請求書に源泉徴収税額は記載すべき?計算方法や書き方について徹底解説!

最終更新日:2024年12月23日

請求書に源泉徴収税額は記載すべき?計算方法や書き方について徹底解説!
源泉徴収とは、給与や報酬を支払う者が、本人に代わって税金などを納付する制度のことです。源泉徴収をおこなうことで、税金の支払い漏れを防ぐことができます。

源泉徴収のしかた | 国税庁

特に、次のいずれかに該当する方は、源泉徴収の対象になる報酬や請求書の記載方法を理解しておくことが重要です。
  • フリーランスや個人事業主へ発注した事業者(源泉徴収する側)
  • 受注側のフリーランス・個人事業主(請求書を作る側)

この記事では、源泉徴収制度の概要や請求書を発行する際の注意点などを解説します。
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源泉徴収とは

源泉徴収(げんせんちょうしゅう)とは、給与や委託業務に対する報酬を支払う者が税金を天引きして預かり、本人に代わって国に納付する仕組みのことです。

会社員であれば、毎月の給料から所得税などが引かれます。これは、会社が従業員に代わって納税するために源泉徴収をしているからです。
同様に、会社は仕事を依頼したフリーランスや個人事業主に対しても、報酬を支払う際に源泉徴収をしなければいけないケースがあります。この場合、請求金額から源泉徴収分を差し引いた金額を支払うことになります。

源泉徴収をする義務がある人のことを「源泉徴収義務者」といいます。源泉徴収の目的は、税金の支払い漏れなどを防ぎ、効率的に徴収をするためです。

源泉徴収は法律で定められている義務です。源泉徴収を怠ると、不納付加算税や延滞税を課されるなどのペナルティを受ける可能性があります。源泉徴収義務者である場合は、従業員や外注先の人が安心して業務に取り組むためにも、しっかりと徴収をおこないましょう。

源泉徴収の対象となる報酬

フリーランスや個人事業主に業務を発注する際、支払う報酬の種類によって源泉徴収が必要かどうかが異なります。
源泉徴収の対象になる報酬は次のとおりです。

  • 原稿料や講演料など
  • 弁護士や司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
  • 映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  • ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
  • プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
  • 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金
引用元:源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁


これらの報酬を支払った際は、報酬額に応じて所得税及び復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。ただし、報酬を支払う相手が法人である場合は、上記の報酬に該当しても源泉徴収は不要です。

源泉徴収が必要な報酬は所得税法で定められているため、詳しくは国税庁の「令和6年版 源泉徴収のあらまし」を参考にしてください。

請求書に源泉徴収税額を記載する必要はある?

請求書に源泉徴収税額を記載する義務はありません。そのため、源泉徴収税額を記載するかどうかは請求者側の任意です。

しかし、請求書に記載がなくても源泉徴収の義務が消えるわけではありません。源泉徴収義務者はどちらにしても源泉徴収をする必要があります。そのため、請求書に源泉徴収税額も記載するケースもあります

請求先も源泉徴収税額を計算する手間が省けるので、相手に対する配慮としても源泉徴収税額は記載するのがおすすめです。

請求書に源泉徴収税額を記載する際のポイント

源泉徴収税額を請求書に記載するときは、端数や消費税の書き方などに注意する必要があります。お互いの手間を増やさないためにも適切な形で正しく記載しましょう。

小数点以下の数字の処理

源泉徴収税額は基本的に「支払い額×10.21%」で計算するため、少数点以下の端数が出ることがあります。端数が出た場合、1円未満は切り捨てて処理します
たとえば、源泉徴収税額が「10,500.5円」だった場合、請求書に記載する金額は「10,500円」です。

消費税の扱い

原則として、源泉徴収税額は消費税を含めた総額に対して計算されます。
たとえば、報酬が税込11万円(税抜10万円)だった場合には、「11万円×10.21%」で源泉徴収額は11,231円です。

しかし、請求書で「報酬」(税抜)と「消費税」の金額が明確に区分されている場合は、報酬のみの金額で源泉徴収税額を計算しても問題ありません。明確に区分する場合だと、報酬が税込11万円(税抜10万円)であれば、「10万円×10.21%」で源泉徴収税額を計算します。

報酬と消費税を明確に区分した方が源泉徴収税額を低く抑えられるため、手取り額を増やせるメリットがあります。

参考:消費税等と源泉所得税及び復興特別所得税(国税庁)

インボイス制度の導入による影響

2023年10月から導入されたインボイス制度では、一定の要件を満たした適格請求書がないと仕入税額控除ができなくなりました。ただし、免税事業者が発行する請求書においては、適格請求書の要件を満たす必要はありません。源泉徴収の記載や計算方法も従来通りです。

課税事業者になった場合は、適格請求書の発行が求められます。適格請求書には、登録番号、適用税率、税率ごとに区分した消費税額の記載が必要です。これにより、取引先が仕入税額控除を受けられるようになります。

適格請求書では消費税が明確に区分されるため、税抜き金額に対して源泉徴収税額を計算しても問題ありません。適格請求書の記載事項や留意点は「適格請求書等保存方式の概要|国税庁」も参考にしてください。

参考:インボイス制度開始後の報酬・料金等に対する源泉徴収|国税庁

源泉徴収の計算方法

請求書に源泉徴収税額を記載する際、どのように金額を計算するかわからない人もいるでしょう。
源泉徴収の金額は、基本的に「支払い額×10.21%」で計算します。ただし、支払い額が100万円を超えた部分は「20.42%」の税率になります。

請求額が100万円以下の場合

請求額が100万円以下の場合、10.21%を掛けることで源泉徴収税額が計算できます。

例)報酬が80万円の場合
800,000円×10.21%=81,680円

報酬(税抜金額)と消費税を明確に区分した場合、請求書の記載は次のようになります。

報酬(税抜):800,000円
消費税:80,000円
源泉徴収額:-81,680円
合計金額:798,320円

請求額が100万円を超える場合

請求額が100万円を超える場合には、100万円を超えた部分に20.42%を掛けて源泉徴収額を計算します。

例)報酬が150万円の場合
(100万円×10.21%)+(50万円×20.42%)=204,200円

源泉徴収の納税方法

源泉徴収した金額は、報酬を支払った月の翌月10日までに納付する必要があります。所得税は管轄の税務署、住民税は各市区町村に納付します。

源泉徴収の支払い方法は、税務署や金融機関での現金納付、もしくはキャッシュレス納付です。キャッシュレス納付では、クレジットカードやインターネットバンキング、スマホアプリなどから納付できます。

手元のパソコンやスマホから簡単にできるため、特別な理由がなければキャッシュレス納付の方が便利でしょう。詳しくは「源泉所得税の納税手続|国税庁」をご覧ください。

請求書の作成ならテンプレート利用がおすすめ

法人の企業だけなく、個人事業主やフリーランスの人も源泉徴収の制度を正しく理解しておくことが重要です。請求書に源泉徴収税額を記載する義務はありませんが、お互いの負担を減らすためにも、適切な形で記載しましょう。

源泉徴収や消費税を適切に記載した請求書を発行したい人は、テンプレートを利用するのがおすすめです。テンプレートを使用すれば、必要な項目がすでに整っているため、記入漏れなどを防ぐことができます。また、請求書の発行にかかる時間も短縮できるため、業務の効率化にも繋がるでしょう。

監修者情報

太田 昌明(税理士)
EY新日本有限責任監査法人時代は、上場企業の会計監査及び内部統制監査、IPO監査業務に従事。業種は総合広告代理店・コンテンツ制作・介護業・不動産業・製造業・百貨店業など多岐にわたる。
そのほか、不正対応、IFRS導入企業の監査なども経験。
上場会社の経理部長・財務部長・IR部長、子会社取締役を経験し、決算業務全般、内部統制、企業結合会計、部門別会計の設計、資金調達など幅広い業務活動実績がある。
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