円を借りた際は「金参拾萬円」と記載します。
数字や通常の漢数字で記載をすると、0や一を追加しただけで金額が改ざんできてしまうため、大字で記載するのは借主にとっても重要です。
手書きの場合はボールペンや万年筆で作成する
借用書を手書きで作成する場合は、修正ができないボールペンや万年筆を使用しましょう。
シャープペンシルや鉛筆、消せるボールペンだと改ざんされる恐れがあるだけでなく、筆跡が消えてしまうことも考えられます。
また、書き間違えた際も、修正液で修正をすると改ざんを疑われる可能性があります。
そのため、書き間違えた際は二重線で消し、借用書で使用した印鑑で訂正印を押しましょう。書き間違えないように、事前に下書きをしておくのもおすすめです。
また、手書きで作成する場合、修正の手間などもあるため、テンプレートを活用しましょう。
PCで作成する場合は署名捺印や記名押印をする
PCで作成する場合は、署名捺印、または記名押印しましょう。
署名捺印 | 氏名や名称を自筆し、印鑑を押す |
記名押印 | 氏名や名称は印字しておき、印鑑を押す |
署名捺印や記名押印がないと、偽造を疑われる恐れがあります。
本人の意思でお金を借りた証明をするためにも、必ず署名や押印をしましょう。
1万円以上の借入には収入印紙を貼る
1万円以上を借り入れる際は、借用書に収入印紙を貼る必要があります。
お金の貸し借りに関する契約書には印紙税が課税されるため、収入印紙を貼って納税します(印紙税法第2条)。
収入印紙は切手のような証紙で、コンビニや郵便局で購入できます。借入額に応じた収入印紙を添付しましょう。
借入額 | 添付する収入印紙の金額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
10万円以下 | 200円 |
10万円超~50万円以下 | 400円 |
50万円超~100万円以下 | 1,000円 |
100万円超~500万円以下 | 2,000円 |
… | … |
記載がない場合 | 200円 |
収入印紙を貼付しないと、過怠税を課税されたり、刑事罰を科されたりする恐れがあります。
なお、印紙税の課税対象となる文書に印紙を貼り付けた場合には、その文書と印紙の彩紋とにかけて判明に印紙を消さなければならないことになっています(印紙税法第8条第2項)ので忘れずに消印も押印しましょう。
また、電子文書によって作成された借用書には、収入印紙の貼付は不要です。
トラブルを防止したいなら公正証書で作成する
借用書の偽造や改ざんを疑われないよう注意を払っていても、後になって相手が自分の署名押印を否定するなどして、トラブルになる可能性があります。
こうしたトラブルを防止し、証明力の高い借用書にするのであれば、公正証書で作成するのがおすすめです。
公正証書とは、法務大臣から任命された公証人が作成する公文書のことです。
公正証書は法律に精通した公証人の関与のもとで作成されるため、非常に強力な証拠として扱われます。
また、原本は公証役場で保管され、偽造や改ざんのリスクもありません。
借用書を公正証書で作成する場合は、公証役場に出向き、公証人に作成を依頼します。
また、執行文(強制執行認諾文言付)を付与してもらうことで、返済の約束が守られなかった際に、裁判を申し立てなくても差し押さえの手続きに移行できます。
参考:日本公証人連合会
借用書が無効になり得る場合について
借用書を作成しても、次に該当する場合、無効となる可能性があるため注意が必要です。
- 借用書に偽造や改ざんがある
- 法律や公序良俗に反している
- 借主が制限行為能力者だった
- 消滅時効が完成している
借用書に偽造や改ざんがある
偽造や改ざんされた借用書は無効となります。
たとえば、借主以外が借用書を作成したり、貸主が勝手に借入額を増やしたりすることが挙げられます。
法律や公序良俗に反している
借用書が、各種法律や公序良俗に反する場合は、全部または一部無効になります(民法第90条)。
法律に反する場合 | ・脅迫や詐欺行為によって作成された ・利息制限法を超える金利 など |
公序良俗に反する内容 | 返済できない場合に ・違法行為に加担させる ・過剰な利息を定める ・体や臓器を売って返済する など |
借主の返済を促すために、公序良俗に反する内容を盛り込むのは無効となる可能性があるのでやめましょう。また、利息や遅延損害金については、法律で上限が定められています。
元本 | 利息の上限金利 | 遅延損害金の上限金利※ |
---|---|---|
10万円未満 | 年20% | 年29.2% |
10万円以上100万円未満 | 年18% | 年26.28% |
100万円以上 | 年15% | 年21.9% |
法的に有効な借用書を作成するのであれば、法律で定められた範囲で金利を決定しましょう。
参考:日本貸金業協会
借主が制限行為能力者だった
借主が制限行為能力者だった場合も、借用書が無効になる可能性があります。
制限行為能力者とは、認知症の高齢者など、判断能力が不十分だと考えられる人のことです。
こうした人が不利益を被らないように、制限行為能力者が単独で行った法律行為は取り消される可能性があります。
行為者 | 法律 |
---|---|
未成年者 | 法定代理人の同意がない未成年者の法律行為は取り消すことができる(民法第5条) |
成年被後見人 | 成年被後見人の法律行為は取り消すことができる(民法第9条) ※成年被後見人とは、判断能力が全くない人のこと。 |
被保佐人 | 保佐人の同意ない被保佐人の法律行為は取り消すことができる (民法第13条第4項) ※保佐人とは、判断能力が著しく不十分な人(被保佐人)の法律行為をサポートし、同意権や取消権を与えられた人のこと。 |
被補助人 | 法律行為をする際に補助人の同意が必要だと審判で決定されている場合は、補助人の同意がない被補助人の法律行為は取り消すことができる(民法第17条第4項) ※補助人とは、被保佐人よりも判断能力の低下が軽く、判断能力が不十分な人(被補助人)の法律行為をサポートし、同意権や取消権を与えられた人のこと。 |
消滅時効が完成している
貸主が借主に返済を求める権利は、一定期間行使しない場合、消滅時効となり、返済を求めることができなくなります。時効は、最終返済日から5年または10年が経過すると完成します。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
引用元:民法 | e-Gov法令検索
ただし、内容証明郵便による請求や、借主に債務を負っていることを承認いただく、裁判の申し立てで一時的に時効の完成を阻止することも可能です。
まとめ
借用書を作成することで、トラブルが回避できるだけでなく、きちんと返済してもらえる確率も高まります。ただし、必要事項を明記しなければ、法的に有効な借用書は作成できません。
大きい金額の貸し借りであれば、専門家に借用書を確認してもらうのもよいでしょう。また、適切な借用書を簡単に作成したい方は、当記事で紹介したテンプレートを積極的に活用してみてください。
監修者情報
エニィタイム行政書士事務所 代表 中村 充(行政書士)早稲田大学商学部卒業後大手通信会社に入社、法人営業や法務業務に携わる。2009年に行政書士資格を取得し、2017年、会社設立及び契約書作成に特化した事務所を開業。弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士等各種専門家との連携体制を構築し、企業活動のバックオフィス業務すべてのことをワンストップで対応できることも強み。
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金銭消費貸借契約書は、将来返済することを前提として金銭の貸し借りが発生した場合に、金額・返済期間・利息・連帯保証人などについて双方が合意し、明確に書面で取り交わすものです。利息や連帯保証人についてはトラブルのもとになりやすいため、きちんと確認したうえで締結するようにしましょう。
また、同じく金銭の貸し借りに際し、その内容や返済等について記載した借用書(借用証書)テンプレートもご用意しています。これは、借主が作成し貸主に提出するものです。
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