売れるPOPの作り方(16)「色使い」のセオリー ~色の心理効果~

最終更新日:2023年12月04日

売れるPOPの作り方(16)「色使い」のセオリー ~色の心理効果~
突然ですが、あなたに質問です。
「POP作りに必要な要素って何?」

さて、どんなことが思い浮かびますか?
こう聞かれたとき、おそらくこんなことを思い浮かべるのではないでしょうか(このコラムを読んでくださっている読者の方なら特に)。

1)商品の良さをアピールするキャッチコピー
2)どれだけ新鮮な商品か!?などをしっかり訴求する写真
3)「今ならこんなに安いですよ!」という、価格の情報
4)これはぜひ知っておいてほしい!というセールスポイント(例=人気商品・ロングセラー・限定商品 など)

これで全部だと思われた方。ひとつ大事なものを忘れています。1~4のすべてに関係する、基本的で、そのうえすごく大切なもの。

はい。そうです。
それは色(カラー)ですね。正確には「色使い」(カラーリング)です。
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色(カラー)は人の心理に影響する

1~4の内容がどれだけ素晴らしく魅力的であっても、色使い-どの部分にどの色を使うか?どの色でPOPの大事な部分を伝えるか、の選択を間違えると、せっかくのキャッチコピーやセールスポイントが台無しになってしまいます。いえ、台無しどころか、お客様に不快感を与えてしまいかねません。それぐらい色というのは重要な要素です。

ここでひとつ、実験をしてみましょう。次の漢字を声に出して読み上げてください。




どうですか?ものすごく不自然で居心地が悪かったのではないですか?
「青」という漢字で伝えたいのは「緑」のイメージなのでしょうか?それとも「青」のイメージなのでしょうか?同じように「赤」という漢字は、いったいどちらのイメージで伝えたいのでしょう?
あなたが感じた居心地の悪さ、違和感は、あなたの中に、青のイメージや緑のイメージ、赤のイメージがすでに頭に入っていて、そのイメージのどちらを使えば良いのか?それが整理できないというところから来ています。

「誰もこんなことはしないよ!」と、思われるかもしれませんね。でも、これほど極端でなくても、これに似たことを案外平気でおこなっているチラシやPOPは目にします。

たとえば、

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これもやや極端な例ですが、1枚のPOPやチラシの中に無秩序にたくさんの色が使われている、というものは見たことがあるのではないでしょうか。
それぞれのコトバを強調したくていろいろな色を使ったのかもしれないし、好きな色をあれもこれも使いたかったのかもしれませんが、これでは読む人の頭が・・・というよりも、心が混乱しますね(苦笑)。

それぞれの色には、心理効果があります。これは自然界に存在するあらゆるものを見てきた私たち人間が、本能的に感じるものです。
たとえば、「癒し」を表現しようとする場合、「緑」と「赤」どちらがしっくりくるでしょうか?緑なら、木々や植物などが連想され、穏やかな気持ちになりますが、もし、赤色で「癒し」と書かれていたら・・・?

冒頭の「青と赤」の例はその最たるものですが、このように、心理効果と逆行する色を使うと、見ている人は不自然さと違和感を覚えます。さらに言えば違和感を通り越して、嫌悪感さえ感じてしまうこともあります。

今回は、そんな「色(カラー)」の代表的な心理効果とセオリーをご紹介します。いつも目にしている「色」を、少し違った角度から振り返ってみましょう。きっとあなたも納得する部分があるはずです。

色が持つ心理効果-赤、青、緑、紫、橙、白、黒

赤(レッド)-購買意欲を高める色

赤

赤は、非常に目立つ色で、視覚誘導力が強い色です。生まれたての子どもが「赤ちゃん」「赤んぼう」と呼ばれるのは、出生後に最初に認識する色が赤だからと言われています。
また、購買意欲を高める色としても有名で、赤色は「購買色」とか「販売色」と呼ばれます。

カラーマーケティングでは「赤を入れるかどうか、で売上が上下20%も変わる」と言われています。私たちが目にする「SALE」の文字はほとんどが赤ですよね?「買って欲しい!」「絶対にお得ですよ!」というときの定番色と言えます。

ただし、目立ちすぎるだけに、むやみやたらに使うと、逆効果になりますので注意が必要です。

青(ブルー)-信頼感を感じる色

青

日本人が一番好きな色が青だと言われています。それは性別や年齢に関係ありません。空の色、海の色、日本人でなくても、人間が一番落ち着く自然の色が青なのでしょう。また青のイメージは「信頼」や「冷静」です。ですので、商品を説明する文章や、ロングセラー、定番商品などの、安心できる商品、信頼をいただいている商品に使う色として適しています。

ただし、「青い食品」というのはあまりありません。「青い野菜」や「青い肉」なんてのも、ありませんね。人間は「青い食べ物」を見ると食欲が減退するようになっています。ですので、野菜や食品を載せるようなPOPならば、青という色を使う場合はその使う箇所や内容に神経を使いましょう。

黄(イエロー)-幸せを感じる色、注意を喚起する色

黄

黄色はもっとも自然に近い色のひとつです。
たとえば、多くの人が太陽をスケッチに描く時は黄色を使います。風水では、黄色は金運アップを含めて幸運の色。幸せの黄色いハンカチというのもあります。人は黄色=幸せというイメージを強く持っています。商品に対する安心感や、「この商品を買うとちょっと幸せな気分になれますよ」などの、買ったあとのハッピーな気分を盛り上げたいときにはこの黄色が威力を発揮します。

また「信号の黄色=注意」、あるいは「工事中の看板=黄色×黒=注意」、というように黄色には「注意する!」というイメージが強く含まれています。実際、黄色い光には交感神経と副交感神経を刺激する効果も確認されているようです。

「ちょっと待って!」とか「いま一度!」「ぜひとも!」なんていうような注意喚起のフレーズに、黄色と黒の組み合わせをさりげなく使うのも非常に効果的です。

緑(グリーン)-癒しを感じる色、自然を表現する色

緑

緑という色の最も有名な効果は「癒し効果」ですね。森林浴というものがありますが、その癒し力は、森林の中で浴びる空気清浄の力もさることながら、目に飛び込んでくる圧倒的な緑の力も、それに含まれています。

そんなイメージからも、緑は自然、ナチュラル、エコなどのイメージを連想させる色です。あなたの商品が、「天然素材」や「〇〇100%」、「有機栽培」などの、自然の魅力をふんだんに備えた商品ならば、「緑色をどこかに使う」ということをしっかりと覚えておきましょう。

紫(パープル/バイオレット)-信頼感×購買意欲、高級感を表す色、落ち着きや深い眠りをもたらす色

紫

私たちは小学生の時にすでに「赤」と「青」の同じ量の絵の具を混ぜ合わせると「紫」になることを知っていました。実はこの絵の具の世界は、心理効果の世界でも同じです。つまり紫は「購買力」の「赤」と、「信頼」の「青」の組み合わせですね。

この色は、「信頼できる商品を、より安くご提供する」時などに使用できます。
ちなみに、このセールスコピーを各々3つの色で表現してみました。さて、あなたはどの色が一番コピーとマッチすると感じますか?

『信頼できる商品を、より安くご提供』
『信頼できる商品を、より安くご提供』
『信頼できる商品を、より安くご提供』


上のコピーであれば、一番フィットするのは「紫」だと言う人が一番多いはずです。なぜなら、赤の文字では「信頼できる」という部分に少し違和感を感じ、青の文字では「より安く」という部分に物足りなさを感じます。この両方の要素を満たすのが「紫」というわけです。

また、日本人では「紫=高貴な色」というイメージは有名ですね。高級品を表現するのに、紫はよく使われる色です。
また、それは同時に「豊かな心」とか「落ち着いた(崇高な)気持ち」なども表現します。ひいては「深い眠り」などにも紫の色がよく使われます。よくよく見てみると「寝具関係」には淡い紫色が使われていますが。これも心理効果をしっかりと計算しているからでしょう。

ですので、「じっくりと使ってほしい」とか「気持ちを清々しくしてほしい」などという商品のPOPには紫が効果的なのです。

橙(オレンジ)-温かみ、親近感、喜びを感じる色、組み合わせで力を発揮する色

橙

温かみ、親近感、喜びなどの気持ちを伝える-そんな時使う色が、橙(オレンジ)です。
ただ、使い方には少しヒケツがあります。橙は単独でその力を発揮するのではなくて、別の色(例えば、緑や黄色など)と組み合わされると、よりその効果を発揮する、独特の役回りを担う色です。

夏の色として代表的な「橙(オレンジ)」は、夏のPOPだけに登場するわけではないのです。
温かみ、親近感、喜び、などの気持ちが伝わる。そんな色がこの橙です。ただ、少しヒケツがあります。橙はその一つの色でその力を発揮するのではなくて、別の他の色(例えば、緑や黄色など)と組み合わされると、より以上の効果を発揮する、独特の役回りを担う色です。

この「色と色の組み合わせ(配色)」については、別のコラムにて詳しくご紹介します。

白(ホワイト)-余白の大小で印象が変わる

白

白って色なの?と思う人がいるかもしれませんが、白も立派な色の一つです。ただ、POP作りでは、どちらかというと「白=余白」という意味で使います。うまく「白」い余白を使って、伝えたいことを、伝えたい色で訴求する・・・そんな縁の下の力持ちのような役割を担います。

白=余白がどれだけ使われているだろう?という視点でご自分が作ったPOPをチェックしてみてください。白い部分の大小は、確実にそのPOPのイメージ作りに影響します。

そのテクニックについても、配色についてコラムで説明します。

黒(ブラック)-高級感、大人っぽさなど、引き締める色

黒

黒色というのは、もっぱら文字に使われるという印象ですが、それだけではありません。橙や白と同様に、黒は他の色との組み合わせによって大きな力を発揮します。

黒は主に、「高級感」「オトナっぽさ」「キリっとしたイメージ」を表現するときに使われます。また、日本人になじみの深い素材である「炭」も黒色です。もし炭を使った商品や、炭焼きなどの調理方法が似合う商品などがあれば、どこかでぜひ「黒」を使ってみたいですね。

いかがでしたでしょうか?今回は、POPでよく使われる代表的な色の心理効果をご紹介しました。
自分が好きだから、あるいはカラフルな方が目立ちそうだから、という理由で、やみくもに色を使っていたら、効果が逆効果にもなり、伝えたいことが思うように伝わらない・・・という結果を招きかねません。

さて、今回ご紹介した色は、実はほんの一握りでしかありません。水色、ピンク、グレーなどもよく使われますし、漢字で表される日本の伝統色「藍色」「朱色」「鶯色」などもあり、その世界は本当に幅が広くて奥の深いものです。

また、色にはそれぞれ「彩度」「濃度」「明度」などがあり、人間が識別する色は750万色、デジタルで表現できるレベルでさえも、200万弱もの色があるとされています。

これだけの種類の中でどれを選ぶか?を、考えながらPOPを作るのは至難の業です。それでも、「どんな色がどんなメッセージを伝えるのか?」は知っておいて損はないでしょう(というより、得なことばかりです)。

これからは「好きな色を使う」「適当に色を使う」のではなく、その効果をふまえたうえで「お客様に伝えたいメッセージ」で色を選ぶようにしましょう!

次回は、色の組み合わせ(配色)のお話しです。

執筆者情報

橘高総合広告研究所 代表 橘高唯史(中小企業診断士・フリーライター)
大手百貨店系通信販売カタログのディレクター業務に20年携わり、そこで培った「売れる理由」を体系化して2017年にコンサルタントとして独立。現在は公的機関の経営相談員やセミナー講師を務める一方、ライターとして執筆活動も行なっている。
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