貸借対照表(バランスシート)とは?見方や分析のポイントなどをわかりやすく解説!

最終更新日:2024年09月10日

貸借対照表(バランスシート)とは?見方や分析のポイントなどをわかりやすく解説!
企業の財務状況を知るうえで重要な貸借対照表(Balance Sheet/バランスシート)。バランスシートは、財務三表の1つであり、その作成は経理業務の中でも重要です。

本記事ではバランスシート=貸借対照表の作成の手順やポイント、さらにそこから見える分析ポイントなどを詳しく解説します。
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貸借対照表(B/S)とは?どんな役割?

貸借対照表は「バランスシート」とも呼ばれ、「B/S」と表記されることもある経理書類です。

経理書類にはさまざまな種類があり、決算のタイミングで利害関係者に公開する「決算書類」と呼ばれるものも含まれます。決算書類において重要なのが貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書の3つです。この3つの書類を合わせて、「財務三表」と呼びます。
財務三表の1つである貸借対照表は、ある時点での企業の資産や負債、純資産を明確にするための書類であり、企業の財務状況を分析するために必要不可欠です。

貸借対照表(B/S)の基本的な構成

貸借対照表は「バランスシート」とも呼ばれ、「B/S」と表記されることもある経理書類です。
表の左側に「資産」、右側に「負債」と「純資産」を記載すると、左右の金額がきっちり合うため、企業の財務バランスを確認するための書類という意味でバランスシートと呼ばれます。

ちなみに、バランスシートの左右の関係は以下の計算式が成り立つ形となります。

資産=負債+純資産

以下では、貸借対照表に記載される3つの項目に関して解説します。

貸借対照表(B/S)構成

1:資産の部

資産の部には、その企業が持つ以下3つの資産を記載します。

  • 流動資産
  • 固定資産
  • 繰越資産

流動資産とは、その企業が営業することで得られる資産や、1年以内に現金化可能な資産です。主な流動資産には以下のようなものが含まれます。

  • 現金
  • 預金
  • 売掛金
  • 受取手形
  • 有価証券
  • 商品
  • 仮払金

固定資産には、長期にわたって企業が保有する資産や、現金化に1年以上かかる資産が含まれます。主な固定資産は以下のようなものです。

  • 不動産
  • 設備機器
  • ソフトウェア
  • 営業権
  • 商標権

固定資産には企業が持つ土地や建物といった不動産や、営業のために必要な設備機器、ソフトウェア、自動車などの移動手段なども含まれます。また、商標権や営業権などといった権利関係も固定資産に含んで記載するのが特徴です。

繰越資産は資産の中ではやや特殊なもので、支出による効果が1年以上におよぶ資産を指します。具体的には商品開発費や開業費などです。資産という名目で仕訳しますが、現実的に現金化できない資産が繰越資産となります。

2:負債の部

負債とはその企業の借金など、返済の必要がある資産です。負債に関しては以下の2つが挙げられます。

  • 流動負債
  • 固定負債

流動負債とは、1年以内に返済する必要がある負債です。実例を挙げると以下のようなものが含まれます。

  • 買掛金
  • 支払手形
  • 未払金
  • 短期借入金
  • 預り金

企業の営業上発生する買掛金や、手形による支払い、さらに1年以内に返済する短期借入金も流動負債に含まれます。

固定負債とは、返済が長期間にわたる負債をまとめた言葉です。主な固定負債には、金融機関からの長期借入金、リース債務などが挙げられます。
一般的に固定負債の部分は「他人資本」と呼ばれます。

3:純資産の部

純資産とは、返済の必要がない資金の総称であり、いわゆる「自己資本」と呼ばれる項目です。主な純資産項目には、以下のようなものが挙げられます。

  • 資本金
  • 資本準備金
  • 自己株式
  • 繰越利益剰余金

純資産には株主から受け取った資本金や、これまでの経営で得た利益などが含まれます。

つまり、貸借対照表とは、企業が持つ総資産から、他人資本である返済の必要がある負債を差し引いた純資産がどの程度あるかを明確にする書類です。また、その内訳がどうなっているのかを記載する経理書類でもあります。

貸借対照表(B/S)の見方・分析のポイント

貸借対照表を見て企業の分析をする際、注目すべきポイントが6つほどあります。このポイントはそれぞれ比率で表される数字です。以下では、それぞれの注目ポイントについて解説します。

自己資本比率

自己資本比率とは、企業の総資産(純資産+負債)のうち、純資産の割合がどの程度になるかを%で表した数字です。
自己資本比率の計算式を紹介します。

自己資本比率=純資産÷総資産×100

自己資本比率が100%となるのは、負債が0である状況です。つまり自己資本比率が高いほど、その企業は安定した経営ができていると分析できます。

自己資本利益率

自己資本利益率は、貸借対照表における純資産の部の中で、その期に企業が挙げた純利益が、どの程度の割合になるかを示す数字です。
自己資本利益率の計算式を確認しましょう。

自己資本利益率=当期純利益÷自己資×100

自己資本利益率が高い企業は、その期において大きな利益を出したことになるので、好調で成長が見込まれる企業であると分析されます。

流動比率

流動比率は、流動資産(1年以内に現金化できる資産)に関するチェックポイントで、以下の計算式で算出できます。

流動比率=流動資産÷流動負債×100

流動比率とは、1年以内に現金化できる資産を、1年以内に支払う必要がある負債で割った比率を指します。基準は100%であり、100%を上回ると流動資産のほうが大きいため、財務状況としては短期期には安心できる状況と言えます。反対に100%を下回った場合、負債のほうが大きいことになるため、不安材料があると分析されるでしょう。

当座比率

当座比率も流動資産に関するチェックポイントです。計算式は、以下のとおりです。

当座比率=当座資産÷流動負債×100

当座資産とは、流動資産から営業に必要な在庫分である棚卸資産等を差し引いた資産を指します。当座比率が高いということは、流動資産の中で在庫等が占める割合が低いということになり、特に短期間で返済する必要がある債務の返済能力が高いと分析されます。

固定比率

不動産や設備機器のような、1年以内に現金化できない固定資産を、自己資本で割った数値が固定比率です。
固定比率の計算式を確認しておきましょう。

固定比率=固定資産÷純資産×100

固定資産は、自己資本(返済義務のない資産)で購入することが理想なので、固定比率が低い企業は、長期的な安定性の高い企業であるという分析が受けられるでしょう。

負債比率

最後に負債比率に関して説明します。まずは計算式を確認しましょう。

負債比率=負債÷純資産×100

負債比率は、貸借対照表の右側の項目から算出します。負債と純資産のバランスを算出するのが負債比率であり、負債比率が高い企業は、借入金など他人資本に頼って経営している状況と分析されます。当然数値が低い企業ほど、財務状況が良い企業であるといえるでしょう。

貸借対照表(B/S)の作成方法

貸借対照表の作成手順は、大きく分けて3ステップ、細かく分けると5ステップです。まずは大きく分けた場合の以下3ステップを紹介します。

  • 日常業務
  • 月次業務
  • 年次業務

文字通り、毎日行う日常業務と、毎月まとめて行う月次業務、そして決算に向けて年に一度作業を行う年次業務に分けることができます。

次に、さらに細かく分けた5つのステップを上の業務に当てはめて紹介します。

  • 仕訳帳への記入(日常業務)
  • 総勘定元帳への転記(日常業務)
  • 試算表の作成(月次業務)
  • 決算整理仕訳の処理(年次業務)
  • 貸借対照表の作成(年次業務)

貸借対照表は決算期に作成するので、年次業務にあたります。

その貸借対照表の作成のために必要な準備が、それ以前の4つの業務です。以下では、それぞれの業務に関して簡単に解説します。

仕訳帳への記入

日常の営業の中で発生する金銭の動きを、仕訳帳に記載するのが最初の業務です。仕訳帳では、左側に「借方」、右側に「貸方」と分けて記載し、借方と貸方の合計金額がそれぞれ同じ金額である必要があります。

仕訳する勘定科目は、企業ごとのルール、経理処理上のルールがあるので、ルールをしっかりと理解して仕訳していくのが重要です。

仕訳帳のテンプレート紹介
仕訳帳

仕訳帳

会計帳簿のひとつ、仕訳帳テンプレートです。
取引を時系列で記録していく帳簿で、借方、貸方それぞれの勘定科目と金額を記入します。31行分入力でき、A4サイズの用紙に印刷できます。
Excel(エクセル)でご利用ください。

※フォーマットの編集を行う場合は、「校閲」タブ>「シート保護の解除」で保護解除をおこなった後編集してください。

総勘定元帳への転記

仕訳帳で仕訳した内容を、そのまま総勘定元帳に転記します。

総勘定元帳は、勘定科目別にお金の動きをまとめておく帳簿で、発生日や金額をまとめて管理します。

試算表の作成

総勘定元帳に転記した内容は、毎月試算表で確認することになります。

総勘定元帳の勘定科目ごとに試算を行い、1ヶ月のお金の流れに間違いがないかを確認するのがポイントです。
試算表は主に以下の3種類を作成し、企業の財務状況が間違っていないかどうかをチェックします。

  • 合計試算表
  • 残高試算表
  • 合計残高試算表

試算表においても、借方と貸方の金額が一致している必要があり、一致しないようであれば、どこかに転記のミスや計算ミスがあることになります。

試算表の作成を年に1度としてもいいのですが、12ヶ月分をまとめて処理するとミスが発生する原因となりかねません。また、ミスが発覚した場合のチェックにも膨大な時間がかかります。そのため、毎月定期的に試算表を作成するのが一般的です。

決算整理仕訳の処理

最終的に貸借対照表を作成するためには、資産・負債・純資産がそれぞれ確定できていなければいけません。
その確定のための作業が、決算整理仕訳です。決算の時点で、帳簿上で未処理となっている取引を特定して仕訳を行うことで、最終的に貸借対照表に記載する資産・負債・純資産を確定します。

貸借対照表の作成

日常業務と月次業務、そして決算整理仕訳の処理が完了したら、貸借対照表を作成します。ここまで集められたデータのとおりに記載すれば、原則として数字がズレることはないはずです。
貸借対照表を作成した時点で、「資産=負債+純資産」の計算式が成り立たない場合は、ここで紹介した手順を1つずつ遡り、ミスがないかを確認する必要があります。

まとめ

貸借対照表とは、その時点での企業の財務状況を明らかにする書類です。

経理に関する書類の中でも非常に重要であり、金融機関や投資家などの利害関係者が、その企業の財務状況をチェックする場合に参照する書類でもあります。

貸借対照表からは、さまざまな情報を入手でき、その企業の経営状況や財務状況を推し量るうえで非常に重要です。貸借対照表を作成するためには、毎日の経理処理が重要になるので、1つずつ確実に処理しましょう。

監修者情報

アカウントエージェント株式会社 代表 藤沼 寛夫(公認会計士・税理士)
2014年(現)EY新日本有限責任監査法人入社。主に上場不動産業・アパレル業・飲食業・小売業・百貨店業・メーカーの会計監査及び内部統制監査に従事。2019年に藤沼会計事務所を開業、2020年にアカウントエージェント株式会社を設立。
会計・税務に関する全般的なコンサルティングサービスを提供中。
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