労働条件通知書とは?記載すべき項目やルールを解説

最終更新日:2024年02月21日

労働条件通知書とは?記載すべき項目やルールを解説
労働条件通知書とは、労働基準法第15条第1項によって労働者に交付が義務付けられている書類です。
企業は労働者を雇用した際に、労働条件通知書で労働条件を明示しなければなりません。もし必要な労働条件を明示しなかった場合は、罰則が科される可能性があるため、法律で定められた項目は必ず記載する必要があります。
本記事では、労働条件通知書の記載すべき項目や基本的なルールを解説します。
【目次】
  • 労働条件通知書とは
    • 労働条件は明示する義務がある
    • 労働条件通知書を交付すべき対象者
    • 雇用契約書との違い
  • 労働条件明示のルール
    • 労働条件を明示すべきタイミング
    • 労働条件を明示する場合に用いられる方法
  • 労働条件通知書に記載するべき事項
    • 必ず記載するべき事項
    • 定めがある場合に明示するべき事項
    • 有期雇用・短時間労働者に対して記載するべき事項
  • 労働条件通知書の作成方法
    • 労働条件通知書の書き方
    • 労働条件通知書を作成する際の注意点
    • 労働条件通知書のテンプレート
  • 2024年4月の法改正の概要
    • すべての労働者
    • 有期雇用労働者
    • 無期転換申込権が発生する有期雇用労働者
  • まとめ

労働条件通知書とは

労働条件通知書とは、以下の労働基準法第15条1項の規定により、企業が労働者を雇用する際に交付する書類のことです。

労働基準法第15条1項
「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない」

労働条件は明示する義務がある

法律では、企業に対して労働者を雇用する際に、労働条件を明示する義務を課しています。

労働条件通知書に記載すべき事項は労働基準法施行規則第5条で定められており、記載がなかったり、交付しなかったりした場合は30万円以下の罰金が科される可能性があります。

また、パートタイマーや有期雇用労働者については、追加で必要な記載事項が定められているため、記載漏れのないよう作成しなければなりません。
出典:労働基準法第120条第1号

労働条件通知書を交付すべき対象者

労働条件通知書は、雇用するすべての労働者が対象となります。
正社員だけではなく契約社員やパート・アルバイトにも交付しなければなりません。

ただし、派遣社員は派遣元が雇用関係にあるため、派遣元に労働条件通知書の交付義務があります。

また労働者派遣法では、派遣契約を結ぶ際に「就業条件明示書」の交付も義務付けていますが、労働条件通知書と内容が類似していることから、「労働条件通知書 兼 就業条件明示書」として交付している派遣会社もあります。

出典:労働者派遣法第34条

雇用契約書との違い

労働条件通知書と雇用契約書はどちらも労働者を雇用したときに作成する書類ですが、それぞれ以下の違いがあります。

  • 雇用契約書:民法第623条に基づいて労働契約の締結を証明する書類
  • 労働条件通知書:労働基準法第15条に基づいて労働条件を明示する書類

労働契約は、書面の作成まで求められていませんが、口頭だけの契約では「言った、言わない」の紛争が起こる可能性があります。そのため、労働契約が締結したことを証明する書類として、双方の署名または記名押印を残した雇用契約書が作成されます。

一方、労働条件通知書は、企業側が一方的に労働者に交付する書類です。労働基準法施行規則第5条で定められた事項を記載し、原則書面で明示します。

ただし、労働契約に締結に伴って労働条件の合意が必要なことから、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた「雇用契約書兼労働条件通知書」を作成し、双方が署名または記名押印するのが一般的です。

参考記事:雇用契約書とは?必要性や記載事項、テンプレートを紹介

労働条件明示のルール

労働条件の明示はいつ、どのような方法で行うかが法律で定められています。

ここからは、労働条件明示のルールとして「明示すべきタイミング」と「明示方法」を解説します。

労働条件を明示すべきタイミング

労働条件の明示は労働契約を締結するタイミングで必要になります。また、有期雇用労働者の契約更新時や定年再雇用時など、労働契約を更新するときにも明示が必要です。

なお、採用内定により労働契約が成立する場合は、内定通知時に労働条件の明示が必要になります。

採用内定通知は、企業側が労働者の雇用契約の申し込みを承諾したものであり、入社日を始期とする雇用契約です。そのため、内定の段階で労働条件通知書を作成し、本人に交付する必要があります。

労働条件を明示する場合に用いられる方法

労働条件通知書は、原則書面で交付しなければなりません。

ただし、労働者の同意を得た場合に限り、FAXや電子メール、SMS(ショート・メール・サービス)、SNS(LINEなど)などでも明示できます。

なお、SMSは文字数制限があるため、望ましくありません。また、メール・SNSで明示する場合には、印刷や保存がしやすいようPDFファイルを添付して送りましょう

出典:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省

労働条件通知書に記載するべき事項

労働基準法施行規則第5条には、労働条件通知書に「必ず記載すべき事項(絶対的明示事項)」と「定めがある場合に明示するべき事項(相対的明示事項)」が定められています。

ここでは、それぞれの記載事項を詳しく解説します。

出典:労働条件の明示|大阪府

必ず記載するべき事項

労働条件通知書に必ず記載するべき事項(絶対的明示事項)は以下のとおりです。

  • 雇用契約期間
  • 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
  • 就業場所
  • 業務内容
  • 始業と終業の時刻
  • 所定労働時間を超える労働
  • 休憩・休日・休暇
  • 交代制に関する事項(労働者を2組以上に分けて就業させる場合)
  • 賃⾦に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  • 昇給に関する事項

なお、「昇給に関する事項」を除き、原則として書面の交付により明示しなければなりません。

定めがある場合に明示するべき事項

労働条件通知書の、定めがある場合に明示すべき事項(相対的明示事項)は以下のとおりです。

  • 退職手当
  • 賞与
  • 労働者に負担させるべき食費・作業用品に関する事項
  • 安全・衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰・制裁に関する事項
  • 休職に関する事項

また、社会保険の加入状況や雇用保険適用の有無の明示は義務付けられていませんが、労働者にとって重要な事項になるため、労働条件通知書に明示するのが一般的です。

有期雇用・短時間労働者に対して記載するべき事項

パート・アルバイトや契約社員などの「有期雇用・短時間労働者」は、前述の事項に加えて以下の事項を原則書面で明示する必要があります。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口に関する事項

なお、有期雇用・短時間労働者からの相談に応じるための窓口の設置は、法律で義務付けられています。

労働条件通知書の作成方法

ここからは、労働条件通知書の一般的な書き方と注意点を解説します。

労働条件通知書の書き方

労働条件通知書に記載する内容は、就業規則を下回ることはできません。就業規則を下回る労働条件は無効となり、その条件は就業規則で定める基準になります。
ひとつひとつの項目に誤りがないか十分確認して作成しましょう。

項目ごとに詳しく解説します。

雇用契約期間・更新する場合の基準

無期雇用の場合は期間の定めなしと記載し、雇用契約に期間がある場合は契約期間や更新の有無を記載するとともに、更新する場合の基準を記載します。
また、試用期間を設ける場合はその期間を記載しましょう。

就業場所

雇入れ直後の就業場所を記載します。2024年4月以降は、将来の配置転換などによって変わり得る「就業場所の変更の範囲」の記載も必要になります。

業務内容

雇入れ直後の業務内容を記載します。2024年4月以降は、将来の配置転換などによって変わり得る「業務内容の変更の範囲」の記載も必要になります。

始業と終業の時刻・交代制に関する事項

雇入れ直後の始業・終業時刻を記載します。変形労働時間制・交代制・フレックスタイム制・裁量労働制などの適用がある場合は制度に応じた時刻の記載が必要です。

所定労働時間を超える労働の有無

所定労働時間を超える労働の有無を記載します。固定残業代がある場合は、月間の残業時間を記載しましょう。

休憩時間

就業規則で定められている休憩時間を記載します。

休日

所定休日の曜日または日を特定して記載します。
土・日・祝日が休みの場合は「毎週土曜日・日曜日・国民の祝日、会社が指定した日」とすることが多いです。シフト制では「勤務シフト表により指定した日」とする場合もあります。

休暇

年次有給休暇が付与される条件や時期、日数、時間単位の年次有給休暇の有無を記載します。
また、その他の休暇制度(夏季休暇など)がある場合には有給・無給別に休暇の種類や日数(期間)を記載します。

賃金に関する事項

基本給や諸手当、割増賃金、賃金の締め日・支払日・支払方法を記載します。
有期雇用・短時間労働者の場合は「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」の記載も必要です。

退職に関する事項

定年や継続雇用制度の有無、解雇に関する規定などを記載します。
なお、65歳以降の雇用制度で創業支援等措置を設けている場合は、その旨も記載します。

その他

社会保険の加入状況、雇用保険の適用の有無を記載します。

有期雇用・短時間労働者の場合は、相談窓口について記載が必要です。窓口の担当部署や担当者名、連絡先などを記載しましょう。

労働条件通知書を作成する際の注意点

労働条件通知書を作成する際の注意点は以下の2点です。

  • 相対的明示事項はできる限り書面で明示する
  • 雇用契約書を兼ねる場合は署名または記名押印が必要になる

相対的明示事項はできる限り書面で明示する

相対的明示事項は、書面による明示は求められていません。
しかし、トラブル防止のためにも、できる限り書面を交付して明示するのがよいでしょう。

労働条件通知書で明示しなかった事項に関しては、就業規則を明示する方法が一般的です。

雇用契約書を兼ねる場合は署名または記名押印が必要になる

労働条件通知書が雇用契約書を兼ねる場合は、企業側と労働者側双方の署名または記名押印が必要になります。

一方、労働条件通知書は企業側の記名のみで、労働者側の記名などは必要ありません。ただし、書面の信頼性を高めるためにも企業側は署名または記名押印をした方がよいでしょう。

なお、労働条件通知書には署名や記名押印があった方が労働条件の合意が証明されるため、雇用契約書を兼ねて作成した方がトラブルに発展しにくくなります。

労働条件通知書のテンプレート

テンプレート紹介
労働条件通知書

労働条件通知書

労働者を雇用する際、労働条件を書面にて明示する必要があります。これは、厚生労働省より配布されている「労働条件通知書」をワード上で入力しやすく編集したテンプレートです。
無期雇用・有期雇用共通で使用できます。
※2024年4月からの明示事項に関するルール改正に対応しています。

2024年4月の法改正の概要

2024年4月から「労働基準法施行規則第5条」と「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」の改正により、労働条件の明示事項が追加・変更されます。

ここでは、法改正に伴う追加・変更を以下の対象者別に解説します。

  • すべての労働者
  • 有期雇用労働者
  • 無期転換権が発生する有期雇用労働者

すべての労働者

2024年4月以降は、すべての労働者に対し、労働条件通知書に就業場所と業務の「変更範囲」を明示しなければなりません。
「変更の範囲」とは、人事異動などにより今後就業する見込みがある場所や従事する業務のことです。
たとえば、以下のような記載が必要になります。

<就業場所>
● 雇入れ直後:東京支店
● 変更の範囲:大阪支店および「テレワーク就業規則」第〇条に規定する場所

<業務>
● 雇入れ直後:営業・企画業務
● 変更の範囲:会社内でのすべての業務

加えて、在籍出向を命じることがある場合で、出向先での就業場所や業務が出向元の会社での範囲を超える場合には、その旨を明示しなければなりません。

有期雇用労働者

2024年4月以降、有期雇用労働者には雇用契約の締結と契約更新のタイミングごとに、「更新上限の有無」と「更新上限」の明示が必要です。

たとえば、更新の上限がある場合は、「契約期間は通算5年を上限とする」「契約の更新回数は4回まで」など具体的に記載します。

また、契約途中に更新上限を新設する場合や上限を短縮する場合は、事前にその理由を労働者に説明する必要があります。
更新上限の新設・短縮の理由をあらかじめ説明する際は、書面や資料を用いて個別または複数同時に説明することが求められています。

無期転換申込権が発生する有期雇用労働者

無期転換申込権とは、有期労働契約が通算5年を超えて更新される際に、労働者に発生する無期雇用に転換できる権利のことです。

2024年4月の改正では、有期労働契約が通算5年を超えた有期雇用労働者に対し、更新のタイミングごとに無期転換を申し込むことができる旨の明示が必要になります。加えて、更新のタイミングごとに無期転換後の労働条件の明示も義務付けられます。

なお、契約期間が5年を超えた時点で無期雇用の申し込みがなかった場合でも、次回の更新時に「無期転換の申し込みできる旨」と「無期転換後の労働条件」の明示が必要です。

出典: 令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます|厚生労働省

まとめ

労働条件通知書は、労働基準法第15条第1項によって労働者に交付が義務付けられている書類です。
労働条件通知書には、労働基準法施⾏規則第5条に定められている事項を記載しなければなりません。
また、2024年4月以降は、就業場所・業務の変更範囲や更新の上限、無期転換申込機会、無期転換後の労働条件の明示が義務付けられます。

労働者を雇用する際は、明示漏れのないよう記載事項を把握し、法令に基づいた労働条件通知書を作成しましょう。

執筆者情報

きた社労士事務所 代表 北 光太郎(社会保険労務士)
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事し、計10年の労務経験を経て独立。独立後は企業の労務支援のほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。Webメディアの専門性と信頼性の向上を支援するとともに、読者にわかりやすく正しい情報を伝える社労士として活動をしている。
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