支払調書とは?税務署への提出義務・書き方のポイントを解説

最終更新日:2024年06月11日

支払調書とは?税務署への提出義務・書き方のポイントを解説
支払調書は、毎年法人や個人事業主が支払った報酬や料金の年間合計を税務署に報告する重要な書類です。本記事では、そもそも支払調書とは何かということや、どのような支払について支払調書の作成が必要なのか、また記載すべき内容、そして提出方法について詳しく解説していきます。この記事を参考にして、支払調書への理解を深めましょう。
【目次】
  • 支払調書とは
  • 支払調書の代表的な4種類【テンプレート付き】
    • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
    • 不動産の使用料等の支払調書
    • 不動産等の譲受けの対価の支払調書
    • 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
  • 支払調書の提出期限はいつ?
  • 支払調書の記入方法
    • 支払調書の記入項目:支払いを受ける者
    • 支払調書の記入項目:区分
    • 支払調書の記入項目:細目
    • 支払調書の記入項目:支払金額
    • 支払調書の記入項目:源泉徴収税額
    • 支払調書の記入項目:摘要
    • 支払調書の記入項目:支払者
  • 支払調書作成時の注意点
    • 支払先が個人の場合マイナンバーの記載が必要
    • 支払調書の提出が必要な場合にはどんな場合がある?
  • まとめ
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支払調書とは

支払調書とは、法人や個人事業主が経費などで支払うもののうち、法律によって定められたジャンルの支払いについて、支払った相手先の住所や氏名(または法人名)、支払った金額や源泉徴収した金額などを記載して税務署に提出するための書類です。

事業者が税務署に提出を義務付けられている書類を「法定調書」といいます。そして法定調書は主に源泉徴収票と支払調書から成り立っており、源泉徴収票や支払調書に記載された金額を項目ごとに合計して「法定調書合計表」や「支払調書合計表」という書類にまとめます。この法定調書合計表の添付書類として作成するのが支払調書です。

支払調書は支払った相手先ごとに作成します。支払調書を作成すべき支払いは種類が決められていますが、その中でも支払いの種類ごとに一定の金額を超えた相手先の分のみを提出します。支払調書は税務署が調査のためなどに活用する書類なので、少額なものまでは提出が求められていないということです。

支払調書の代表的な4種類【テンプレート付き】

法定調書には63種類あり、「支払調書」と名の付く書類だけでも30種類以上あります。そのうち、多くの事業者にとって関係のある支払調書を紹介します。

報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書

支払調書のテンプレート紹介
支払調書(報酬、料金、契約金及び賞金)

支払調書(報酬、料金、契約金及び賞金)

「報酬、料金、契約金及び賞金」についての支払調書テンプレートです。
弁護士、税理士などへの報酬や、原稿料、デザイン料、講演料、そして外交員、プロボクサー、バー・キャバレー等のホステス等の報酬、馬主に支払う競馬の賞金、広告宣伝のための賞金などが対象です。
※提出範囲は報酬の内容により異なります。

Excelで入力できます。フォーマットだけ印刷して手書きしてもOKです。
A4サイズの用紙に4枚分作成できます。

最も作成する枚数が多いのが「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」で、支払調書の代表例です。弁護士や税理士、社会保険労務士などへの専門家報酬のほかに、デザイナーへのデザイン料、作家やライターに対する原稿料、セミナー講師料、保険外交員など様々な報酬等について作成が必要です。
このうち、支払金額が一定額を超えたものについて税務署への提出が必要になりますが、金額は支払の種類によって異なります。
参考:「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

注意しなければならないのは、この支払調書は支払った内容の種類に応じて作成するということです。

支払先の個人事業主から、支払調書を自分にも渡すようにリクエストされることがあると思います。このため、支払調書は個人事業主への支払い、つまり所得税の源泉徴収が発生した場合のみ作成が必要と勘違いしてしまうケースがあります。

支払調書は個人事業主への支払いだけでなく、法人に対して対象となる報酬等を支払った場合も作成が必要であるということを理解しておきましょう。

不動産の使用料等の支払調書

支払調書のテンプレート紹介
支払調書(不動産使用料等)

支払調書(不動産使用料等)

「不動産使用料等」についての支払調書テンプレートです。
オフィスや店舗などの賃借料(家賃)、礼金や権利金、更新料のほか、総トン数20トン以上の船舶、航空機の借受けの対価を支払う法人、不動産業を営む個人が提出する支払調書です。
※同一人に対するその年中の支払金額の合計が15万円を超えるもの
※法人に対し、家賃や賃借料のみを支払っている場合は提出不要

Excelで入力できます。フォーマットだけ印刷して手書きしてもOKです。
A4サイズの用紙に4枚分作成できます。

不動産の使用料等の対象となる支払いは不動産、つまりオフィスや店舗などの家賃がメインですが、他にも総トン数20トン以上の船舶、航空機の借り受けの対価も含まれます。ほとんどは不動産家賃が対象になりますが、毎月の家賃のほかにも礼金や権利金、償却される敷金、更新料などの一時的な支払いも対象になります。

ただし、毎月支払う共益費や管理費については不動産の使用料そのものとはいえないため、支払額に含める必要はありません。また、敷金や保証金など、解約時まで貸主(大家)に預けている性質の金額については支払調書には含めません。あくまで貸主にとって収入となるべき分だけを作成するということです。

この支払調書の提出が義務付けられているのは、法人および不動産業者である個人です。つまり、不動産業を営んでいない個人事業主についてはこの支払調書は作成不要です。

なお、税務署に提出が必要になる範囲は
「同一人に対するその年中の支払金額の合計が15万円を超えるもの」
※ただし支払先が法人の場合は、賃借料を除く権利金、更新料等が対象(家賃や賃借料のみの支払いの場合、支払調書の提出は不要)
となります。

不動産等の譲受けの対価の支払調書

支払調書のテンプレート紹介
支払調書(不動産等の譲受けの対価)

支払調書(不動産等の譲受けの対価)

「不動産等の譲受けの対価」についての支払調書テンプレートです。
不動産をはじめ、総トン数20トン以上の船舶、航空機を取得した法人、また不動産業を営む個人が提出する支払調書です。
※提出範囲は、同一人に対するその年中の支払金額の合計が100万円を超えるもの

Excelで入力できます。フォーマットだけ印刷して手書きしてもOKです。
A4サイズの用紙に4枚分作成できます。

不動産等の譲受けとは、不動産を取得した場合がメインですが、そのほかにも総トン数20トン以上の船舶、航空機の対価の支払も含みます。

この支払調書についても、上記の不動産の使用料等の支払調書と同じく法人および不動産業者である個人にのみ作成が義務付けられています。つまり、不動産業を営んでいない個人事業主が不動産を取得した場合には作成は不要です。

不動産の取得方法は主に売買ですが、そのほかにも現物出資や交換、競売、公売、収用などのケースでも作成対象となります。売買以外のケースではお金の代わりに株式など現物が対価となる場合があります。この場合は対価とした現物の時価をもって支払額とします。ただし、贈与や寄付、遺贈などのように、もともと対価の支払いがないケースではこの支払調書の作成は必要ありません。

なお、税務署に提出が必要な範囲は
「同一人に対するその年中の支払金額の合計が100万円を超えるもの」
です。

不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書

支払調書のテンプレート紹介
支払調書(不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料)

支払調書(不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料)

「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料」についての支払調書テンプレートです。
不動産の売買や賃貸借の際の仲介手数料、また、総トン数20トン以上の船舶、航空機の売買や賃貸借の際の仲介手数料が対象で、法人または不動産業を営む個人が提出する支払調書です。
※提出範囲は、同一人に対するその年中の支払金額の合計が15万円を超えるもの

Excelで入力できます。フォーマットだけ印刷して手書きしてもOKです。
A4サイズの用紙に4枚分作成できます。

あっせん手数料とは簡単にいえば仲介手数料のことです。不動産の売買や賃貸借の際に支払う仲介手数料がメインですが、そのほかにも総トン数20トン以上の船舶、航空機の売買や賃貸借の際の仲介手数料も含まれます。

この支払調書についても、上記の不動産の使用料等の支払調書と同じく法人及び不動産業者である個人にのみ作成が義務付けられています。つまり、不動産業を営んでいない個人事業主が不動産を売買したり賃貸借したりした場合に支払う仲介手数料については作成不要になります。

また、上記で説明した不動産の使用料等や不動産等の譲受けの対価の支払調書には、あっせんをした者の記入欄があります。ここに記入した場合は別途あっせん手数料の支払調書を作成する必要はありません。

なお、税務署に提出が必要な範囲は
「同一人に対するその年中の支払金額の合計が15万円を超えるもの」
となります。

支払調書の提出期限はいつ?

支払調書の提出期限は種類によってそれぞれ定められています。中でも多くの法人や個人事業主にとって関係してくるのが法定調書合計表に添付すべき支払調書です。
上記で説明した4種類の支払調書はいずれも法定調書合計表に添付すべき支払調書です。

この支払調書や法定調書合計表の提出期限は、集計した年の翌年1月31日(31日が土日の場合は翌月曜日)です。提出の方法は管轄の税務署への持参や郵送のほか、e-Taxでの提出も認められます。

また、e-Taxで法定調書合計表を送信したあとに、添付する支払調書だけ郵送することも可能です。最も手間のかからない方法で提出するとよいでしょう。

支払調書の記入方法

支払調書の種類は様々であり、それぞれ記入すべき内容も異なります。ここでは、最も多くの事業者にとって関係するであろう「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の記載例を紹介します。

支払調書の記入項目:支払いを受ける者

「支払いを受ける者の欄」には、支払いを受ける者が個人であれば個人名、法人であれば法人名を記入します。また、住所又は所在地については法人であれば本店所在地(本社とは別の住所である場合もあります)を記入します。これは法人番号検索サイトなどで確認できます。

一方、個人事業主の場合は請求書などにも個人の住所が載っていないケースがあり、住所が不明な場合は以下のマイナンバーの確認の際に現住所も確認する必要があります。

また、法人であれば法人番号、個人であればマイナンバーを記入します。法人番号はインターネットで検索できますが、マイナンバーについては本人に提供を依頼する必要があります。

支払調書の記入項目:区分

「区分」欄には支払った報酬の内容を記入します。報酬の内容によって源泉所得税の税率が異なる場合があり、その場合は種類ごとに分けて記入が必要です。種類ごとに分けるための情報が区分です。

区分の例:原稿料、さし絵料、作曲料、翻訳料、通訳料、脚本料、著作権、工業所有権の使用料、放送謝金、講演料、教授料、映画及び演劇の俳優、弁護士、外交員、ホステス等の報酬又は料金、診療報酬、契約金、広告宣伝のための賞金

支払調書の記入項目:細目

細目の欄には、区分で記載した内容についての詳細を記入します。受け取る税務署にとって内容が確認しやすいように記載すれば大丈夫です。
参考までに、記載例として以下のようなものが挙げられます。

印税「書籍名」
原稿料及びさし絵料「支払回数」
放送謝金、映画及び演劇の俳優等の出演料「出演した題名等」
教授料についてはその教授に係る「講座名等」
弁護士等の報酬又は料金については関与した「事件名等」
広告宣伝のための賞金についてはその「賞金の名称等」

支払調書の記入項目:支払金額

支払金額については原則として税込で記入します。ただし、受領した請求書などで消費税が明確に区分されていれば、税抜金額で記入しても問題ありません。ただし、この場合は摘要欄に消費税の金額を記載します。
また、支払金額の欄は支払いが確定したものを記載します。たとえば12月末締めで翌年の1月支払いの分については12月に支払い確定しているため、未払いでも支払金額に含めます。この場合、未払いの金額については支払金額欄の内書き欄に記入します。

支払調書の記入項目:源泉徴収税額

「源泉徴収税額」の欄には源泉徴収した額の合計額を記入します。報酬の区分によって源泉徴収税率が異なることがありますので、支払金額と同様に区分ごとに分けて源泉徴収した所得税額を記入します。

源泉徴収税額についても、支払金額と同様に支払いが確定した分について記入します。そのため、12月末時点で未払いの分にかかる源泉徴収税額についても含めます。この場合、未払の報酬にかかる源泉徴収税額については源泉徴収税額欄の内書き欄に記入します。

支払調書の記入項目:摘要

摘要欄は備考的な内容を記入します。主な摘要欄の記入内容としては、支払金額を税抜金額で記入した場合に消費税の金額を摘要欄に記入することで支払った総額がわかるようにします。

そのほかに支払いが金銭ではなく現物で行われた場合にその現物の詳細を記入したり、所得税法の規定で源泉徴収しない場合にその条文を記入したりします。その他、税務署に対して知らせたいことがあれば摘要欄に記入しておけばよいでしょう。

支払調書の記入項目:支払者

支払者の欄には、支払う者、つまり支払調書の作成者の登記上の本店住所(個人事業主の場合は住所)と法人名(個人事業主の場合は氏名)、電話番号を記入します。また、法人番号またはマイナンバーも記入します。

注意しておきたいのが、マイナンバーです。商慣習上、支払先から確定申告で使用するために支払調書の交付を求められることがあります。
税務署に提出する場合はマイナンバーを記入する必要がありますが、支払先に交付する場合はマイナンバーは空欄にして渡すようにしましょう。

支払調書作成時の注意点

支払調書の書き方についての注意点は上記の通りですが、よくある勘違いの1つが「支払調書は支払った相手にも渡さなければならない」ということです。

支払調書は税務署のために作成する書類であり、本人に交付する必要はありません。ただし商慣習上どうしても支払先が要求していた場合にはマイナンバーを空欄の状態で渡しましょう。

支払先が個人の場合マイナンバーの記載が必要

支払先が個人の場合、税務署に提出する法定調書にはマイナンバーを記載する義務があります。つまり、事業者側には支払先の個人に対してマイナンバーを確認する義務があるということになります。

支払調書の作成対象となる支払いを行った場合は、支払調書の提出期限である毎年1月31日に間に合うように相手に対してマイナンバーを確認しておく必要があります。

確認の方法については、法定調書作成のためという利用目的を明示したうえで、マイナンバーを確認できる書類と身分証明書のコピーを受領する方法で行います。

マイナンバーの提供依頼をしたにもかかわらず、支払先である個人がマイナンバーの提供を拒んだ結果法定調書にマイナンバーを記載できないといった場合には、やむを得ずマイナンバーが空欄の状態で支払調書を提出することになります。
しかし、支払調書のマイナンバーへの記載は法律上の義務であり、相手に対してマイナンバーの提供を求めずに支払調書を作成することは義務違反であることを理解しておきましょう。

支払調書の提出が必要な場合にはどんな場合がある?

支払調書の提出先は、法律上は税務署です。そのため、毎年期限までに税務署に支払調書とその数字をまとめた法定調書合計表を提出する必要があります。
繰り返しになりますが、対象となった支払先に支払調書を交付する義務自体はありません。ただし、特に支払先が個人の場合は確定申告のために支払調書の交付をリクエストされることがあります。その場合には交付してもよいでしょう。

また、支払調書は課税にあたっての情報収集をしたい税務署のために事業者が作成するものです。そのため、支払金額が少額なものについては支払調書の作成が不要となっています。

例として、各士業やデザイナー、講師などへの支払いについては年間支払合計額が5万円を超える場合のみ提出が必要です。また、不動産の使用料については年間支払合計額が15万円を超える貸主についてのみ提出が必要です。

対象となる支払いのすべてについて支払調書が作成というわけではなく、少額な支払については作成が不要となります。必要な分の支払調書だけを作成して業務の効率化を図りましょう。

出典:F1-3 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書(同合計表)|国税庁

まとめ

支払調書は多くの場合、年に1回だけ作成することになります。しかし、年に1回対象となる支払いを集計することは非常に困難です。

支払自体は毎月発生するので、対象となる支払いが発生する都度記録していくことが漏れなく集計する上で重要になります。どのような種類の支払いが支払調書の対象となるのかということをしっかりと理解して、漏れなく、かつ効率的に支払調書の作成業務を行いましょう。

※参考・引用元として国税庁のサイトを利用

執筆者情報

司法書士事務所V-Spirits 代表 渋田貴正(税理士・司法書士・社会保険労務士)
法書士事務所V-Spirits代表、税理士法人V-Spirits社員税理士。
税理士法人V-Spiritsでは、開業時の融資サポートや事業計画の策定支援、会社設立支援、開業後の税務顧問など起業家のためのワンストップサービスを行っている。
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