今年度も継続!史上最大級の補助金「事業再構築補助金」完全解説ガイド

最終更新日:2023年12月01日

「事業再構築補助金」完全解説ガイド
「補助金」は、国(や自治体)が事業者さんに支給してくれるお金、つまり返済の義務がないお金です。厳しい環境変化での売上不振に苦しむ方々や、国がこれから進めたい政策に協力してくれる事業に対して、その援助と後押しの証として補助してくれるものです。返済の必要がない資金ですから社長さんにとっては本当にありがたいお金と言えます。

その補助金の中で、今回は、昨年コロナ禍で急遽策定されながら本年度(令和5年度)も継続されることが決まった、過去最大級の補助金が用意されている「事業再構築補助金」について解説していきます。
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事業再構築補助金とは

事業再構築補助金は、コロナ禍で大きく変化した社会情勢の中、業況が大変厳しくなってきた事業者さんが、その現況を乗り切ろうとするための事業(再構築事業)を実施しようとする場合に、支援する補助金として令和4年度に発表されました。

たとえば、地域密着で直接店頭販売をしていた小売業者さんが、コロナによる客足の激減に対応して全国に向けてECショップを立ち上げるとか、レストランを営んでいた飲食業者さんが、同じく来店顧客の減少によって売上が大きく落ち込んだのを契機にテイクアウトや巡回サービスカーで出張販売にトライするといった例など、多くの事業者さんがこの補助金を活用しました。

令和5年5月に、新型コロナは「5類感染症」に移行され、一旦落ち着きを取り戻そうとしています。ですが、コロナ型補助金として今後の動向が注目されていた「事業再構築補助金」は、そのまま内容を変更しながら今年度も継続されることになりました。

私たちにはわかりにくいですが、事業再構築補助金には下図表1)のように予算が積み上げで計上されていて、その額は合計「2兆4,408億円」にもなります。この額はどんな他の補助金の予算をも凌ぐ圧倒的な金額です。

図表1)事業再構築補助金計上予算

事業再構築補助金計上予算

それではこの膨大な予算は誰が使えるのか?どんな人が利用できるのか?どれぐらいのお金をもらえるのだろう?自分でも使えるのだろうか?など、アナタの頭に浮かんだ疑問に答えていきましょう!

誰がもらえる補助金なの?-申請できる事業者

結論から言えば、この補助金を申請できる方々の範囲はかなり広いです。中小企業であればまず申請できると思って大丈夫です。法人格を持たない個人事業主も申請できます。協同組合や連合会、一般社団法人や医療法人、学校法人など、通常は対象とされていない事業者も申請できる資格があります。詳しくは、事業再構築補助金サイトで公開されている「補助対象者一覧(PDF)」にて確認してください。

ただし、中小企業かどうか?は、自分では決められません。決められたルールがあります。このルールに該当していれば中小企業事業者となりますので、そこは一度確認してください。ルールの基準は「業種」と「資本規模」と「従業員」で下図表2)の通りです。

図表2)中小企業の該当条件(「事業再構築補助金 公募要領(PDF)」より)

中小企業の該当条件(事業再構築補助金公募要領より)

申請で必ず必要なことは?-申請するための必須条件

上記のように、事業再構築補助金は、ほとんどの事業者が申請できるようになっていますが、申請する際にクリアしなければならない条件があります。それが次の2つの必須条件です。

図表3)事業再構築補助金必須条件

事業再構築補助金必須条件

●申請必須条件(1)-事業再構築指針に沿った事業計画について、認定経営革新等支援機関や金融機関の確認を受けること

この補助金を申請するには、認定経営革新等支援機関(以下:認定支援機関と言います)や金融機関が確認した承認書類が必要になります。つまり、ご自身が申請する計画書は、第三者に認めてもらう必要があります。

ここで「認定支援機関なんて自分には縁遠いから無理だな」と思われる方も多いのですが、心配は要りません。お付き合いのある金融機関ならまず認定支援機関として登録されていますし、お知り合いに税理士の方がいれば、その人たちも多くが認定支援機関となっています。そのような方々に一度「認定支援機関として計画を承認してくれますか?」と聞いてみてください。

●申請必須条件(2)-補助事業(補助金をもらうために実施する事業のことです)終了後3〜5年で付加価値額が年率平均3〜5%以上増加すること。それが難しい場合は、従業員一人あたりの付加価値額が年率平均3〜5%以上増加すること

付加価値額とは、あまり馴染みのない名前ですが「営業利益+人件費+減価償却費の合計」のことです。つまり、「この事業を行なって、利益があがるか(営業利益)、人を雇うかお給料を上げるか(人件費)、事業をするうえで物を買うか(減価償却費)のどれかにちゃんと還元してくださいね」ということです。ただあくまで未来のことですから、計画書上にしっかりとそう計算されたものを提出するだけで申請時は大丈夫です。なお、年率平均の増加幅は申請する枠(後述)によって変わります。

申請するための「コース」を選ぶ

事業再構築補助金は、申請する時に、該当する「類型」と「申請枠」を選ぶ必要があります。ここが一般的に「わかりにくい」とされているところなので、わかりやすく説明します。

簡単に言えば「この補助金はAのコースから一つ、Bのコースから一つ、ご自身が行うこれからの事業のタイプを選んで申請してくださいね」ということです。

申請するための「コース」を選ぶ

では、各コースの内容を簡単に説明していきましょう。

申請するための「再構築指針定義の類型」(コースA)を選ぶ

事業再構築補助金は、事業の内容によって次の5つに定義・分類されます。それぞれの定義に沿って「それじゃ、自分の再構築事業はここに該当するな」というのを選んでいきます。

図表4)再構築指針の類型表

再構築指針の類型表

表内の定義を読んでもよくわからないのが、言葉の意味ですよね?「業種」とか「事業」って言葉はもちろん聞いたことはありますが、それじゃ「どんな意味なのか?」というと、なかなか正確に答えられる人はいないでしょう。広辞苑で調べるのも方法ですが、この指針での定義では以下のような意味だと思ってください。

すべての本が図書分類法で分類されているように、実は私たちのビジネスは、日本標準産業分類という表の中で必ずどこかの分類に属するようになっています。この表の中で大分類が「業種」、中分類、小分類・細分類が「事業」です。ですから、大分類が変わってしまうものは「業種転換」となり、大分類は変わらないけれどもその中の中分類や小分類が変わるものが「事業転換」となります。

参考)総務省 日本標準産業分類(平成25年10月改定)(平成26年4月1日施行)

図表5)産業分類について(「事業再構築指針の手引き(PDF)」より)

産業分類について(事業再構築指針の手引きより)

「じゃ、大分類も中分類も小分類も変更しなければ事業再構築補助金には申請できないの?」と思う人が多くいらっしゃいますが、そういう事業者のために用意されているのが「新市場進出」となります。ただし分類が変わらなくても、その中の商品、製造方法、顧客(市場)は変えなくてはいけません。

このAコースの定義を選ぶ際に必要になってくる代表的な要件が以下の3つの内容になります。

図表6)指針類型の代表的な新規要件

指針類型の代表的な新規要件

Aコースを選択するための順序を整理すると次のようになります。

●ご自身の再構築する事業内容を確認する→ ●まず製品の新規性要件や市場の新規性要件、売上高10%要件を満たせるか確認する→ ●5つの定義のコースから選ぶ


Aコースを選ぶ際、順番は上記のように見ていきますが、おそらくほとんどの事業者の方々は「新市場進出」を選択することになると思います。ですからまずは「新市場進出に該当するかどうか?」を第一のチェックポイントにするのが効率的でしょう。

申請するための「申請枠」(コースB)を選ぶ

類型を選択したら、次は申請枠(コースB)の選択です。今回(第10回公募分)の事業再構築補助金は6つの申請枠が用意されています。ご自身の再構築の事業がどの枠に該当するのか?申請枠の必須条件と照らし合わせて該当する枠を選んでいくことになります。

ここが最も申請を検討するときのキモとなります。申請する枠によって、必須条件や補助金の最大額、あるいは補助率などが違いますので、選択は慎重にしたいものです。では一つ一つその申請枠の内容を見ていきましょう。

(1)最低賃金枠

この枠は、最低賃金引き上げの影響を受けて、原資の確保が困難な、特に業況の厳しい中小企業者に向けて用意された枠です。厳しい状況を証明するために必須条件の中で「売上減少要件」が過去第9回公募までの申請と同様に義務付けられているので、この枠で申請するときは注意が必要です。

図表7)最低賃金枠の主要要件表

最低賃金枠の主要要件表

(2)物価高騰対策・回復再生応援枠

この枠は、コロナや物価高などによって、依然として業況が厳しい事業者に対する支援として設けられた枠です。最低賃金枠と同様に「売上減少要件」が必須であるのと、この枠独自の「再生計画等の策定済」が必須条件として加わっているのが特徴です。過去第9回公募までの回復・再生応援枠と緊急対策枠を統合された枠という位置付けです。

図表8)物価高騰対策・回復再生応援枠の主要要件表

物価高騰対策・回復再生応援枠の主要要件表

(3)産業構造転換枠

この枠は、国内市場の縮小など、産業構造が変化したことで今の事業の継続が非常に難しく、再構築要素が大きい新たな事業を考えている方々用に用意された枠です。ここでは対象経費に廃業費が追加されています。廃業までも視野に入れている場合に選択する枠となります。廃業費があるのであれば、最大2,000万円分補助金上限が上乗せされています。

図表9)産業構造転換枠の主要要件表

産業構造転換枠の主要要件表

(4)成長枠

この枠は、成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者を支援するために設けられた枠です。おそらくほとんどの事業者がこの枠を利用することになると思います。

ただ、成長分野は「再構築で取り組む事業が過去〜今後のいずれか10年間で市場規模が10%以上拡大する業種・業態に増していること」という条件をクリアすることが必要になります。またそれは自分で勝手に決めることはできなくて、分野が指定されているリストの中にあるか、なければ申請者自身で客観的な統計データなどを使って証明する必要があるのが、他の枠と大きく異なるところです。

図表10)成長枠の主要要件表

成長枠の主要要件表

(5)グリーン成長枠

この枠は、第9回公募分までのグリーン成長枠がそのまま継続された形です。今回はこの枠の中に「エントリー」というコースが新設されました。従来までの要件を「スタンダート」と呼ぶことにして、それよりも比較的申請しやすい(だからエントリーという名称がついているのでしょう)要件を設定することで、より国が進めるカーボン・ニュートラル政策を強化したいのだと思われます。

図表11)グリーン成長枠(エントリー・スタンダード)の主要要件表

グリーン成長枠(エントリー)の主要要件表
グリーン成長枠(スタンダード)の主要要件表

追加の2つの促進枠 【卒業促進枠】と【大規模賃金引上促進枠】について

申請枠(4)の「成長枠」と、申請枠(5)の「グリーン成長枠(エントリー・スタンダード)」には、追加の促進枠として「卒業促進枠」と「大規模賃金引上促進枠」という枠が用意されています。この枠を使うことで、大規模賃金引上枠であれば3,000万円が、卒業促進枠であれば2倍まで補助金が上乗せされます。2つの促進枠が使える条件は下記です。

図表12)上乗せ枠(卒業促進枠・大規模賃金引上促進枠)の主要要件表

上乗せ枠(卒業促進枠・大規模賃金引上促進枠)の主要要件表

(6)サプライチェーン強靭化枠

コロナやウクライナ戦争の影響で、日本国内で提供される製品や部品が、海外からの提供がストップすることで非常に入手が困難になりました。このことを受けて産業界での国内回帰が改めて見直されています。この枠は、その国内サプライチェーン(供給の鎖という意味です)を強くする事業に取組む事業者を支援するために設けられた枠です。

図表13)サプライチェーン強靭化枠の主要要件表

サプライチェーン強靭化枠の主要要件表

どんな費用に対して補助金がもらえるの?-補助金対象経費について

事業再構築補助金で認められる費用の代表的な要素を以下の図表14)にまとめています。

これまでほとんどの他の補助金では「建物」は対象として認められませんでした。でも、この事業再構築補助金では、金額が大きく嵩む建物費用も認められているというのが大きな特徴です(新築については許される条件があります)。
また、建物を建てる際に付いてくるような、撤去費、仮住まいになる場所の賃貸費、移転費用についても補助されます。考えてみれば当たり前かもしれませんが、そういう事がまず認められなかった過去の経緯を振り返ると、この補助金は「融通が効いた補助金」だなと感じます。

図表14)認められる対象経費一覧表

認められる対象経費一覧表

細部に条件設定がされている場合があります。詳細は公募要領で確認してください。

どんな費用は認められないの?-補助金対象外経費について

補助金について、多くの方々が勘違い(思い違い)をされているものに、認められない経費があります。実は補助金では事業にかかる経費がすべて認められるわけではありません。そこは申請する前にしっかりと把握しておきたいです。補助してもらえると思って申請したものの、それが補助対象にならなければ計算が大きく狂いますからね。

下記に代表的な対象外経費(認められない費用)を挙げてみました。原則としては、補助事業に使われるのか、他の事業に使われるのかがはっきりしない費用や、資産の購入は認められません。

たとえば自動車やパソコンがその代表的なものですし、販売する商品の仕入れ代や、事業をするための人件費なども認められません。またフランチャイズについてもその加盟料は認められませんので、注意してください。

図表15)認められない対象外経費一覧表

認められない対象外経費一覧表

申請や手続きはどうすればいいの?-必要な準備と提出書類

この補助金の申請はすべて電子申請となります。「デジタルは苦手だから」という方もまだまだ多いのですが、こればかりは決まっていることなのでしょうがありません。

電子申請は「Jグランツ」というシステムの上で行うことになります。このJグランツに入る(ログインする)ためのIDは、また別の「GビズID」というもので管理されているので、そのGビズIDをまだ取得されていない方は、まずIDを取得することが最初のスタートとなります。

申請する際は、前述の定義(Aコース)と申請枠(Bコース)を決めたうえで、それぞれについて必要な書類を準備して、最後は書類を添付する形で申請することになります。

どのコースで申請しても必要な提出書類は以下となります。
●事業計画書
●認定底英革新等支援機関(認定支援機関)・金融機関による確認書
●決算書(直近2年間の貸借対照表、損益計算書、製造原価報告書、販売管理費明細、個別中期表)
●ミラサポPlus電子サポートの事業財務情報
●従業員数を示す書類
●収益事業を行なっていることを説明する書類


上記以外に、申請する枠によってはまた別の書類が必要になります。まずはご自身の申請枠を確認して、必要な書類を公募要領などで確認しましょう。一番ボリュームがあって採択に影響を及ぼすのが「事業計画書」になります。ここは時間をかけて作りたいので、申請の際には日程に余裕をもって臨みたいです。

「スケジュールはどうなっているの?いつでも申し込めるの?」公募スケジュールについて

本原稿作成時点(令和5年4月末日)で、事業再構築補助金(第10回公募分)のスケジュールは次のようになっています。第10回以降はまだ日程が発表されていませんが、令和5年度中(令和6年3月まで)にあと2回公募することは発表されていますので、ご自身の事業計画に合わせてスケジュールを考えてみてください。

◯第10回事業再構築補助金
■公募開始 令和5年3月30日(木)
■申請受付 令和5年6月上旬予定
■応募締切 令和5年6月30日(金)18:00

まとめ

「事業再構築補助金」は、当初はコロナ禍で苦しむ事業者のために用意されたものでした。ですが、実はコロナに限らずどの時代でもビジネスは変化を求められます。世の中の価値観が変わるにつれて、お客様のニーズも変わっていくでしょう。たとえば製造業であれば、より短納期で、より少量で、より個別仕様の製品が求められます。これはコロナとは関係ない流れです。

「今まで通用していた商品やサービスが、気づかない間に売れなくなってきている」

その時がご自身のやり方を変えるタイミングだとしたら、ぜひこの「事業再構築補助金」があるうちに思い切って挑戦されてはいかがでしょうか?

※この記事は令和5年4月末日時点の情報を元に掲載しています。補助金情報は随時変更(休止や中止含む)されますので、詳しくは主な下記関連機関にお問い合わせください。

<主要問い合わせ先>
●事業再構築補助金事務局
 コールセンター:【ナビダイヤル】0570-012-088/【IP電話用】03-4216-4080
●お近くの商工会・商工会議所
よろず支援拠点(支援拠点一覧)




執筆者情報

橘高総合広告研究所 代表 橘高唯史(中小企業診断士・フリーライター)
大手百貨店系通信販売カタログのディレクター業務に20年携わり、そこで培った「売れる理由」を体系化して2017年にコンサルタントとして独立。現在は公的機関の経営相談員やセミナー講師を務める一方、ライターとして執筆活動も行なっている。
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