秘密保持契約書(NDA)とは?《契約書のひな形あり》メリットや書き方などを解説!
最終更新日:2024年08月26日
ビジネスをする中で、個人情報や営業情報、技術情報など外部に漏洩してはいけない情報の共有が必要になるケースもあるでしょう。
そういった場合、秘密保持契約書を交わすことで、第三者に業務上知り得た秘密情報を開示しないように禁止することが可能です。
本記事では、秘密保持契約書の概要や必要性といった基礎的な情報から具体的な作成方法まで、わかりやすく解説します。
秘密保持契約書のテンプレート(雛形)も提供していますので、ダウンロードしてご活用ください。
- 秘密保持契約(NDA)とは一体何?
- 秘密保持契約(NDA)はなぜ必要?
- 秘密保持契約(NDA)を締結すべき場面・タイミングはいつ?
- 秘密保持契約(NDA)のメリットとは?
- 秘密情報の流出リスクを低減できる
- 不正競争防止法の適用範囲を拡大できる
- 信頼関係を構築できる
- 秘密保持契約(NDA)と関連する法律について
- 秘密保持契約(NDA)と個人情報保護法は関係ある?
- 秘密保持契約書(NDA)の条項と書き方
- タイトル・前文
- 秘密情報の定義
- 秘密情報の除外事由
- 秘密保持義務・目的外使用の禁止
- 秘密情報の破棄や返還に関する事項
- 契約期間
- 保証に関する事項
- 知的財産権の帰属に関する規定
- 漏洩時の措置
- 損害賠償について
- 紛争解決
- 秘密保持契約書(NDA)のひな形はこちら
- 秘密保持契約(NDA)に関する注意点
- 秘密保持契約書(NDA)に収入印紙は必要なの?
- 秘密保持契約書(NDA)は電子契約でも締結ができる
- まとめ
秘密保持契約(NDA)とは一体何?
秘密保持契約書とは、企業間や個人間で締結される契約の一種で、提供された情報や資料などを秘密情報(機密情報)として保持し、第三者に開示したり、契約の目的以外に使用したりすることを禁止するものです。
英語で表記すると「Non-Disclosure Agreement」となり、その頭文字をとって「NDA」と呼ばれることもあります。
個人情報、営業情報や技術情報等(以下「秘密情報」といいます)が漏洩すれば、会社にとって致命的な損失になりかねません。
そこで、事前に秘密保持契約書(NDA)を交わすことで、自社の秘密情報が第三者等に漏洩しないように制限をかけることができます。
秘密保持契約(NDA)はなぜ必要?
秘密保持契約(NDA)が必要とされる理由は、重要な秘密情報の外部漏洩を防止(漏洩リスクを低減)し、取引目的以外での利用を禁じるためです。
秘密情報は本来厳重に管理されるべきですが、取引を進めるうえで、時として取引先に情報提供しなければならない場合も出てきます。
たとえば、共同で商品開発する際には、双方で技術情報などを開示する必要も出てくるでしょう。
秘密情報を開示しなければならない、しかし情報漏洩のリスクを軽減したい、目的外の利用を禁止したいという場合に、秘密保持契約(NDA)が機能します。
仮に、情報を受けとった企業が「この情報は自社のビジネスに使える」と思った場合、秘密保持契約による縛りがないと、こちらの同意なしに勝手に利用される恐れもあります。
秘密情報に関する取り扱い方法を事前に両者で共有し、信頼関係を構築したうえで取引するために秘密保持契約(NDA)を締結する必要性があるのです。
秘密保持契約(NDA)を締結すべき場面・タイミングはいつ?
秘密保持契約(NDA)を締結すべき取引として、以下のような例が挙げられます。
- 業務委託
- 共同研究開発
- 業務提携
- M&A
- 採用活動
上記のように、双方の外部漏洩できない重要な秘密情報の共有が行われる場面では、秘密保持契約を締結すべきだと言えるでしょう。
また、秘密保持契約書(NDA)の締結タイミングは、実際の取引がスタートする前、具体的には、秘密情報を開示する前に行うべきです。なお、取引を行うかどうか決まっていない打診・交渉段階でも秘密情報を開示する必要があれば、その前に締結するようにしましょう。
もし、締結前の段階で秘密情報を開示してしまうと、情報提供を受けた側は一切の制約がないため、秘密情報が漏洩してしまうリスクがあります。故意でなくとも、その情報が秘密情報であるという認識なしに漏洩させてしまう可能性もあります。
したがって、秘密情報を開示する前に秘密保持契約(NDA)を締結しておく必要があるのです。
秘密保持契約(NDA)のメリットとは?
秘密保持契約(NDA)を締結する主なメリットは以下の通りです。
- 秘密情報の流出リスクを低減できる
- 不正競争防止法の適用範囲を拡大できる
- 信頼関係を構築できる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
秘密情報の流出リスクを低減できる
秘密保持契約(NDA)のメリットの一つ目が、取引相手からの情報漏洩リスクを低減できる点です。
情報の取り扱い方法や利用時の禁止事項、返還義務などを定めることにより、取引相手はそのルールにのっとった運用をしなければなりません。法律上当該義務を取引相手に課すことで秘密情報漏洩の抑止力になります。
また、万が一先方から情報漏洩した場合には、その損害は非常に大きなものとなることがあります。相手方の故意または過失に起因する場合、契約違反(債務不履行)に基づく損害賠償請求もできます。
その結果、情報漏洩が起きた場合であっても、賠償金を受け取ることで情報流出に伴う損害の補填が可能になります。
リスクマネジメントの観点からもメリットがあるといえるでしょう。
不正競争防止法の適用範囲を拡大できる
秘密保持契約(NDA)を締結することで、不正競争防止法の適用範囲では保護されない情報を守ることができるのもメリットです。
不正競争防止法においても、営業秘密に該当する情報について一定の保護は受けることができます。なお、不正競争防止法上でいう「営業秘密」とは、
(1)秘密として管理されていること(秘密管理性)
(2)有用な技術上又は営業上の情報であること(有用性)
(3)公然には知られていないこと(非公知性)
の3つの要件を満たす情報を指し、該当する情報のみが保護の対象になります。
しかし、実際の取引においては上記の要件を満たす情報以外にも保護を必要とする情報を開示する場合があるかと思います。
また、秘密保持契約(NDA)を結ばない場合、情報の外部共有に対する判断基準が双方で異なる、ということも考えられます。
秘密保持契約(NDA)内で秘密情報を明確に定義づけすることにより、漏洩を避けたい秘密情報を双方で保護することができるようになります。
信頼関係を構築できる
秘密保持契約(NDA)を締結することで、相手方との信頼関係を築く第一歩となる点もメリットです。
企業の秘密情報を共有することで、より深い協力関係を築くことができ、ビジネスの成功に繋がります。
また、情報を提供する側から見ると相手が適切に情報を取り扱っていることがわかれば、非常に安心です。円滑に信頼関係を構築できるでしょう。
以上の点から、秘密保持契約(NDA)は、企業の重要な情報を保護し、ビジネスを円滑に進める上で非常に有効な手段といえます。
秘密保持契約(NDA)と関連する法律について
前章でも触れましたが、秘密保持契約(NDA)と関連する法律としては、まず「不正競争防止法」が挙げられます。
不正競争防止法とは、法人間の公正な競争の実現・維持を目的とした法律です。
法律の中では取り締まりの対象になる「不正競争」に該当する行為に関して言及されています。
不正競争行為の一つに、営業秘密(営業秘密となる要件については上記参照ください)の不正使用行為が含まれます。
営業秘密の不正使用行為は禁止とされ、別途秘密保持契約(NDA)を交わさなくても保護対象となります。
ただし、営業秘密以外の情報に関しては、一切保護されません。
前述の通り、保護する情報の範囲を広げたい場合は、秘密保持契約(NDA)を交わすことで不正競争防止法の適用範囲を拡大する必要があります。
なお、秘密保持義務対象の情報を明確にする手法はマーキングと呼ばれます。
マーキングでは、秘密保持契約書(NDA)の中で「相手法人に開示し、開示の際に秘密である旨を明示した情報もしくは技術」と明記しておきます。
事前に「これは秘密情報なので他言は無用で」と定義しておくことで、不正競争防止法で定められた範囲を超えて情報保護の義務対象を広げられるのです。
また、提供側と受領側との間で、認識の食い違いが起きるのも防止できます。
秘密保持契約(NDA)と個人情報保護法は関係ある?
取引先と共有する情報の中に個人情報が含まれる場合、「個人情報保護法」の観点から秘密保持契約(NDA)内に個人情報を秘密とすることを定義する必要があります。
個人情報取扱事業者は、「個人データの取扱いの全部又は一部を委託する場合は、取扱いを委託された個人データの安全管理が図られるよう必要な措置を委託先に対し講じなければならない」と定められています。
その他、委託先への監督義務や万が一情報流出した際の報告義務などの規定も個人情報保護法では定められています。
ビジネスの内容によっては、秘密情報に個人情報が含まれる場合もあるでしょう。
その場合、秘密保持契約(NDA)の中では個人情報の取扱いに関する定義を明示してください。
取り決めを事前に交わしておけば、大事な個人情報が先方を通じて漏洩するような心配も低減できます。
秘密保持契約書(NDA)の条項と書き方
秘密保持契約書(NDA)に盛り込むべき条項と書き方について解説します。
秘密保持契約の一般的な契約条項は以下の通りです。
- タイトル・前文
- 秘密情報の定義
- 秘密情報の除外事由
- 秘密保持義務・目的外使用の禁止
- 秘密情報の破棄や返還に関する事項
- 契約期間
- 保証に関する事項
- 知的財産権の帰属に関する規定
- 漏洩時の措置
- 損害賠償について
- 紛争解決
それぞれ解説していきますので、作成の際の参考にしてください。
タイトル・前文
契約書冒頭に冒頭に「秘密保持契約書」(「機密保持契約書」とすることもあります)というタイトルを付けてください。
なお、内容次第では「誓約書」とタイトルが適切な場合もあります。
契約書の場合、双方が合意し、署名捺印する際に用いるのが一般的です。
一方で、誓約書は義務を負う一方のみが署名捺印する取り決めの際に表題として用いられます。たとえば、入社時に会社の秘密情報の取り扱いに関して誓約する際には、「秘密保持誓約書」とするのが一般的です。
契約書のタイトル下には前文を記載してください。
前文では、契約当事者が誰と誰であるかと、契約締結の目的を記載します。
<タイトル・前文の記載例>
○○株式会社(以下、「甲」という。)と、□□株式会社(以下、「乙」という。)とは、甲が乙に委託する●●の研究開発(以下、「本件開発」という。)のために甲が乙に開示する甲の秘密事項の取扱に関し、次の通り契約する。
秘密情報の定義
何が秘密情報として定義され、適切な取り扱いが求められるのか、その範囲を明記しておきましょう。
秘密情報を明確にすることで、提供側と受領側との間で認識が食い違うような事態も回避できます。
<秘密情報の定義の記載例>
本契約における秘密事項とは、秘密である旨を明記した文書、図面、電磁的記録媒体等、有形な媒体により相手方に開示した自己の技術上、営業上の一切の情報をいう。なお、 口頭、電子メール、視覚的手段等、書面以外の媒体、手段により開示された情報については、開示の際に、開示当事者により相手方に対し秘密である旨を伝達し、且つ、開示後30日以内に当該情報を書面化し、秘密である旨を明記して相手方に提供した一切の情報をいう。
秘密情報の除外事由
秘密情報として取り扱わない除外事由についても、明記しておきましょう。
すでに周知の情報や受領側が保持していた情報、不可抗力に伴い公然となった情報などを例外として定めておいてください。
<秘密情報の除外事由の記載例>
(1) 甲より開示を受けた時点において既に公に知らしめられているもの
(2) 甲より開示を受けた後に乙の故意・過失によらず公知となったもの
(3) 甲より開示を受ける前に乙が自ら知得し、又は秘密保持義務を負っていない第三
者より正当な手段により入手していたことを乙が証明できるもの
秘密保持義務・目的外使用の禁止
秘密にすべき情報の定義が明確になったところで、秘密保持義務ならびに目的外使用の禁止に関する記述をしてください。
通常、秘密保持契約(NDA)を結ぶ背景として、何かしら情報共有が必要なビジネス関係が発生しているはずです。別の契約書を交わしている場合もあるでしょう。
契約書には情報開示の前提になる目的などが明記されているはずです。
そこで秘密保持契約書(NDA)内では、「本件契約に記載の目的以外の使用を禁止する」といったように記述するとよいでしょう。
このような条項を設けることによって、取引相手に秘密保持の義務付けと目的外使用の禁止が可能になります。
<秘密保持義務・目的外使用の禁止の記載例>
乙は、前条による秘密事項を第三者に開示もしくは漏洩しないものとする。ただし、事前に甲より書面による承諾を得た場合はこの限りではない。
2 前項の甲の事前承諾を得た場合であっても、乙は、当該第三者が本契約上の乙の義務と同等の義務を甲に対して負う旨を確約する書面を甲に提出するものとし、甲がこれを受理するまでは、当該第三者に対し前条の秘密事項を開示しないものとする。
3 当該第三者に秘密事項を開示した後は、乙は当該第三者と連帯して甲に対してかかる義務の履行につき責任を有するものとする。
第*条(使用目的)
乙は、本契約により開示される秘密事項を本件開発の目的のためのみに使用し、それ以外の目的には一切使用しないものとする。
秘密情報の破棄や返還に関する事項
契約が終了した際の秘密情報の破棄や返還に関する条項も含めましょう。
取引が終了すれば秘密情報の使用目的が失われます。
秘密情報を相手に必要以上に保持させない、情報漏洩のリスクを低減するためにも、秘密情報の破棄や返還のルールも明確にしておきましょう。
取引終了の他にも、破棄や返還を求めるシチュエーションが発生するかもしれません。
そういったケースにも対応できるように、一定の事由を設定し秘密保持契約書(NDA)に明記しましょう。
該当事由が発生した際には、速やかな返還や破棄を先方に要求できます。
返還や破棄に関する条件が秘密保持契約書(NDA)に記載されていないとトラブルに発展する恐れもあります。
トラブル防止のためにも、秘密保持契約書(NDA)に明記しておくことが大切です。
<秘密情報の破棄や返還に関する事項の記載例>
契約期間
秘密保持契約(NDA)の有効期間も明記しておきましょう。
通常であれば、取引期間が満了するときまでが、義務期間となるでしょう。
なお、取引期間が満了になっても、秘密保持義務が引き続き発生するような契約も珍しくありません。
その場合「秘密保持義務は、本契約の終了後○年間存続する」という文言を入れておくとよいでしょう。
反対に取引期間の満了と同時に、秘密保持期間も終了でよいという場合には「契約満了をもって義務も終了するものとする」という記載で問題ありません。
<契約期間の記載例>
本契約の有効期間は、○○年間とする。ただし、本件開発が有効期間内に完了した場合は、その時点をもって契約期間は終了するものとする。
保証に関する事項
提供側が当該秘密情報をほかの第三者にも開示したり、技術などが発展途上の段階だったり正確性を保証できないケースもあるでしょう。
この場合には「保証しない」「約束しない」といった内容を契約書に盛り込むこともあります。
正確性や権利侵害有無を保証できない場合は、「秘密情報についての正確性並びに第三者権利の非侵害の保証はしない」と盛り込めばよいでしょう。
その他、当該秘密情報の独占開示を保証できない場合は、「受領者以外の第三者に対して秘密情報を開示しないことは約束しない」と記述してもかまいません。
このような文言を盛り込まないと、技術や情報に間違いがあった場合にトラブルになる可能性があります。
また自分たち以外にも情報を渡していた場合に「話が違う」と問題になる恐れがあるので、契約書に盛り込んだ方がよいでしょう。
<保証に関する事項の記載例>
開示当事者は、自己が開示する秘密情報につき、開示する権限及び権利を有すること、並びに、不正競争防止法その他の法令に違反せず、かつ第三者との契約に違反しないことを保証する。
2 開示当事者は、秘密情報の正確性、完全性及び最新性について、何ら保証をしない。
知的財産権の帰属に関する規定
秘密契約書(NDA)に定める目的で秘密情報のやり取りをした結果、成果物に知的財産権が生じる可能性があります。
成果物の知的財産権の取り扱いがどうなるか、秘密保持契約書(NDA)に明記しておきましょう。
共同開発時には多くの場合、社外に開示したくない技術情報などをベースで開発されたものです。
常識的には、情報提供した側に権利は帰属するのが、受領側が権利を主張しないという保証はありません。
万が一の時のために契約書に明記しておくべきです。
また、秘密情報そのものが著作権や特許に絡んでくるというケースもあるでしょう。
特に、革新的な技術であれば、特許問題も発生します。
この場合も知的財産権がどこに属するかどうかを秘密保持契約書(NDA)に規定しておきましょう。
<知的財産権の帰属に関する規定の記載例>
開示当事者の秘密情報の開示は、受領当事者に対して、いかなる意味においても、秘密情報に含まれる著作権、特許権、ノウハウ及び他の知的財産権の譲渡が生じることはなく、実施又は使用の許諾の効果が生じることはない。
2 開示情報に基づき受領当事者が発明、考案又は他の知的財産を創作した場合、受領当事者は直ちに開示当事者に通知するとともに、これらの知的財産にかかる権利の取扱は甲乙協議して定める。
漏洩時の措置
秘密情報が流出してしまった場合にどうすべきかに関する規定も定めましょう。
双方が情報管理を万全に行っていても、情報漏洩が発生してしまうリスクはあります。
今ではハッキングやコンピューターウイルスを介して流出してしまうケースも想定されます。
漏洩時の措置に関する条項ではまず、「受領側は情報管理者を定めること」と規定しましょう。管理者を特定の誰かに指定することで、何か問題が起きたときの責任の所在がはっきりします。
また、漏洩が発覚した場合の対処法も秘密保持契約書(NDA)の中に盛り込んでおきましょう。
一般的には「漏洩が露見した場合には直ちに相手方に報告すること」などと記載します。
早期に情報を共有できれば、被害を最小限に食い止められるでしょう。
<漏洩時の措置の記載例>
損害賠償について
秘密保持契約(NDA)に違反した場合のペナルティに関しても明記しておきましょう。
一般的には損害賠償の請求や差止が主流です。
秘密保持の約束を守らず、情報流出させれば提供者側に損害がもたらされるかもしれません。損害回復を求めることが損害賠償請求となりますが、これは法律上でも守られていることです。
また、差止とは、秘密情報の利用を差し止めにして、これ以上情報が流出し損害を被るのを防ぐための措置です。
特に差止に関しては、秘密保持契約書(NDA)に盛り込んでおいた方がよいでしょう。
というのも差止は請求できるかどうか、専門家の間でも判断が分かれるからです。
しかし、契約書に明記して、受領側の署名捺印があれば同意したことになります。
したがって、事前に契約を結んでおくことで差止が認められる可能性が高まるのです。
<損害賠償についての記載例>
乙又は第2条の第三者に起因する事由により、秘密事項が漏洩したことにより甲が損害を蒙った場合には、甲は乙に対し直接かつ現実に蒙った通常損害の範囲内において、損害賠償を請求できるものとする。但し、本契約による義務の履行につき乙に懈怠のなかったことが明らかになった場合はこの限りでない。
紛争解決
万が一紛争となった場合の、第一審専属管轄裁判所を記載してください。原則的には自社の最寄の裁判所を設定します。双方の所在地が離れており、自社最寄りの裁判所で合意できない場合は、被告の本社所在地を管轄する裁判所に設定するのが一般的です。
なお、裁判となってしまった場合、秘密情報の内容が公開されてしまうリスクに関しては考慮が必要です。
<紛争解決の記載例>
秘密保持契約書(NDA)のひな形はこちら
秘密保持契約書(NDA)を作成する場合、一から自分たちで作るとなると不備が見つかる恐れもあります。不完全な契約書を作成しても解釈の食い違いが起きて、のちに紛争に発展する危険性もあります。
テンプレートBANKでは、秘密保持契約書(NDA)のテンプレート(雛形)を提供しています。必須事項の折り込まれたテンプレートですのでぜひ参考にしてください。
ただし、取引内容によって取り決めるべき内容は異なりますので、そのまま使用するのではなく、追加すべきことはないか、逆に不要なものはないか、ひとつひとつ取引実態に照らして適宜加筆修正してください。
秘密保持契約書(NDA)テンプレートは下記のページより無料でダウンロードしていただけます。
秘密保持契約(NDA)に関する注意点
秘密保持契約書(NDA)を締結するにあたっての注意点について解説します。
秘密保持契約(NDA)を締結し、取引先の秘密情報に触れるのであれば、従業員に対して順守の徹底をすべきです。
就業規則の中で、不正利用をしないこと、また違反した場合の罰則を明記し、従業員には誓約書を書かせた方が安心です。従業員が退社した後も秘密情報を流出させないような文言で作成する必要があります。あるいは、退職時に改めて誓約書を提出させてもよいでしょう。
また、業務提携などで第三者へさらに情報開示する場合、第三者との間でも同等の秘密保持契約を締結し、末端にいたるまで秘密保持の遵守を徹底するようにしてください。
秘密保持契約書のテンプレート紹介
秘密保持契約書(NDA)に収入印紙は必要なの?
秘密保持契約書(NDA)に収入印紙を貼る必要はありません。
印紙税法上の課税文書には印紙の貼付が義務付けられていますが、秘密保持契約書(NDA)は課税文書に該当しないためです。
ただし、たとえば請負契約など課税文書に該当する内容の契約書の中に秘密保持義務の条項が含まれる形になっているのであれば、当該契約書には収入印紙を貼付しなければなりません。
秘密保持契約書(NDA)は電子契約でも締結ができる
秘密保持契約書(NDA)は電子契約で締結しても、条件を満たしていれば問題ありません。
近年では各種契約を電子契約で済ませる法人も増えてきました。紙の契約書よりも管理がしやすく、郵送のための時間もかかりません。ただし電子契約を有効にするためには、いくつかの条件をクリアしなければならないので注意してください。
電子署名とタイプスタンプを付しておかないと、紙の契約書と同等の真正性を持たない可能性があります。信頼できる電子契約サービスを利用すれば、簡単かつ法的に有効な電子署名とタイムスタンプを付与できるでしょう。
また、先方が電子契約に関する理解がない場合もあるでしょう。慣習通り従来の紙の契約書による締結を求めてくる場合もあるかもしれません。その場合、電子契約にすることで先方にどのようなメリットがあるのか説明してください。メリットがあることがわかれば、先方も納得してくれるでしょう。
まとめ
秘密保持契約(NDA)は、秘密情報を取引先と共有する際に重要な役割を果たす書類です。
適切な契約書を作成しておかないと、自社の大事な情報が流出して損害を被る危険性があります。
秘密保持契約書(NDA)を締結しておけば、相手方からの情報流出を抑止できますし、万が一漏洩したとしても損害賠償請求などが可能です。
とはいえ、契約書の中には多数の条項を盛り込んでおく必要があり、一から作成するのは大変です。
そこで、テンプレートBANKの秘密保持契約書(NDA)テンプレートを活用しつつ、実際の取引実態に合わせてカスタマイズしてご利用ください。
監修者情報
エニィタイム行政書士事務所 代表 中村 充(行政書士)早稲田大学商学部卒業後大手通信会社に入社、法人営業や法務業務に携わる。2009年に行政書士資格を取得し、2017年、会社設立及び契約書作成に特化した事務所を開業。弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士等各種専門家との連携体制を構築し、企業活動のバックオフィス業務すべてのことをワンストップで対応できることも強み。
プロフィールを見る >
関連記事
秘密保持契約書 のテンプレート一覧へ
最近最も増えた契約書の一つです。non-disclosure agreement(略してNDA)を日本語に訳して「秘密保持契約書」ですが、取引によって知りうる機密事項を第三者に開示しない、漏らさないという約束を契約書の形にしたものです。紹介などを機会にして商談を進めるとき、「ここから先はNDAを交わしてから進めましょう」という約束をします。ここまでの話は一般に公開している話でした、いよいよここからは御社(あなた)との個別の話に入ります、というお互いの合意です。もちろんペナルティー条項もありますが、どちらかというと「本気度」をお互いに確認するための書類と考えましょう。収入印紙の貼付は不要です。Word(ワード)形式のテンプレートは無料でダウンロードしていただけます。