委任契約締結時に押さえておくべき7つのポイント&注意点

2021年03月30日

委任契約締結時に押さえておくべき7つのポイント&注意点
業務を外部に委任するにあたり、業務委託契約書(委任契約書)を締結する場合、どのような点に注意し、また、押さえておくべきポイントは何かについて解説します。契約書テンプレートを補完するものとして、参考になさってください。
※本記事は、下請法適用対象外取引を前提として記載しております。下請法適用対象取引の場合は別途下請法規定事項に従って適切に実施願います。

委任とは

業務委託契約書には「委任型」、「請負型」と呼ばれるものがありますが、「委任」とはそもそもどういったものを指すのでしょうか。まずはこの点を押さえていきましょう。

(民法/第643条)
委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる

上記のとおり、「委任」とは、発注側(=法律上は委任者といいますので以降は「委任者」とします)が法律行為をすることを依頼し、受注側(=法律上は受任者といいますので以降は「受任者」とします)がこれを承諾することにより生じるものとなります。

※なお、法律行為ではなく法律行為以外の事務処理を依頼することを「準委任」と言いますが、「準委任」には「委任」の規定が準用されますので(民法656条)、今回は「委任」という用語には「準委任」も含めての意味とさせていただきます。

よって、委任契約は、
1)依頼する法律行為(事務処理)の内容
2)当該依頼を受任することの承諾

以上2点の合意が両者で形成されていれば契約書を取り交わさずとも契約が成立(=諾成契約)することになります。

「委任」の最大のポイントは、法律行為(事務処理)をおこなうことを目的としているという点にあります。「請負」と「委任」の違いは何かといえば、その「目的が異なる」ということです。
「委任」の目的は事務の処理(=過程が重視される)であり、「請負」の目的は仕事の完成(=結果が重視される)ということになります。その他にも細かい相違点はありますが、まずはそう解釈してみてください。

法的義務

次に「委任」契約締結時に委任者・受任者双方にどのような義務が課されるのかについてご説明します。

委任者側に生じる義務

  1. 1)事務処理にかかる費用支払い義務(民法第649条・650条第1項)
    委任者は、委任事務を処理するに必要な費用については、受任者の請求により、前払いをしなければなりません。なお、後払いの場合利息も受任者より請求されれば支払わなければなりません。
  2. 2)損害賠償義務(民法第650条第3項)
    委任者は、受任者が委任事務を処理するために受任者に過失なく損害が生じたときはその損害を賠償する義務を負います。

受任者側に生じる義務

  1. 1)善管注意義務(民法第644条)
    受任者は、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負います。なお、「善管注意義務」とは、“行為者の階層・地位・職業に応じて要求される、社会通念上、客観的・一般的に要求される注意を払う義務”と一般的には意味付けられています。ただ、どのような注意が具体的には必要とされるのかについては、個々の事案ごとに判断することになります。
  2. 2)報告義務(民法第645条)
    受任者は、委任者が請求した際や委任終了後に、事務処理の状況や経過・結果を遅滞なく報告する義務を負います。
  3. 3)受取物の引渡し義務(民法第646条)
    受任者は、委任事務を処理するに際し受取った金銭その他の物、委任者のために取得した権利を委任者に引渡す義務を負います。
  4. 4)金銭消費時の義務(民法第647条)
    受任者は、委任者に引渡すべき金銭等を自己のために消費したときは、消費日以後の利息を支払わなければならず、損害を与えた際には当該損害を賠償する義務を負います。

各当事者の義務以外で「委任」で押さえておくべきポイントは、
  1. 1)特約がない限り受任者は報酬を請求することができない(民法第648条)
  2. 2)各当事者がいつでも契約を解除することができる(民法第651条)
    ※ただし、不利な時期に委任を解除した時等については解除に伴い相手方に生じた損害を賠償しなければならない
となります。特に 1) については、特約がなければ報酬を支払う必要がなくなりますので、報酬を支払う場合、しっかりと特約(=報酬を支払うということ)が契約書内に記載されているかをご確認願います。

委任契約の種類

2020年4月1日に施行された改正民法では、委任契約は2種類に分けて定義されています。各々どのような型なのかを以下にご説明します。

(1) 履行割合型
「履行割合型」とは、作業量や提供した労働時間、工数などの履行の割合に応じて報酬を支払うものであり、この型の場合、受任者に依頼した事務処理が成功したか否かにかかわらず、作業量や提供した労働時間、工数などの履行の割合に応じた報酬を委任者は支払う必要があります。

(2) 成果完成型
「成果完成型」とは、依頼した事務処理が完成した際に報酬を支払うものであり、この型の場合、受任者がどれだけ当該処理に時間を要したとしても、成果を達成できなかった場合には報酬が得られません。
この点請負契約と類似した契約といえます。

委任契約締結時の確認すべきポイント

最後に、委任契約を締結する際に確認すべきポイントについてご説明します。契約書上に、次の事項についてどのように定められているのかご確認のうえ、取引実態と照らし合わせてリスク有無判断にご活用いただければ幸いです。

【委任契約締結時に確認すべき7つのポイント】
●業務内容
●報酬
●事務処理期限
●再委任
●支払方法
●所有権の移転
●損害賠償

業務内容

「委任」は事務処理を目的としていることから、どういった事務を処理させなければならないのかは明確かつ具体的に定める必要があります。
この、「明確かつ具体的に」という点が非常に大事になります。業務内容を抽象的にしたまま契約をすることは非常に危険なのです。

一つの例を挙げます。あなたはコンサルティング会社の社員であり、お客様から自社商品の売上拡大のお手伝いをしてほしいと頼まれたとします。このとき、依頼する業務内容として「●●商品に関する売上拡大方法の企画・立案」と記載し契約締結したと仮定しましょう。

後日あなたは、しっかりと調査をおこない、ネット販売を用いた売上拡大方法の提案をしたとします。それに対し、お客様より「ネット販売もそうだが、プロモーション面や商品自体の改善、販売促進施策の面からの企画立案がなされると思っていたのでその点からも提案をいただきたい、これらの点から提案をいただくことを前提とした報酬支払いであり、そうじゃないと報酬を支払うことはできない、契約書のどこにもネット販売を用いた施策立案とは書いていないし提案は1点までとも書いてない」と言われました。
あなたは、この主張をそのまま受け入れられるでしょうか?

もし、最初に「プロモーション面や商品自体の改善、販売促進施策の面からの企画立案」であることを具体的に明示していれば、このようなトラブルは発生しなかったはずです。

業務内容は、後々のこういったトラブルを防止するためにも、明確かつ具体的に定める必要性があるというわけです。また、業務内容を明確にするということは、善管注意義務違反該当性を判断する際にも関係してきますので、その点もしっかり押さえておきましょう。

契約書を作成する際には、自分の常識=相手の常識との考えはいったん忘れていただき、必ず業務内容については認識齟齬が生じない程度に明確かつ具体的に定めらどういった業務を実施しなければいけないのかを双方にて確認しましょう。

報酬

先にも記載させていただきましたが、「委任」は、特約がなければ報酬支払が発生しません。よって、報酬を支払う必要がある場合、報酬はいくらなのか、当該報酬には事務処理をおこなううえで必要な費用が含まれているのか等について確認が必要になります。

また、報酬に消費税が含まれているか否かでトラブルとなるパターンも見受けられます。
報酬を定める際は、消費税の扱いについても必ず定められているかを確認しましょう。

事務処理期限

いつまでに事務処理を終わらせるのかについても、契約するうえでは基本的な事項となります。
期日はいつでもいいからこの仕事をいくらでお願い、という依頼はほぼありませんよね。
また、受任者側も、期日が定められていないからいつでもいいんだ、と思っていた矢先に委任者側から「1週間後に終わらせてください」と言われても困ると思います。

必ずいつまでに処理を終わらせるという期日を双方で合意する必要があります。それによって初めて、相手方に対して「期日が過ぎているため早く処理を終わらせて結果を報告するように」と主張することができます。

委任契約を締結する際は、事務処理期限はきちんと定められているか、またその期限はしっかりと事務処理を終了させるに適切な期間となっているかを双方にて確認しましょう。

契約内容・条件変更時の扱い

契約途中に業務内容が変更となったり、細かい仕様が変更されることはよくありますが、実はこれもしばしばトラブルの原因になります。
そのため、契約内容や条件が変更となった場合、どのような処理をおこなうのかを事前に契約書上に規定しておきましょう。

変更が発生した場合、変更内容やそれに対する費用の扱い等について双方押印された書面で確認する義務を課すよう定める、などの方法が考えられます。

再委任

「委任」の場合は、自分が受けた仕事を委任者に無断で第三者に再委任することは法律上禁じられています(民法第644条の2)。
よって、契約書に何も記載がない場合は、受任者が委任者に無断で第三者へ受任した業務を再委任することはできません。

したがって、通常は、法律に準じ「再委任する際には委任者側の承諾を必ず得なければならない」とし、委任者側がコントロールできるようにします。
一方、受任者が自分の判断で委任者側の承諾を得ることなく再委任できるようにする契約にするのであれば、契約書にその旨を記載する必要があります。

委任契約を締結する場合は、再委任が可能か否か、また可能である場合の条件を確認しましょう。

支払方法

支払方法で確認すべきポイントですが、いつまでにどのような方法で支払をおこなうのかが明確化されているかを確認しましょう。
支払期日、支払方法(口座振込、現金手渡しなど)、また、口座振込であれば一括払いか分割払いか、現金手渡しであればその場所などについて定めます。
それと、これを定めていなかったことで時々問題になるのが、振込手数料をどちらが負担するかについてです。

(民法/第485条)
弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。

民法ではこのように規定されていますので、契約書等に記載がなければ、報酬支払債務を有している委任者が振込手数料を負担することになります。一方、契約書内で「受任者の負担とする」と定めていれば、そのルールが適用されます。

ただ、民法で定められているとはいえ、委任者側が振込手数料を差し引いて報酬を振り込んできた場合、契約書等に記載がないと、受任者側も「法律に準じて手数料は負担してください」とは主張しにくいですよね。よって、どちらが負担するにしても、契約書にその扱いを明記しておくことをおすすめします。

所有権の移転

自身が締結予定の契約が成果完成型であり、何らかの納入物がある場合、当該納入物についての所有権移転時期がいつになっているか、という点を確認しましょう。

所有権移転時期が時間的に早ければ早いほど受任者有利になり、遅ければ遅いほど委任者に有利な条件になります。
なぜなら、所有権とは「法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利」であり、仮に報酬支払時に所有権が移転する条件となっていた場合、受任者は報酬が委任者から支払われない場合、自分が保有している所有権に基づいて納入物を引き上げることができるからです。

契約をされる際は所有権移転時期がいつとなっているかを確認し、想定している取引に支障が生じないかを確認しましょう。

損害賠償

損害賠償については、どのような契約を締結する場合でも関心の高い条項ではないでしょうか。

まず、損害賠償について法律ではどう規定されているかを確認しましょう。

(民法/第416条)
  1. 1. 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
  2. 2. 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

民法上は、通常生ずべき損害及び特別な事情によって生じた損害であっても予見すべきだったものを損害賠償の範囲と定め、当該範囲に該当する損害を全て賠償するよう定めている。

よって、契約書では、上記民法と比較してどのように規定されているかを確認する必要があります。

契約書の記載条件が、民法と比較して委任者側により有利な条件となっていることはあまりないと思いますが、たとえば、賠償範囲が通常生ずべき損害のみとなっていれば受任者側に有利な条件であると判断できますし、損害賠償の額について「契約金額を上限とする」となっている場合も受任者側に配慮された条件であると判断できます。

以上、委任契約締結時に確認すべきポイントについて解説させていただきました。

テンプレートBANKでは、委任型の業務委託契約書テンプレート(雛形)を複数提供しています。自社の取引内容に適したものをお選びいただき、実態に合わせてカスタマイズしてご利用ください。

文:行政書士 中村 充(エニィタイム行政書士事務所 代表)

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業務委託契約書は、外部へ業務を委託する場合に、委託内容や所有権、秘密保持、解約などの契約内容を明確にするため、書面として取り交わすものです。万が一トラブルがあった場合の責任問題を回避するためにも、記載間違いなどがないよう注意しましょう。
印紙の貼付についてですが、業務委託契約書の場合、契約の中身によって文書の種類が2種類に分かれます。業務委託契約書は「請負に関する契約書」(2号文書)の範疇に入ります。記載されている金額が100万円以下なら200円、200万円以下なら400円・・・、金額のないものは200円などと定まっています。ただし、契約期間の延長について書かれていると、印紙税法ではいきなり「継続的取引の基本となる契約書」(7号文書)に文書の種類が変わり、印紙税は4000円に跳ね上がります。
継続しない業務委託契約書を結ぶのであればその条文は削除してください。さもないと、追徴課税の対象になることがありますから、面倒でもその都度業務委託契約書を結ぶことを推奨します。

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※本記事は、下請法適用対象外取引を前提として記載しております。下請法適用対象取引の場合は別途下請法規定事項に従って適切に実施願います。

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