資金繰り表とは?作成する目的と作成方法を解説【テンプレート付き】

最終更新日:2024年05月31日

資金繰り表とは?作成する目的と作成方法を解説【テンプレート付き】
資金繰り表とは、企業の一定期間における現金の動きや今後の予測について記載した財務ツールです。お金の動きを時系列に沿って記録するものであり、どのタイミングでお金が不足しそうか、あるいは余裕が生まれそうかを直感的に把握できます。
企業の経営者や財務担当者であれば、資金繰り表を使いこなすことが求められます。そこで今回は、資金繰り表の概要や目的と、テンプレートも活用しながら実際に作成する方法についてわかりやすく解説します。
【目次】
  • 資金繰り表とは
  • 資金繰り表を作成する目的
    • 黒字倒産を防ぐ
    • 金融機関から融資を受ける
    • 現状の資金繰りを見直す
  • 資金繰り表を作成する方法
    • 資金繰り表テンプレートのダウンロード
    • 必要項目の設定-フォーマットのカスタマイズ
    • 数字の入力
    • 内容の評価
    • 将来の資金繰りの予測
  • 資金繰り表とキャッシュフロー計算書との違い
  • まとめ
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資金繰り表とは

資金繰り表とは、冒頭でも述べた通り、企業が一定期間における現金の流入と流出を予測して管理するための財務ツールです。作成に際しては、具体的な収入源や支出の内容を時系列に沿って記載するため、現金が不足したり余剰したりするタイミングを予測できます。
一般的には短期的な財務計画を立てるために用いられ、日々の運転資金を調整するために利用されます。資金繰り表を導入することで、事業者は支払い能力を把握しつつ、必要に応じて迅速な資金調達が可能です。また、資金に余裕があると判断できれば、積極的に投資する判断を下せます。現在の実績だけではなく、将来についても把握できる点で重要な財務ツールです。

資金繰り表を作成する目的

資金繰り表を作成する目的は、将来的な資金繰りを予測し経営や財務計画に活かす、というだけではありません。融資を受けようという場合にも役立ちます。
資金繰り表を作成するメリットを3つ解説します。

黒字倒産を防ぐ

資金繰り表を作成する大きな目的は、黒字倒産を防ぐためです。黒字倒産とは、会計上では黒字にあるにもかかわらず、現金の不足によって支払いが滞り倒産してしまうことです。たとえば、大規模な案件を受注して入金予定はあるものの、お金が入る前に発生する下請けへの支払いができなければ、黒字倒産に陥ってしまいます。
黒字倒産を防ぐためには、現状の現金残高のみではなく、将来を含めた現金の流れを把握する作業が必要です。このような、支払いや現金の流れに関する情報は、貸借対照表では把握できないため、資金繰り表を作成しなければなりません。
もし現金の確保が難しいと予想されるならば、早急に行動する必要があります。たとえば、金融機関から融資を受けたりファクタリングしたりするなどです。現金の調達にはまとまった時間を要することがあるため、早期に気づいて行動へと移すことが求められます。

金融機関から融資を受ける

資金繰り表を作成することで、融資審査も通過しやすくなります。なぜなら、漠然とした説明ではなく、論理的に現金の必要性を説明できるため、担当者からの理解を得やすいからです。
また、借り入れだけではなく、返済の見通しを立てる際にも資金繰り表が役立ちます。たとえば、直近の取引実績をふまえると「どのタイミングでいくらの入金があるか」を資金繰り表に記載できるはずです。その中からいくらを返済に充てられるかを説明できれば、無理のない返済計画であることが伝わりやすいでしょう。
なお、設備投資などで融資を依頼する際は、投資した結果を可能な限り正確に予想することが重要です。たとえば、売上が3%増えると仮定するか5%増えると仮定するかで資金繰り表の記載内容は変化します。将来的なお金の流れについては、楽観的ではなく悲観的な値を示したほうが、より納得感を得やすいでしょう。

現状の資金繰りを見直す

経営者が資金繰り表に目を通すことで、その現状を把握し、改善することに役立てられます。運転資金の状況を正確に把握することで、資金調達が必要かどうかや投資が可能かどうかの判断ができるでしょう。
売上が好調だと現金が潤沢にあるような感覚に陥りがちですが、実際には入金はまだ先で、手元には現金が残っていないということもあり得るため、可視化しての確認が重要です。
もし現状の資金繰りに問題点を発見したならば、それをふまえた改善策を検討できます。たとえば、特定の取引先の回収サイトが長い場合、期間を短くしてもらえないか交渉するとよいでしょう。他にも、根本的に売上が下がっているのであれば、商品・サービスを見直したり、マーケティングに力を入れるなどの対策も見えてくるはずです。
なお、資金繰りを見直すことは、上記の黒字倒産を防ぐことにも繋がります。経営を最適化するために、資金繰り表の作成は必須です。

資金繰り表を作成する方法

これまでは資金繰り表の概要や作成の目的について説明しました。
続いて、資金繰り表の記載内容と、作成方法・書き方そして見方について、テンプレートに沿って解説します。

資金繰り表テンプレートのダウンロード

資金繰り表は、テンプレートを活用すれば簡単に作成できます。
まず、テンプレートをダウンロードしてみましょう。ファイルはエクセル形式で、合計金額などは自動的に計算される設定になっています。
※テンプレートは無料でダウンロードできます。

資金繰り表のテンプレート紹介
資金繰り表

資金繰り表

企業や個人事業主が、1年間の現金収入・支出を時系列で予測するための資金繰り計画表テンプレートです。これにより、現金が不足、または余剰するタイミングが把握でき、財務・経営計画立案にも役立てることができます。
本テンプレートは、経常収支/設備収支/財務収支について、月次で1年間分記入する構成になっています。
資金繰り表は現金ベースですので、金額は税込で入力してください。
テンプレートはExcel形式、計算式設定済です。
※計算式の追加・削除・変更をおこなう場合は、「校閲」タブ>「シート保護の解除」で保護解除をおこなった後編集してください。

必要項目の設定-フォーマットのカスタマイズ

資金繰り表にどのような項目を盛り込むかに明確な決まりはありません。そのため、必要な項目があればカスタマイズするとよいでしょう。
一般的には、経常収支と非経常収支、財務収支を区別しやすくするために、大まかなカテゴリ分けで資金繰り表を作成します。上記テンプレートでは、経常収支/設備収支/財務収支のカテゴリを設定しています。

資金繰り表見本

区分内容と項目
月初繰越残高
(前月繰越金)
前月(現在4月ならば3月)の次月繰越を転記
経常収支日常的な営業活動に伴う現金収支です。恒常的に発生します。
経常収入:現金売上、売掛債権の回収、受取手形の入金、その他入金
経常支出:現金支払、買掛債務の支払、支払手形の決済、
人件費や経費の支払、税金の支払、その他支出
経常収支:経常収入-経常支出
設備収支設備の購入・売却に伴う現金収支です。一時的に発生するものです。
設備収入:設備の売却収入、補助金等の入金
設備支出:設備購入費用の支払
設備収支:設備収入-設備支出
財務収支資金の調達や返済に関連する現金収支です。
財務収入:長期/短期借入金等
財務支出:借入金返済等
財務収支:財務収入-財務支出
合計収支経常収支+設備収支+財務収支
(収入合計-支出合計)
次月繰越金合計収支のうち次月に繰り越す金額
(一般的には合計収支=次月繰越金)


これらの項目はあくまでも一例です。自社の取引内容に合わせて項目の追加・削除してください。なお、税金は忘れがちな項目であるため、こちらも含めておくとより現金の動きを把握しやすくなるはずです。

数字の入力

テンプレートをカスタマイズして自社用の資金繰り表のフォーマットが完成したら、実際に数字を入力していきましょう。
数字の入力にあたっては、正確な情報が必要となるため、仕訳帳や現金出納帳、月次試算表など確認できる資料を準備しておくと安心です。これらの資料から、月ごとの売上推移や毎月恒常的に発生する費用、毎年決まった時期に発生する費用などがわかります。将来の予測値についても、実績をベースに変動要因を加味して算出します。なお、期間内に従業員の採用や設備投資など具体的な計画があれば、見積書などもそろえておいてください。

資金繰り表を作成しても、誤った内容を入力してしまったら効果が薄れてしまいますので、「正確であること」が重要です。

準備が整ったら、収入、支出を各分類ごとに入力していきます。エクセル形式のテンプレートを用いる場合、それぞれの項目を入力すると自動的に合計の計算処理が実行されます。

内容の評価

資金繰り表の入力が完了したら、まずは現状について評価しましょう。
最初に確認すべきは、経常収支がプラスになっているかどうかです。経常収支は本業の売上を指すため、これがマイナスであると本業が赤字であることを意味します。全体では黒字になっていたとしても、本業が赤字の場合は根本的な解決が必要です。
解決策としては、売上を増やす、あるいは経費を削減することなどが考えられますが、原因を見つけて対策していく作業が求められます。また、取引先との支払いサイトが影響している可能性があるため、回収できていない売掛金はないかなども確認してみるとよいでしょう。

続いて、財務収支とのバランスも確認が必要です。もし、財務収支が経常収支を上回っている場合は、定常的に現金が減少していく状況に陥っています。利益を借入金の返済に充てるだけでなく、手元の現金も減らすことになるため、こちらも根本的な解決が必要です。問題を放置すると資金繰りが悪化して倒産することになりかねません。

他にも、設備投資の結果や人事異動の結果として売上や利益に変化があったかどうかも評価するとよいでしょう。たとえば、設備投資によって生産性が高まり、手元に残る現金が増えたならば、これは良いリターンを得ていると考えられます。

将来の資金繰りの予測

資金繰り表の大きなポイントとして、現在や過去の実績だけではなく、将来的なお金の動きも評価できることが挙げられます。資金繰り表が完成したらまず、将来的に現金が不足しないかどうかを予測してみましょう。

それにはまず「次月繰越金」の項目をチェックしてください。
もしこの値がマイナスになるならば、現在の計画では現金が不足することを意味し、借り入れなど検討する必要があります。場合によっては、計画の見直しが必要になるかもしれません。
逆に十分なプラスが確保できているならば、さらなる人材や設備などへの投資が可能です。

資金繰り表とキャッシュフロー計算書との違い

資金繰り表に似た書類にキャッシュフロー計算書があります。どちらも現金の流れを把握するという観点では同じですが、作成の目的や範囲が少々異なります。
キャッシュフロー計算書は「実績」に基づいて作成し、企業の財務状況を評価するとともに、投資家や取引銀行等外部関係者に報告する資料としても用いられます。
一方、資金繰り表は、将来的な「予測」を含む、という点が異なります。
また、資金繰り表は事業者が自由に作成するものですが、キャッシュフロー計算書は、上場企業においては作成が義務づけられています。

まとめ

資金繰り表は、事業におけるお金の流れを時系列で把握できるツールです。今までの実績だけではなく、将来的なお金の流れについても把握したり評価したりできるという点が重要です。資金繰りの最適化を目指すためにも、ぜひ作成してください。
なお、資金繰り表には決まった項目が存在せず、自由度が高い分、どのように作成すればよいか悩んでしまうこともあるかもしれません。そのような場合は、ぜひ無料のテンプレートをご活用ください。必要に応じて項目をカスタマイズするだけですぐに導入できます。

資金繰り表のテンプレート紹介
資金繰り表

資金繰り表

企業や個人事業主が、1年間の現金収入・支出を時系列で予測するための資金繰り計画表テンプレートです。これにより、現金が不足、または余剰するタイミングが把握でき、財務・経営計画立案にも役立てることができます。
本テンプレートは、経常収支/設備収支/財務収支について、月次で1年間分記入する構成になっています。
資金繰り表は現金ベースですので、金額は税込で入力してください。
テンプレートはExcel形式、計算式設定済です。
※計算式の追加・削除・変更をおこなう場合は、「校閲」タブ>「シート保護の解除」で保護解除をおこなった後編集してください。

監修者情報

稲田光浩税理士事務所 代表 稲田光浩(税理士)
30歳で5科目合格(簿記論、財務諸表論、法人税、相続税、消費税)
複数の会計事務所に勤務し、個人商店から売上100億円企業まで税務顧問していた実績あり。お客様が本当に望むものは何か、経営者が悩んでいる本当の理由を傾聴により引き出すことが得意。
短期的な目線で物事を判断せず、社長の頭の中をアウトプットし可視化することで、本当にやりたいことや、やるべきことを明確にし、実現するために実行支援を行っている。近畿税理士会所属(登録番号 135413)。
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