損益計算書(P/L)とは?見方や利益の読み解き方、作り方などをわかりやすく解説!

最終更新日:2024年09月10日

損益計算書(P/L)とは?見方や利益の読み解き方、作り方などをわかりやすく解説!
損益計算書は会社の経営状況や財務状況を判断するのに欠かせない書類の一つです。
自社や競合他社の経営状況・事業方針などがその数値から読み取れますので、経営層に限らず、一般社員も損益計算書について知っておくと仕事の役に立つはずです。

一方で損益計算書に対して、以下のような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
「イマイチ見方がわからない」
「読み解き方がわからず特に役立てることができていない」
「作り方を知りたい」

そこで本記事では、損益計算書の見方や読み解き方、作り方、チェックすべきポイントなどについてわかりやすくまとめました。
損益計算書について理解したいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
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損益計算書(P/L)とは

損益計算書(P/L)とは、一定期間における企業の経営成績を表す財務諸表の一つです。
会社の収益と費用を比較して、どの程度の収益もしくは損失を計上しているかが示されています。
「P/L」と呼ばれることもありますが、これは損益計算書を英語表記した際の「Profit and Loss Statement」の頭文字をとったものです。

損益計算書の正しい見方がわかれば、経営状況や事業ごとの経営成績が把握できます。
たとえば、商社が本業とは別に不動産を保有して経営していたと仮定しましょう。
この場合、損益計算書なら商社の利益と不動産経営の利益を切り離して見ることができます。
不動産経営が好調で全体の収支が黒字でも、本業の売れ行きが不調であればテコ入れを早急に検討する必要があるなど、経営判断が可能です。
その他、損益分岐点を把握するためにも役に立ちます。

会社の経営状態を正しく把握し、現状に即した経営戦略を立てるためにも、損益計算書の正しい記載方法や読み方を理解できるようになりましょう。

損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の違いは?

主要な財務諸表として、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)がありますが、両者の違いは、簡単に言えば対象期間の違いです。

損益計算書は一定期間の損益計算をまとめたもので、経営成績を示す書類になります。
期間については通常は1年間ですが、社内で経営状況や事業効率などを評価するため、月次で作成する場合もあります。

一方で貸借対照表とは、特定の時点における企業の資産や負債状況、いわゆる財務状況を示したものです。
貸借対照表を読み取ることによって、まず自社がどの程度の資産を保有しているかが把握できます。
また、資産を購入するためにどこから資金調達したかといった情報も読み取ることが可能です。

損益計算書と貸借対照表を組み合わせることで、会社の経営状況や財務状況をより詳細に理解することに役立ちます。
経営者に限らず、一般社員でも両方読めるようにしておいた方がよいでしょう。

損益計算書(P/L)からわかる利益と見方

損益計算書を読み解くことでわかる、利益の種類とそれぞれの見方について紹介していきます。

まず、会社の利益の種類は以下の通りです。

  1. 売上総利益
  2. 営業利益
  3. 経常利益
  4. 税引前当期利益
  5. 当期利益

以上の利益各種からどんなことがわかるのか、どのように見ればよいかについて説明していきます。

損益計算書

1.売上総利益

売上総利益とは、企業が商品やサービスを販売して得た売上高から、その商品やサービスを作るために直接かかった費用(売上原価)を差し引いた金額のことです。
「粗利益」「粗利」とも呼ばれます。

損益計算書の上部に、「売上総利益」の欄があるのが一般的なので簡単に見ることができます。
売上総利益の計算式は以下の通りです。

売上高-売上原価=売上総利益

売上とは、商品の販売やサービス提供に伴う収益のことです。
売上原価には、材料費や外注費などの仕入、製造業であれば製造人件費(労務費)や工場の光熱費や機械設備の減価償却費なども含みます。

売上総利益を知ることで、法人の当期における大まかな利益を把握できます。
概算でもどの程度収益が出ているか把握したければ、売上総利益を見るとよいでしょう。

2.営業利益

営業利益とは、売上から売上原価と販管費(販売費+一般管理費)を差し引いた利益のことを指します。
営業利益を見ることで、本業の収益が現状どうなっているかが把握できます。
損益計算書の上部に営業利益の欄があるので、簡単に数値を見ることができるでしょう。
計算書は以下の通りです。

売上高-売上原価-販管費(販売費および一般管理費)=営業利益

売上原価のほかに差し引かれる、販売費と一般管理費について紹介します。

  • 販売費:商品販売のためにかかる費用(広告宣伝費や営業担当者の給与など)
  • 一般管理費:企業運営のための必要経費(事務所の賃料や事務職員の給与など)

いずれも会計期間中に発生した費用の中で、商品の製造自体には関わっていない費用が対象になります。
営業利益を見ることで、本業からの収益状況が判断可能です。

3.経常利益

経常利益とは、企業が通常行っている事業全体で得た利益のことです。
計算式は以下の通りです。

営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益

経常利益の推移を確認すれば、企業全体の年度ごとの収益状況が把握できます。
経常利益は損益計算書の真ん中~下部付近に記載されています。

営業外収益と営業外費用の概要もみていきましょう。
営業外収益とは、メインの経済活動以外によって得た収益のことです。
預金や債権から発生する受取利息や、保有している株式から発生する受取配当金などが該当します。
営業外収益は各種財務活動など本業以外の活動により発生した収益です。

一方営業外費用とは、本業以外で発生する費用を指します。
こちらも財務活動の結果、発生した費用です。
融資を受けている場合の支払利息や、自社が発行している社債から生じた支払利息などが該当します。

会社のフェーズにもよりますが、経常利益は企業の経営状況や財務状況を判断するのに役立ちます。

4.税引前当期利益

税引前当期利益とは、企業が1会計期間(通常1年間)に得た利益から、税金を差し引く前の利益のことです。
計算式は以下の通りです。

経常利益+特別利益-特別損失=税引前当期利益

税引前当期利益は損益計算書の下部に記載されています。
特別利益や特別損失の意味についても見ていきましょう。

特別利益とは、企業活動から経常的に発生しない利益・臨時的に発生した利益のことです。
たとえば、所有している不動産を売却したことによる利益が該当します。

特別損失とは、企業活動から経常的に発生しない損失・臨時的に発生した損失のことです。
たとえば、所有する不動産を売却した結果の損失や災害などによる損害、損害賠償などが該当します。
特別損失は、あくまでも一時的な損失です。
特別損失の結果、税引前当期利益が赤字となったとしても事業活動の収益性が悪化していると一概には判断できません。
銀行融資を受ける場合に、ネガティブな評価とならない点もポイントです。

税引前当期利益を算出することで、税金を差し引く前の年間の利益がはっきりします。経営状況をより正確に判断できる材料だといえるでしょう。

5.当期利益

当期利益(当期純利益)とは、税引前当期利益から法人税、住民税および事業税を差し引いた金額のことです。
企業が1会計期間(通常1年間)に得た最終的な利益になります。
計算式は以下の通りです。

税引前当期利益-法人税等=当期利益

当期利益は、損益計算書の最下部に記載されています。

なお、法人によっては、法人税等調整額を差し引く必要のあるケースも出てきます。
法人税等調整額とは聞きなれない用語かもしれません。
これは税効果会計が適用された場合に計上される繰延税金資産や繰延税金負債の変化について示した勘定科目の一種です。

当期利益は法人が年間など、特定の期間で最終的に得られた収益を表します。
企業全体の経営状態を把握するために役立つでしょう。

損益計算書(P/L)でチェックすべきポイント

損益計算書(P/L)でチェックすべきポイントは以下の通りです。

  • 売上総利益率
  • 売上高営業利益率
  • 売上高経常利益率

それぞれ詳しく見ていきましょう。

売上総利益率

売上総利益率(粗利率)はチェックすべき重要なポイントです。
売上総利益率とは、売上原価に対してどれだけ利益を上乗せできているのか把握するために役立つ指標です。
計算式は以下の通りです。

(売上総利益÷売上高)×100=売上総利益率

売上総利益率の目安は業種によって異なりますが、一般的には20%以上が一つの目標になるでしょう。
優れた事業モデルを持つ企業だと50%を超えるところもあります(キーエンスなど)。
競合他社や過去の数値と比較して、自社の現状分析に活用しましょう。

売上高営業利益率

売上高営業利益率も押さえておきたい指標の一つです。

売上高営業利益率は、売上高に占める営業利益の割合を表しています。
計算式は以下の通りです。

営業利益÷売上高×100=売上高営業利益率

売上高営業利益率を見ることで本業の収益性を確認できます。

売上高営業利益率の標準的な数値は0〜5%と言われています。
5%を超えてくると優良法人だと言えるでしょう。

売上高経常利益率

売上高経常利益率とは、売上高に対して経常利益が占める割合のことです。
計算式は以下の通りです。

(経常利益÷売上高)×100=売上高経常利益率

売上高経常利益率の平均値は全業種で見ると4%程度です。
この数値を一つの目安にして、経営戦略を構築するとよいでしょう。
10%以上であれば、優良法人と言えます。

一方で企業のフェーズやビジョンにもよりますが、0%を切っているようであればコストカットなどなんらかの対策が必要です。

損益計算書(P/L)の作り方とは?

ここでは、損益計算書(P/L)の基本的な作り方について解説していきます。

決算整理仕訳

まずは決算整理仕訳を行いましょう。
決算整理仕訳とは、決算時にのみ入力する仕訳のことです。
具体的には減価償却や貸倒引当金、税金などの仕訳作業が該当します。

総勘定元帳への転記

決算整理仕訳が終わったら、その結果を総勘定元帳に転記してください。
転記時に入力ミスなどが起こりやすいので、慎重に作業を進めるようにしましょう。
入力が完了したら、もう一度見直す、ダブルチェックするなど入念に確認してください。

また、総勘定元帳は最低7年間保存しなければならない決まりになっています。
破棄や紛失しないように慎重に取り扱いましょう。

試算表の作成

続いて損益計算書にいきなり取りかかる法人もありますが、正確性を担保するためにも先に試算表を作成するのがおすすめです。

試算表とは、勘定科目ごとに借方、貸方の集計結果を表した一覧表を指します。
借方、貸方の合計は一致していなければいけませんので、差異があれば記入漏れや誤記が考えられます。

試算表を作成して負債と資産が一目でわかるようにしておけば、ミスの防止につながります。

損益計算書の作成

試算表が作成できたところで、損益計算書をここで作成しましょう。

試算表があればミスするリスクは低減しますが、ゼロにはできません。
特に転記ミスや勘定科目の分類ミスなどには注意が必要です。

手入力すると、どうしてもミスが発生しがち。
会計ソフトを活用すれば、仕訳入力から損益計算書の作成まで一括で任せられるのでおすすめです。
作業効率も大幅に向上するでしょう。

まとめ

損益計算書を作成してそのままにしているのであれば、もったいないです。損益計算書に記載されている情報は、法人の現状を示しているからです。

今回紹介した5つの見方をマスターすれば、より正確に法人の経営状況を認識できます。定期的に数字をチェックして、改善の必要性はないか、経営戦略が現状に見合ったものとなっているか確認しましょう。損益計算書には、企業の業績アップのヒントが数多く隠れています。

監修者情報

アカウントエージェント株式会社 代表 藤沼 寛夫(公認会計士・税理士)
2014年(現)EY新日本有限責任監査法人入社。主に上場不動産業・アパレル業・飲食業・小売業・百貨店業・メーカーの会計監査及び内部統制監査に従事。2019年に藤沼会計事務所を開業、2020年にアカウントエージェント株式会社を設立。
会計・税務に関する全般的なコンサルティングサービスを提供中。
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