雇用契約書とは?必要性や記載事項、テンプレートを紹介

最終更新日:2024年08月28日

雇用契約書とは?必要性や記載事項、テンプレートを紹介
雇用契約書は、企業と労働者との雇用契約の締結を証明する重要な書類です。
雇用契約は口頭でも成立しますが、後々「言った、言わない」のトラブルになる可能性があるため、労働条件の合意を示す書類として作成されます。

労働者を雇用する際に雇用契約書で労働条件をお互いに確認することは、労使間のトラブル防止につながります。
本記事では、雇用契約書の基本的なルールや作成の際の注意点を解説します。
【目次】
  • 雇用契約書とは?
    • 雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?
  • 雇用契約書は作成するべき?
    • 雇用契約書を提示する方法
  • 雇用契約書に記載すべき項目は?
    • 必ず記載するべき項目
    • 記載しなければならない場合のある項目
  • 雇用契約書の作成方法
    • 雇用契約書を作成する際のポイント
    • 雇用契約書を作成する際の注意点
  • 雇用契約書(労働契約書)のテンプレート
  • まとめ
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雇用契約書とは?

雇用契約書とは、企業と労働者の間で雇用契約が締結されたことを証明する書類です。

雇用契約の締結により、労働者は労働に従事する義務が発生し、企業にはその労働に対して賃金を支払う義務が発生します。

なお、⺠法第623条では以下のように定められており、雇用契約の締結時に書類の作成までは求めていません。

⺠法第623条
「雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる」

しかし、口頭での約束は後々トラブルを招く恐れがあるため、労働者の雇入れの際は雇用契約書を作成するのが一般的です。

雇用契約書と労働条件通知書の違いとは?

労働条件通知書とは、企業側が労働者の労働条件を記載し、雇用契約締結時に交付する書類のことです。

労働基準法第15条第1項では「労働条件の明示」が義務付けられており、企業側はこれに従って労働者の雇入れ時に労働条件通知書を交付しなければなりません。

また、労働条件通知書は法律で記載事項が定められており、必要な項目の記載がない場合は労働基準法違反となります。

一方、雇用契約書は法律で作成が義務付けられておらず、記載事項も定められていません。ただし契約書であるため、企業と労働者双方の署名または記名押印が必要になります。

なお、雇用契約書に労働条件通知書に必要な記載事項を明記し、双方の署名または記名押印がある場合は、雇用契約書と労働条件通知書を兼ねることができます。

雇用契約書と労働条件通知書の違いは以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:雇用契約書・労働条件通知書の書き方は?注意点・正しく作るコツ

雇用契約書は作成するべき?

雇用契約自体は、書面の取り交わしがなくても成立します。

しかし、書面で残していなければ両者が契約に合意したことが証明されず、「言った、言わない」のトラブルに発展する可能性があります。そのため、雇用契約書は可能な限り作成した方が良いでしょう。

雇用契約書を提示する方法

雇用契約書は主に内定時や入社日、契約の更新時に書面で提示をします。ただし、電子署名やタイムスタンプなどを用いて適切な方法で契約を交わす場合は、電子契約も可能です。

なお、労働条件通知書は雇用契約締結時に書面での交付するのが原則ですが、労働者が希望した場合に限り、FAXや電子メール、SMS(ショート・メール・サービス)、SNS(LINEなど)でも明示できます。

ただし、SMSは文字数制限があるため、望ましくありません。また、メール・SNSで明示する場合には、印刷や保存がしやすいようPDFファイルを添付して送るようにしましょう。

出典:
電子契約の有効性について|デジタル庁
労働契約締結時の労働条件の明示 ~労働基準法施行規則が改正されました~|厚生労働省

雇用契約書に記載すべき項目は?

雇用契約書に記載すべき項目は、法律で定められていません。

しかし、雇用契約書は企業と労働者の双方で合意を得る書類であるため、労働条件を記載しておくことでトラブルに防止に繋がります。

なお、雇用契約書が労働条件通知書を兼ねている場合は、法律で定められた条件を記載しなければなりません。

ここでは、「雇用契約書 兼 労働条件通知書」を作成する際の「必ず記載するべき項目」と「記載しなければならない場合のある項目」を解説します。

必ず記載するべき項目

雇用契約書が労働条件通知書を兼ねる場合、必ず記載すべき項目は以下のとおりです。

  • 雇用契約期間
  • 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準
  • 就業の場所
  • 業務内容
  • 始業・終業の時刻
  • 所定労働時間を超える労働
  • 休憩・休日・休暇
  • 交代制に関する事項(労働者を2組以上に分けて就業させる場合)
  • 賃金に関する事項
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  • 昇給に関する事項

「昇給に関する事項」を除き、原則として書面の交付により明示しなければなりません。

なお、労働条件通知書を兼ねていない雇用契約書でも、雇用期間や就業場所、業務内容、勤務時間、休日、賃金などの項目を記載するのが一般的です。

記載しなければならない場合のある項目

労働条件通知書には、定めがある場合には明示しなければならない事項があります。法律上、書面の記載まで求められていませんが、できる限り記載した方が望ましいでしょう。

定めがある場合に明示しなければならない事項は以下のとおりです。

  • 退職手当
  • 賞与
  • 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  • 安全及び衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰及び制裁に関する事項
  • 休職に関する事項
出典: 労働条件の明示|大阪府

雇用契約書の作成方法

ここからは、雇用契約書を作成する際のポイントと注意点を解説します。

雇用契約書を作成する際のポイント

雇用契約書を作成する際は、以下の4点に注意しましょう。

  • 労働条件通知書を兼ねている場合は必要事項を網羅する
  • 転勤の範囲を明記する
  • 試用期間を明記する
  • 退職から最低5年保存する

労働条件通知書を兼ねている場合は必要事項を網羅する

雇用契約書が労働条件通知書を兼ねている場合は、法律で定められている記載事項は必ず記載しなければなりません。

労働条件通知書で必要とされる「絶対的記載事項」と「相対的記載事項」を記載し、漏れがないか確認したうえで労働者と雇用契約を締結しましょう。

転勤の範囲を明記する

転勤は労働条件の中でもトラブルが多くなる事項です。雇入れ時の就業場所だけではなく、転勤の有無や想定される転勤先などを明記することで、労働者本人が「知らなかった」「見ていない」などの周知トラブルが回避できます。

また、海外転勤や出向の可能性もある場合は、できるだけ明記しておいた方がよいでしょう。

試用期間を明記する

試用期間を導入している場合は、試用期間について明記しておくと後々トラブルに発展しにくくなります。

雇用契約は試用期間が開始した時点で成立しており、本採用後に雇用契約を締結することは認められません。試用期間と本採用後の労働条件が異なる場合は、雇用契約締結時にその旨を明記しておきましょう。

なお、試用期間は就業規則で定めている期間を上回る期間を設定することはできません。

退職から最低5年保存する

2020年労働基準法が改正され、雇用契約書を含む雇入れに関する書類の保存期間は3年から5年に延長されました(経過措置として当分の間3年)。

雇用契約書は従業員の退職日または死亡日から5年間保存しなければならないため、廃棄せず保存しておきましょう。

出典:労働条件の明示|厚生労働省

雇用契約書を作成する際の注意点

雇用契約書を作成する際は、法令違反をしないようにしましょう。労働基準法や労働協約、就業規則で定めている内容と相反する契約内容を記載してしまうと契約として無効になる可能性があります。

また、求人票や説明会、面接の内容と矛盾しないことも大切です。最終的には作成された契約内容に基づいて労働契約は成立しますが、当初提示していた内容や説明していた内容と矛盾がある場合は、労働者から不信感が生まれてしまいます。

なお、雇用契約書の使い回しはできるだけ避けた方がよいでしょう。労働関連の法律はたびたび法改正が行われるため、数年間同じ雇用契約書を使いまわしていると改正に対応できていない場合があります。労働者によって労働条件が異なる場合もあるので、十分確認してから雇用契約書を作成しましょう。

雇用契約書(労働契約書)のテンプレート

テンプレートBANKでは、雇用形態別の労働契約書テンプレートを提供しています。

まとめ

雇用契約書は、企業・労働者双方の雇用契約の締結を証明する書類です。雇用契約書の作成は法律上義務付けられていませんが、企業と労働者間で起こる労働条件に関するトラブルを防止するためにも作成したほうがよいでしょう。

また、雇用契約書は労働基準法第15条による労働条件を記載することで、労働条件通知書を兼ねることができます。

「雇用契約書 兼 労働条件通知書」は、雇用契約の成立だけではなく、労働条件の合意を双方の署名・記名押印で証明できるため、必要な労働条件を記載した雇用契約書を作成することをおすすめします。

執筆者情報

きた社労士事務所 代表 北 光太郎(社会保険労務士)
中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事し、計10年の労務経験を経て独立。独立後は企業の労務支援のほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。Webメディアの専門性と信頼性の向上を支援するとともに、読者にわかりやすく正しい情報を伝える社労士として活動をしている。
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