金銭消費貸借契約書とは?契約の要件についてわかりやすく解説
最終更新日:2024年08月28日
この記事では、金銭消費貸借契約がどのようなもので、記載されている事項にはどのようなものがあるかを解説していきます。
契約の成り立ちがわかれば、自分に不利な条項がないかの把握もしやすくなります。
- 金銭消費貸借契約とは
- 金銭消費貸借契約が成立する条件
- 金銭消費貸借契約の必要性と効果
- 金銭消費貸借契約書に記載すべき項目
- 貸借の合意と金額
- 返済期日と返済方法
- 利息の有無と詳細
- 連帯保証人
- 遅延損害金
- その他の項目
- 金銭消費貸借契約書のテンプレートを紹介
- まとめ
金銭消費貸借契約とは
金銭消費貸借契約とは、将来返済する約束をしたうえで、金銭を借り入れる契約のことです。また金銭消費貸借契約書とは、借りる金額や返済方法などの契約条件を記載した書面のことをいいます。
民法587条では、消費貸借について「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」と定義しています。
金銭消費貸借とは、この消費貸借のうち、金銭で返還することを約束したものになります。お金を一時的に借りて、その後に返すという契約なので、住宅ローンやカードローンなど個人と金融機関の契約は金銭消費貸借契約に含まれます。
また金融機関に限らず、法人同士、個人同士でもお金の貸し借りを行う場合にはすべて金銭消費貸借契約に含まれます。
金銭消費貸借契約が成立する条件
金銭消費貸借契約が成立するためには、原則的には借主が返還することを約束したうえでお金を受け取ることが必要となります(民法587条)。
つまり最初に大きな金額を受け取り、その後定期的に返還、もしくはある時期に全額を返還することを約束するのが金銭消費貸借契約の成立要件といえます。
しかしながら税制の改正で、お金の受け渡しがなくても、書面でなされた消費貸借もしくは電磁的記録によってなされた消費貸借は、借主が返還することを約束し、貸主がお金を提供すると約束した場合に、効力を生ずる(民法587条の2 第1項)とされています。
要はお金の受け渡しをしなくても、お金の貸し借り、返済方法をあらかじめ書面なりで決めておくことで、金銭消費貸借契約が成立することになったのです。
特に電磁的記録(電子契約書)が認められたことで、書面に押印する必要がなくなり、金銭消費貸借契約の締結が容易になったといえます。
金銭消費貸借契約の必要性と効果
お金の貸し借りを行う場合には、金銭消費貸借契約としてきちんとした契約書を作成すべきです。契約書を作成することで借主、貸主ともにさまざまな法律の保護を受けられるからです。
借主側のメリットとしては、契約書を作成することでお金の受け渡しがなくても契約が成立し、お金を渡すよう貸主に請求することができます。また契約が成立した後でも、お金を受け取る前であれば、一方的に契約を解除することができるようになっています。もし契約解除により貸主が損害を被った場合、貸主は損害賠償を請求することができます。(民法第587条の2 第2項)
一方、貸主側のメリットとしては、消費貸借に関して従来は無利息となっていたものが、特約を付けることで利息を請求できるようになりました。(民法第589条)
また貸主、借主ともに、契約締結後でお金の受け渡し前に、当事者のどちらかが破産手続き開始の決定を受けた場合、契約の効力が失われます。(民法第587条の2 第3項)
金銭消費貸借契約書に記載すべき項目
金銭消費貸借契約書に記載すべき一般的な項目を説明していきます。契約の内容によって保証人を付けたり、抵当権を設定したりする必要がある場合には、別途保証人や抵当権の項目を付け加えます。
貸借の合意と金額
金銭消費貸借契約が当事者間によって合意されたことは、契約の根幹事項になりますので、最初に明記することが大切です。
一般的には「貸主(甲)は、借主(乙)が金銭借入れを希望したため、乙に対し、金○○円也を、次条以下の約定で貸渡し、乙はこれを確かに借受けるものとする」などのように、当事者間で合意したことを明確にします。この合意があることによって、貸主にお金を受け渡す義務が発生するのです。
利息など返済についての条件は別途定めるのですが、借り入れる金額については最初に具体的な金額を記載するのが一般的です。
なお、民法の改正前は、お金を受領することが契約の成立要件であったので、「金銭を受領した」という文言が必要でした。しかし現在では書面や電磁的記録で契約をした場合、お金の受け渡しがなくても契約が成立するので、受領したという文言は必要ありません。
一方で、契約日が貸付日とはならない場合もあるので、貸付日を明記する必要があります。
返済期日と返済方法
返済をどのように行うかも、契約の重要な項目です。返済方法としては、分割返済と一括返済があります。通常の借入であれば、毎月支払いを行う分割払いが一般的ですが、当事者間で合意すれば、将来の一定の日に借り入れた金額を一括で返済する「満期一括返済」という方法も可能です。
返済期日とは、借りたお金を最終的に返済する日になります。住宅ローンのCMなどで「最長35年」といったフレーズを聞いたことがあると思いますが、これが返済期日です。返済期日も当事者間の合意で決まりますので、数カ月といった短い期間から数十年といった長い期間まで自由に設定できます。
分割払いを選択した場合、毎月元本と利息を支払う必要がありますが、この際にも元利均等返済と元金均等返済のどちらかを選択することになります。
元利均等返済は、住宅ローンで多く利用されている方法で、元金と利息を合計して毎月一定額を支払う方法です。借入当初は利息分の支払いが多く、元金が減りにくいのが特徴です。
一方、元金均等返済は元金の返済額を毎月一定として、プラスアルファで金利を支払う方法です。借り入れ当初は利息を含めた支払金額が多くなりますが、元本の減少スピードが早いのが特徴です。
利息の有無と詳細
消費貸借の契約においては、無利息が原則で、利息を請求するためには特約が必要です。(民法第589条)
ただし個人事業主や会社などが営業の一環として行う金銭消費貸借については、利息の特約がなくても法定利率(2023年12月現在年3%)で利息が請求されますので、注意しましょう。
また、個人間の貸し借りなどでなければ、通常は無利息でお金の貸し借りはしないので、金銭消費貸借契約においては利息の特約を定めるのが一般的です。
利息については、「元本に対して年〇%の利率を適用する」といった表記が一般的です。
この際に注意するのが利息制限法です。利息制限法とは、金銭消費貸借契約における上限金利を定めている法律です。
利息制限法での上限金利は以下のとおりです。
借入元本 | 年利率 |
10万円未満 | 20% |
10万円以上100万円未満 | 18% |
100万円以上 | 15% |
上限金利を超えた部分については、無効となりますので、金銭消費貸借契約を結ぶ際には注意しておきましょう。
特に年利率の場合、3か月で元本に対して6%を利息として支払うとすると、6%×12月/3月=24%となり、利息制限法の上限を超えてしまいます。1年未満の契約には注意が必要です。
連帯保証人
貸したお金の回収を確実に行うために、貸主が保証人や連帯保証人を要求することがあります。保証人や連帯保証人とは、お金を借りた人(債務者)に代わって債務を負担する人のことですが、それぞれ違いがあります。
保証人は債務者が支払いをしない場合に、貸主から請求を受けますが、まずは債務者に請求すること(催告の抗弁権)や債務者の財産を調べるように要求すること(検索の抗弁権)ができます。したがって、貸主側は不便だと感じることもあります。
一方、連帯保証人には催告の抗弁権や検索の抗弁権がないので、一般的な金銭消費貸借契約では連帯保証人を求めることが多いです。契約書に連帯保証人であることをきちんと明示しないと、通常の保証人と受け取られることもあるので注意しましょう。
また、連帯保証人は誰でも良いわけではなく、債務を保証できるだけのお金を持っている必要があります。したがって借主側が連帯保証人を提示しても、貸主が認めなければ連帯保証人になることはできません。
もし誰かに連帯保証人を求められた場合には、責任の重さを理解したうえで判断するようにしましょう。
遅延損害金
毎月の返済分が支払えない場合に備えて、遅延損害金の項目も定めておく必要があります。
一般的には「借主が、返済期日において、本契約に基づく債務の全部または一部の弁済をしない場合、貸主に対し、当該弁済日の翌日から完済に至る日までの期間につき、年〇.〇%の割合による遅延損害金を支払うものとする。」などと記載します。
遅延損害金の利率に対しても、利息制限法が適用されることに注意が必要です。遅延損害金の上限利息は以下のとおりです。
借入元本 | 年利率 |
10万円未満 | 29.2% |
10万円以上100万円未満 | 26.28% |
100万円以上 | 21.9%* |
その他の項目
その他の記載が必要な事項としては、まず期限の利益の喪失が挙げられます。
期限の利益とは、お金を借りる際に返済期日を定めることで、期日前に貸主から返済を迫られないというものです。ところが毎月の返済が滞ってしまうと、貸主は約束に違反したとして、返済期日を待たずに元本の返済を一括で求めることができます。
借主からすると、返済期日まで待ってもらっていた期限の利益がなくなることから、期限の利益の喪失と呼んでいます。1回の返済が遅れただけで期限の利益の喪失にあたるとする場合もあるので、契約書の文言には注意しましょう。
また繰上返済が可能であるかの条項も確認しておく必要があります。民法第591条 第2項では「借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる。」とされていますが、同条第3項では「当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がその時期の前に返還をしたことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。」としています。
貸主は早期にお金を返されると、予定していた利息が入らなくなるので不利になります。したがって繰り上げ返済が行える場合でも、一定のペナルティが科されるような条項を設ける例が多くなっています。
金銭消費貸借契約書のテンプレートを紹介
金銭消費貸借契約の内容は、おおむね決まっています。したがって特殊な項目を必要としていなければテンプレートを利用するのがよいでしょう。
テンプレートBANKには民法改正に対応した金銭消費貸借契約書をはじめ、割賦弁済など目的に応じた金銭消費貸借契約書や金銭借用書などの雛形がそろっています。
無料会員登録でダウンロードできますので、ぜひ利用してみてください。
まとめ
ローンや借り入れを行う際には、金銭消費貸借契約書が必要となります。また金銭消費貸借契約は民法の改正により、書面による契約を行えば、実際のお金の受け渡しが発生する前でも契約が成立する諾成契約となっています。
金銭消費貸借契約書にはお金の貸し借りに関する基本的な項目が記載されているので、各々の内容をよく理解し、不利な契約になっていないかを確認したうえで契約することが大切です。テンプレートを使うことで項目漏れなどを防ぐことができますので、積極的に使うようにしましょう。
執筆者情報
青野 泰弘(ファイナンシャルプランナー・行政書士)1964年静岡県生まれ。同志社大学法学部卒業後、国際証券に入社。その後トヨタファイナンシャルサービス証券、コスモ証券などで債券の引き受けやデリバティブ商品の組成などに従事した。2012年にFPおよび行政書士として独立。相続、遺言や海外投資などの分野に強みを持つ。
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借用書・金銭消費貸借契約書 のテンプレート一覧へ
金銭消費貸借契約書は、将来返済することを前提として金銭の貸し借りが発生した場合に、金額・返済期間・利息・連帯保証人などについて双方が合意し、明確に書面で取り交わすものです。利息や連帯保証人についてはトラブルのもとになりやすいため、きちんと確認したうえで締結するようにしましょう。
また、同じく金銭の貸し借りに際し、その内容や返済等について記載した借用書(借用証書)テンプレートもご用意しています。これは、借主が作成し貸主に提出するものです。
Word(ワード)形式のテンプレートは無料でダウンロードしていただけます。
契約書 のテンプレート一覧へ
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