2024年より医師にも働き方改革が求められる!取り組むべきことやポイントを解説

最終更新日:2024年04月18日

2024年より医師にも働き方改革が求められる!取り組むべきことやポイントを解説
労働環境の改善を目的とした「働き方改革」は日本中で進められており、これまで猶予期間が設けられていた医師についても、2024年4月、いよいよスタートしました。
現状、時間外労働が多くなりがちな職業ですが、働き方改革によって大きく改善される見込みです。今回は医師の働き方改革が必要となった背景から、病院が対応に向けて取り組むべきことやポイントを解説します。
【目次】
  • 2024年4月より医師にも働き方改革が適用
    • 勤務医の時間外労働の年間上限は原則960時間へ
    • 働き方改革が求められる背景
    • 働き方改革で重要な3つの区分
  • 医師の働き方改革に向けて取り組むべき5つのこと
    • 労働時間の適切な把握
    • 根本的な労働時間の見直し
    • 36協定などの自己点検
    • タスク・シフティングの検討
    • 実働と自己研鑽の区分
  • 医師の働き方改革に向けて意識したいポイント
    • 適切な勤怠管理ツール・テンプレートの利用
    • 業務のIT化
    • 医師や関係者への周知徹底
    • 新たな人材の確保
  • 医師の働き方改革へ対応する際の課題
    • 改革によって収入が減少する可能性がある
    • 医師によって働き方への感覚が異なる
    • 人材が不足して業務に影響が出かねない
  • まとめ
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2024年4月より医師にも働き方改革が適用

2024年4月より、ついに医師にも働き方改革が求められるようになりました。これにより医師の働き方が大きく変化すると考えられるため、法律の改正について理解を深めておきましょう。

勤務医の時間外労働の年間上限は原則960時間へ

2024年4月から開始された「医師の働き方改革」では、勤務医の時間外労働の上限が原則として年間960時間に制限されます。
一般の業種においては、時間外労働の上限規制は2019年4月から適用されましたが、医師の場合、その業務の性質から、これまで免除されてきました。制限がないことで、医師の長時間労働が常態化してきましたが、今後は働き方にも見直しが求められます。

働き方改革が求められる背景

問題視される医師の長時間労働を解決するため、働き方改革が求められています。
医師は業務量が多く、なおかつ勤務体系が特殊であるため、どうしても労働時間が長くなってしまう状況です。ただ、これでは医師の負担が大きくなりすぎるため、働き方の改善が検討されました。
また、医師の負担が増加すると、医療ミスの発生など第三者へ影響を及ぼす問題を引き起こす可能性が高まります。このようなリスクを軽減する意味でも、働き方改革の詳細が議論され、ついに医師にも適用されるに至りました。

働き方改革で重要な3つの区分

とはいえ、働き方改革の結果、地域医療が維持できなくなったり、技能習得のための時間が取れない、ということになれば大きな問題です。そこで、都道府県等が妥当であると評価し、指定した医療機関には特例が設けられました。下記のとおり3つの区分が設定されています。
なお、時間外労働の上限が引き上げられる場合には、健康に関する面談指導の実施や勤務間インターバルの確保など、医師の健康管理を適切におこなうこととされています。

水準対象者時間外労働時間上限
A水準原則としてすべての医師年間960時間以下
月100時間未満(休日労働を含む・例外あり)
B水準地域医療確保暫定特例水準年1,860時間以下
月100時間未満(休日労働を含む・例外あり)
※2035年度末を目標に終了
C水準集中的技能向上水準年1,860時間以下
月100時間未満(休日労働を含む・例外あり)

医師の働き方改革に向けて取り組むべき5つのこと

医師の働き方改革に向けて取り組むべきことは、大きく分けて5つあります。

労働時間の適切な把握

法改正に伴い、改めて労働時間の適切な把握をおこないましょう。
労働者を雇用する以上は、常に労働時間を把握する必要がありますが、現状として適切に把握できていないケースが見受けられます。この状態では、法律を遵守できているか判断できないため、改めなければなりません。
労働時間の把握方法に定めはなく、労働の開始時間と終了時間、休憩時間などが客観的に確認できればこと足ります。具体的な方法は以下で紹介するため、そちらを参考にしてください。

根本的な労働時間の見直し

根本的に、労働時間の短縮を目指すことが重要です。現在のように長時間労働が当たり前になっている状態で労働時間だけを短縮しても、業務に支障が出かねません。
労働時間を短縮させる方法については、たとえば効率化や役割分担など、いくつも考えられます。それぞれの職場環境によって適切な方法は異なるため、まずは現状を把握することから始めましょう。
誰がどのような業務を担当し、どのような方法で、どのくらいの時間をかけているのかを把握し、無駄がないか、より効率的な方法がないか、役割分担の見直しで改善できる点はないか、など検討します。

36協定などの自己点検

働き方改革の実現に向けて、36協定などルールの自己点検を実施しましょう。もし、自己点検の内容に問題があるならば、早急に改善しなければなりません。
例として、医師を含めた労働者の時間外労働の上限値について確認し、2024年以降の法律に適合しているかを評価します。また、医師と医療従事者など、ポジションごとに数値が定められているかの評価も必要です。

タスク・シフティングの検討

業務の分担を変更する「タスク・シフティング」を実施してみましょう。医師が担当する業務を最小限に抑えることで、労働時間の短縮が期待できます。
たとえば、医師が自分自身でこなしている事務作業を庶務など別の担当者へシフトさせます。そうすることで、医師は自分しかできない業務に注力できるようになります。特定の業務に集中できることで生産性が上がり、素早く業務が完了させられるようにもなることで、結果的に労働時間の短縮が可能です。

実働と自己研鑽の区分

医師の労働時間で課題になりやすいことは、実働と自己研鑽の区分です。労働時間は適切に管理しなければならない反面、自己研鑽は管理の対象とはなりません。現在はこれらの区別が難しくなっているため、それが労働時間の管理を難しくする要因となっています。
時間外労働の上限が定められる以上は、実働であるかどうかを明確に区別しなければなりません。内部で自己研鑽のルールを定めるなどして、客観的に実働であったかどうか判断できる仕組み作りが必要です。

医師の働き方改革に向けて意識したいポイント

医師の働き方改革を実現するために、以下のポイントを意識してみてください。

適切な勤怠管理ツール・テンプレートの利用

労働時間を把握するためには勤怠管理が必須であるため、適切なツールやテンプレートを導入しましょう。多くの選択肢が存在するため、機能や費用など勘案し、導入しやすいものを選択しましょう。
勤怠管理といえば大規模なシステムがイメージされがちですが、取り急ぎ、またはコストをかけずに導入したい場合は、勤怠管理テンプレートを活用するのもひとつの方法です。

業務のIT化

業務をIT化して、生産性を高めることも重要です。近年は、多くの業界でシステム化を中心としたDXが推進されています。医療に関わる部分も、アナログからデジタルに切り替えることで業務効率が大きく高まるはずです。
たとえば、カルテを紙から電子に切り替えると、素早く情報を閲覧できるようになります。検索機能などが使えるため、業務効率は大きく改善されるでしょう。これは一例ですが、費用対効果や予算をふまえて、できる部分からIT化することが働き方改革に繋がります。

医師や関係者への周知徹底

これからの働き方改革は、法律を遵守できる環境づくりが目的です。単なる経費の削減や時間外労働を短縮する活動ではないため、その点を周知徹底しなければなりません。医師や関係者がこの点を理解していないと、これから実施する取り組みに大きく反対されてしまう可能性があります。
特に、新しいツールの導入という業務が変化する部分は、反対意見が出るかもしれません。導入の必要性を丁寧に説明し、十分な理解を得ておくことが重要です。

新たな人材の確保

働き方改革の結果、医師を中心とした人材不足に陥るかもしれません。もし、このような懸念があるならば、新しい人材の確保に努めましょう。採用にはまとまった時間が必要となるため、計画的に進めることが重要です。

医師の働き方改革へ対応する際の課題

医師の働き方改革は進めなければなりませんが、同時に課題も抱えています。

改革によって収入が減少する可能性がある

勤務時間が短くなることで、医師の収入が減少するかもしれません。収入の変動は生活に直結する部分であり、医師の確保に影響する可能性があります。大きく収入が減少するならば、より良い収入を得られる環境に転職してしまうかもしれません。
基本的には、労働時間が短くなると収入は減少します。一方でメリットがなければ、モチベーションの低下を招いてしまうでしょう。

医師によって働き方への感覚が異なる

働き方改革は労働者全員で実現するものですが、人によって取り組み方や考え方の感覚が異なります。これが悪影響を及ぼし、働き方改革が進まないことがあるため注意が必要です。
たとえば、年を重ねた医師は若い頃を引き合いに出し「働かないことは甘えだ」と主張するかもしれません。法律に関する理解が乏しいと、個人の感覚が優先される可能性があります。これは大きな問題となりかねないため、労働者全員への丁寧な説明と、意識改革が必要です。

人材が不足して業務に影響が出かねない

医師の労働時間が制限されると、人材不足に陥ってしまう可能性があります。場合によっては、業務に大きな影響が出ると考えられます。
労働時間の都合で医師を確保できなくなると、今までと同じサービスを提供できないかもしれません。それぞれが担当している患者へと手が回らなくなった場合、大きな問題が発生するでしょう。これを解決するには新しく医師を雇う必要がありますが、簡単に見つかるものではありませんし、仮に採用できたとしても、人件費は増加します。
これは、今後顕在化してくるかもしれない問題です。

まとめ

2024年4月より医師にも働き方改革が適用され、時間外労働時間が制限されることになりました。今までと同じように働くことは原則として不可能であるため、働き方の見直しが必要です。合わせて、業務の進め方や役割分担の見直しなども同時におこなっていかなければなりません。

いずれにしても、まずは医師の勤怠管理をしっかりおこなうことがスタートです。
現時点で対応できていない場合は、勤怠管理ツールやテンプレートを活用しましょう。利用者数やコストなどをふまえて適切なものを選択してください。

監修者情報

みのだ社会保険労務士事務所 代表 蓑田真吾(社会保険労務士)
大学卒業後、鉄鋼関連の企業に総合職として就職し、その後医療機関人事労務部門に転職。約13年間人事労務部門で従業員約800名、新規採用者1,000名、退職者600名の労務、社会保険の相談対応にあたる。社労士資格取得後にみのだ社会保険労務士事務所を開設し、独立。東京都社会保険労務士会所属(登録番号 第13190545号)。
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