介護休業制度とは?申請書の作り方や給付金申請の書き方を解説

最終更新日:2023年12月01日

介護休業制度とは?申請書の作り方や給付金申請の書き方を解説
介護休業制度とは、要介護者を家族にもつ従業員が利用できる休業制度です。通算93日間の休業取得が可能ですが、取得方法や休業中の賃金支払いなどについて不安があり、利用をためらっている社員もいるはずです。

企業側としても、介護離職を防ぐために介護休業制度を周知し、申し出しやすい環境構築が急務となります。

本記事では介護休業制度の概要や介護休業給付金について、介護休業制度・介護給付金の申請の流れを解説します。
労務担当者として把握しておくべき手続き、書類テンプレートも紹介しているため、ぜひご活用ください。
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介護休業制度とは

介護休業制度の概要や対象者、利用期間について解説します。制度概要を理解したうえで、必要な対策・申請書の準備を進めましょう。

要介護者をもつ従業員のための制度

介護休業制度とは、要介護者を家族にもつ従業員のための制度です。
要介護状態とは、以下の状態を意味します。

負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態
【引用】介護休業について|介護休業制度|厚生労働省

要介護状態の判定は2週間以上の常時介護が必要な状態であり、「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」を参考に判断します。
ただし、上記に示される判断基準はあくまでも参考であり、介護している従業員の事情や状態を総合的に判断し、必要な休業を認めないことがないよう事業主は柔軟な判断が必要です。

介護休業制度は休業期間中に介護だけでなく、仕事と介護を両立できる体制を構築することを目的として設立されました。
要介護者をもつ従業員は、働き手としての役割と介護で負担を抱え込んでしまいがちです。
休業制度を利用し、介護制度や地域のサービス利用の手続きをおこなうなど、介護する従業員自身の負担を軽減する狙いもあります。

また、企業にとっては介護休業制度を取り入れることで、介護離職を減らし人材確保できるメリットがあります。

介護休業制度の対象者

介護休業制度の対象者の要件は以下のとおりです。

●対象家族を介護する男女の従業員
●取得予定日から起算して93日から半年経過するまでの間に、契約更新されないことが明らかでないこと
●(労使協定を締結している場合)入社1年以上経過していること
●(労使協定を締結している場合)申し出の日から93日以内に雇用期間が終了しないこと

介護休業について|介護休業制度|厚生労働省


日々雇用の場合は上記制度の対象とならない点に注意してください。

また介護休業制度における「対象家族」とは、事実婚を含む配偶者や父母、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、子、孫が該当します。
この際、介護関係の「子」の範囲は法律上の親子関係を意味するため、養子も対象です。

介護休業について|介護休業制度|厚生労働省

介護休業制度の利用期間

介護休業制度の利用期間は、対象家族1名につき分割して3回まで、通算93日まで休業可能です。
たとえば、1回目の休業で60日間の休業を取得し、2回目で10日、3回目で23日のように分割できます。

なお、要介護状態の定義に「2週間以上の常時介護」とあるため、休業期間も2週間以上でなければならないと勘違いするケースが多いですが、これは誤りです。
休業期間自体は2週間以下でも問題ありません。
通算93日を超えなければ取得できるため、労務担当・事業主側も勘違いしないようにしましょう。

雇用保険被保険者は介護給付金を利用可能

介護休業制度を利用した休業中は、介護休業給付金を利用可能です。
介護給付金の利用条件は以下となります。

●雇用保険の被保険者であること
●介護休業制度を利用した休業であること
●介護休業を開始した日より前の2年間に被保険者期間が12か月以上であること
●(有期雇用の場合)休業開始予定日から93日から半年までの間に雇用契約が満了することが明らかでないこと

介護給付金の利用には、雇用保険の被保険者であることが条件です。また被保険者期間が12か月以上である必要がありますが、例外として12か月未満であっても該当期間に本人の疾病などの事情がある場合は、受給条件を満たす可能性があります。

また、有期雇用の場合は、休業開始予定日から93日から半年の間に、雇用契約が満了することが明らかでないことが条件です。

介護給付金の金額は、以下の計算式で算出します。

休業開始時賃金日額×支給日数×67%

正確な金額は、ハローワークに「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」に記載の金額で計算します。

厚生労働省の介護休業給付に関するQ&Aページによると、介護休業時の平均賃金と給付額は以下のとおりです。

・平均して月額15万円程度の場合、支給額は月額10万円程度
・平均して月額20万円程度の場合、支給額は月額13,4万円程度
・平均して月額30万円程度の場合、支給額は月額20,1万円程度
【引用】Q&A~介護休業給付~|厚生労働省

介護給付金の給付には上限が定められています。
介護休業中に休業開始時賃金×支給日数の80%以上の賃金が支払われている場合は、介護休業給付金は支給されません。また、80%に満たない場合においても、収入の額によっては支給額が減額される点に注意してください。

介護休暇との違い

介護休業に類似した制度で、介護休暇があります。介護休暇とは、介護休業と同じく要介護状態の家族を介護するために休業できる制度です。

介護休暇介護休業
取得日数対象家族1名につき5日対象家族1名につき93日
(3回分割取得可能)
賃金・介護休業給付金無給
(社内規則による)
介護休業給付金制度を利用できない
賃金は無給
介護休業給付金制度を利用可能
申請当日申請も可能
(社内規則によっては口頭での申請も可能)
開始日の2週間前に書面で申請が必要
対象者・雇用期間が6か月以上で
あること
・要介護状態にある対象家族を介護していること
・雇用期間が1年以上であること
・休業開始予定日から93日から半年の間に雇用状態にあること
・要介護状態にある対象家族を介護していること

介護休暇も介護休業と同様に、要介護家族のための休業制度です。しかし、介護休業制度とことなり賃金は無給でも給付金は利用できません。また、対象家族1名につき5日までという短期の休業となっています。
そのため手続きは介護休業よりもシンプルで、会社によっては口頭で当日申請も可能です。また、雇用条件についても緩和されています。

介護休業制度利用中の社会保険の取り扱い

介護休業制度利用中の社会保険の取り扱いについて解説します。
社会保険(厚生年金・健康保険)は、育休制度と異なり社会保険は免除対象外です。

1.社会保険は免除対象外
2.雇用保険料は給与支給規程に準ずる

雇用保険料は社会保険料と異なり、給与がなければ全く発生しないため、あえて別途規定を設けているケースはほぼありません。

社会保険は免除対象外

介護休業制度利用中の社会保険は、免除対象となりません。そのため休業中も通常通り、保険料納付が必要です。
介護休業の期間は最大93日と短期間であるため、育児休業のように長期の休業とは異なり社会保険料を免除するほどの金銭的負担があるとは考えられないためです。

厚生年金と健康保険の納付は、以下の3パターンで支払います。

●会社が全額負担
●会社で立て替え納付し、後日被保険者が支払う
●被保険者が毎月会社に振り込む

被保険者の負担を考えて、会社が社会保険料を支払う場合もありますが、負担は義務ではないため被保険者と相談して納付方法を決めましょう。

雇用保険料は給与支給規程に準ずる

介護休業中は、会社に賃金支払いの義務が生じません。そのため、賃金が無給になる会社もあります。その場合は賃金が発生していないため、当然雇用保険料は発生しません。
ただし、会社で介護休業中も賃金を払うという規定がある場合は、雇用保険料は通常通り発生します。

介護休業申請の流れ・書き方

労務担当者が覚えておくべき、介護休業申請の流れや書き方を解説します。

介護休業申請書の作り方

介護休業申請書は決まったフォーマットはなく、企業ごとに自由に作成できます。その際は、以下の必須事項を記載できるような書式にしましょう。

●会社代表の氏名
●申し出の日付
●休業者の所属部署・氏名
●休業申請の申し出の旨
●休業にかかる家族の状況
●休業期間
●申し出にかかる状況
●休業開始予定の2週間前に申し出ているか
●介護休業の申し出の撤回があったかどうか

介護休業申請書は記載項目が細かいため、テンプレートの利用をおすすめします。

上記のような介護休業申出書テンプレートを用いれば、記載項目の漏れや抜けなく簡単に書式を作成可能です。

必要であれば診断書の添付を指示

介護休業申出書を提出してもらう際に、必要と判断した場合は診断書の添付を指示しましょう。家族が要介護状態にある旨を証明するためです。
ただし、厚労省は「すべての申し出に対して医師の診断書提出を義務つけることは望ましくない」(【参考】よくあるお問い合わせ(事業主の方へ) |厚生労働省)としており、診断書の提出がないことを理由に申し出を拒否することはできません。

従業員からの申請書に基づき受理

介護休業申出書の提出に基づき、社内で申請を受理します。申請は休業期間開始予定日の2週間前に提出が必要であるため、日付にも注意しましょう。

上記申請書を受けてから休業開始日を判断しましょう。
受理後は「介護休業取扱通知書」を発行し、介護休業の開始予定日・終了予定日を従業員に通知してください。
「介護休業取扱通知書」には、申し出を受けての休業期間についての規定や社会保険料についての詳細、休業後の労働条件を記載しましょう。

必要な引き継ぎ

休業前に必要な引き継ぎを実施します。短期の場合は簡単な作業で問題ありませんが、長期の場合は後任者に業務の流れや作業内容など詳しく説明し、引き継ぐ必要があります。業務量によっては人員を補充するなどフォローアップも必要です。

これを怠ると、休業開始後に後任者に大きな負担がかかります。また、業務負荷が増えたことで悪感情を抱き、復帰後に職場環境が悪くなることもあるため、必ず引き継ぎ・フォローはおこないましょう。

休業開始

必要な手続きが終わったら、介護休業予定日通りに休業が開始されます。

介護休業給付金の申請の流れと書き方

介護休業給付金の申請方法や書き方を解説します。
介護休業給付金は従業員ではなく、事業者経由で申請する必要がある点に注意してください。

休業給付金の申請から給付までの流れは以下のとおりです。

1.介護休業開始
2.休業終了(介護休業期間が3か月以上の場合は3か月を経過する日まで)
3.受給資格確認・支給申請
4.支給決定通知書の交付

まずは休業終了後に受給資格の確認と、支給申請を実施します。申請先は所轄のハローワークです。
介護休業給付金の受給資格を改めて確認しておきましょう。

イ 家族を介護するために、「介護休業」を取得した被保険者(※)であること。
(※)被保険者とは、一般被保険者及び高年齢被保険者をいいます。
 (イ)ここでいう「介護休業」とは、職場復帰を前提に取得するものをいい、休業取得時に退職が確定(予定)している休業は支給の対象となりません。
 (ロ)期間雇用者も支給対象となります。
※同一の対象家族について、93 日を限度に3回までに限り介護休業給付の支給対象となります。
ロ 介護休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が 11 日以上ある完全月が通算して 12 か月以上(原則、介護休業を開始した日の前2年間に、賃金支払基礎日数が 11 日以上必要。12 か月ない場合は、完全月で賃金の支払の基礎となった時間数が 80 時間以上の月を1か月として取り扱うこととする)あること。
※過去に基本手当の受給資格や高年齢受給資格の決定を受けたことのある方については、基本手当の受給資格決定や高年齢受給資格決定を受けた後のものに限ります。
【引用】雇用保険事務手続きの手引き|厚生労働省

企業が申請をおこなう際は、以下2つの書類が必要です。

●雇用保険被保険者 休業開始時賃金月額証明書
●介護休業給付金支給申請書

雇用保険被保険者 休業開始時賃金月額証明書の記入例
を参考にし、正しく記載しましょう。
また、添付書類として以下の書類を提出します。

●対象従業員の賃金台帳またはタイムカード
●従業員から受理した申出書
●介護対象者の証明書類
●振込先通帳の写

申請は郵送または直接窓口で可能です。届出期間は介護休業終了日の翌日を起算日とし、2か月を経過する日が含まれる日の末日までとなります。
つまり3月3日に介護休業が終了した場合は、3月4日を起算日として5月31日までに申請しなければなりません。

介護休業に対して企業側が準備すべきこと

介護休業制度をより利用しやすくするために、企業側の体制構築が必要です。介護者の離職を防ぎ、より制度を活用するための取り組みを実施しましょう。

制度の周知

まず介護休業制度について、社内周知をおこないましょう。従業員は休業制度について知らず、負担を抱え込んでしまう可能性があります。
社内で利用できる休業制度を取りまとめ、閲覧できる資料を作るなどして、休業制度を周知してください。

介護休業申請のテンプレート作成

介護休業を申し出るためのテンプレートを作成しましょう。従業員が申し出する際に、フォーマットで迷わないようにするためです。

上記のようなテンプレートを使えば、すぐに申出書を作成できます。介護休業が必要な従業員のために、テンプレートを用意してください。

相談窓口の設置

介護休業制度の周知だけでは、従業員への周知は十分とはいえません。相談窓口を設置し、具体的にどのような休業取得方法なのか、給付金についての相談や社保の相談を受け付けてください。
制度の詳細がわからないことは、従業員の制度利用に対して障壁となります。介護休業の不安や疑問を解消できるQ&Aを作成し、人事課で相談できる体制を作っておいてください。

社内のフォローアップ体制の確立

介護休業の利用に際し、従業員同士の心的なハードルにも対処しなければなりません。取得する側の従業員は、「周りに迷惑をかけたくない」と感じるケースが多いためです。

事業者側で制度への理解を求め、引き継ぎがスムーズにできるように手助けしましょう。
また、休業中の業務負荷がかかる従業員に対して、残業時間が増えていないか確認し、人員の補充を検討するなどの対策も必要です。

介護休業する側も、同僚も気持ちよく制度を利用できるよう、事業者側でフォロー体制を構築してください。

まとめ

介護休業制度は、要介護家族をもつ従業員にかかる心身の負担を減らし、介護離職を防止する制度です。
ただし、休業制度自体の認知が遅れていることや、制度は知っていても申請方法がわからないなどの理由で申し出できない従業員もいるでしょう。

企業としてすべきことは、制度の周知や申出書の作成、相談窓口の設置です。従業員が介護の重圧を軽減できるよう、介護休業制度や給付金申請方法の手順を把握し、利用体制を構築してください。

監修者情報

みのだ社会保険労務士事務所 代表 蓑田真吾(社会保険労務士)
大学卒業後、鉄鋼関連の企業に総合職として就職し、その後医療機関人事労務部門に転職。約13年間人事労務部門で従業員約800名、新規採用者1,000名、退職者600名の労務、社会保険の相談対応にあたる。社労士資格取得後にみのだ社会保険労務士事務所を開設し、独立。東京都社会保険労務士会所属(登録番号 第13190545号)。
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