離婚協議書を作成する際のポイント【テンプレート付】

最終更新日:2024年06月03日

離婚協議書を作成する際のポイント【テンプレート付】

昨今、離婚は特別なことではなくなってきました。しかし、ハードルが低くなったとはいえ、口約束だけで安易に離婚を進めてしまったり、離婚の条件や内容をしっかり協議しないまま離婚してしまうと、後々になってトラブルに発展したり、本来請求できた権利を失ってしまうケースなども生じてしまいます。
本コラムでは、上記のようなトラブルを回避するためにも、協議離婚をする際のポイントや「離婚協議書」を作成する際の注意すべき点、その内容を書面として残す場合の選択肢・方法などについて解説いたします。
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離婚協議書とは?

「離婚協議書」とは、その名のとおり、当事者(夫婦)間で協議して離婚する際の条件や内容を契約書面として残したものです。
離婚協議書を締結するなどして離婚に伴う権利関係を確定しておかなければ、離婚後も不安定な状態の期間が生じ、場合によってはトラブルにもなりかねません。
また、所有する不動産の名義変更の手続きや、利用している住宅ローンの変更手続きなどで、銀行等に確認証拠資料として「離婚協議書」を提出する必要が生じる可能性もあります。
いずれにしても、協議離婚をするにあたっては、法的に有効な「離婚協議書」を作成しておくことが重要になることは言うまでもありません。

契約書面の「タイトル」について

冒頭で説明したとおり、「離婚協議書」は、協議離婚する際に当事者間で取り決めた、離婚に関する条件や内容を証拠として残す契約書になります。
従って、書面として残す場合のタイトルは、「契約書」であったり「合意書」であったりと自由に決めることができますが、「離婚協議書」というタイトルで作成されることが多く、一般的な形と言えるでしょう。

離婚協議書の法的効力と「公正証書」

「離婚協議書」で定めた内容について、当然ながら当事者は守る義務が生じます。しかし、法的な効力を担保するためには、作成する内容に関して法的に有効なものとしなければなりません。
また、離婚協議書を作成したとしても、将来的に契約に違反して約束事が守られないようなケースが生じる可能性もあります。そのような場合、双方で話し合って解決できればよいのですが、話し合いが進まず裁判などに発展し解決に時間がかかってしまうこともあるでしょう。
そのようなケースを防ぐために有効な手段となり得るのが「公正証書」です。
公正証書として作成をすれば、公証役場にて公証人が法的に有効な内容であるかを確認したうえで作成されますので、「離婚協議書」の法的効力が高まります。それだけでなく、「強制執行認諾約款付公正証書」という執行文言付の公正証書を作成しておけば、養育費や慰謝料など離婚協議書で定めた金銭の支払いが契約通りに実行されなかった場合、裁判を起こさなくても公正証書により相手の財産を差し押さえるなどして、強制的にお金を回収する強制執行が可能となります。

離婚協議書で定めておくべき内容

離婚協議書で定めておくべき内容については、「夫婦間に未成年の子供がいるか?」「住居は所有財産であるか?」「住宅ローンの利用があるか?」「離婚原因は?」等、当事者間のおかれている状況により変わってきます。
定めるべき条項は当事者の状況によって変わりますが、一般的に盛り込まれることが想定される内容は以下のとおりです。

一般的に盛り込まれることが想定される内容について

親権者および監護者について

当事者間に未成年の子がいる場合には、未成年の子の親権者と監護者を定めます。一般的には親権者と監護者はどちらか一方が兼ねることが多いですが、親権者と監護者を分けて定めることも可能です。ただしそれは、後々にトラブルになる可能性が高まることからあまりおすすめできません。

養育費について

養育費の支払いについては、支払い続ける期間や毎月の支払額、支払先の口座や支払日などを具体的に定めます。支払先口座は子供の口座を指定することも可能です。
進学時などの費用負担について、あらかじめ具体的な金額を定めておくとよいでしょう。

面会交流について

面会交流については、離婚協議書にて事細かに具体的な取り決めをしておきたいかもしれませんが、子供の意思を尊重しないような内容で事前に取り決めてしまうと、面会をする時にかえってスムーズに進まないことも想定されます。
子供の成長に伴って状況や意識が変わることもあり得ますから、離婚協議書ではあまり事細かい内容は定めず柔軟に対応できるようにしておいた方がよいでしょう。

財産分与について

夫婦で婚姻中に築いた財産は共有の財産として分与の対象となります。具体的な財産項目としては「預貯金、自宅、不動産、自動車、株式」などで、現物をそのまま分与するか、金銭に換価して分与するかなど、誰に・何を・いつどのように分与するか具体的に記載します。
なお、結婚前にそれぞれが有していた財産は、原則として財産分与の対象にはなりません。

慰謝料について

慰謝料の支払いについては、期日を定め一括で支払うよう取り決めるケースもありますが、金額の大きさによっては分割にて支払うよう定めることも可能です。
分割払いとなった場合、受け取る側からしてみればなるべく早く回収したい気持ちになるでしょう。しかし、相手の収入や資産状況によっては、現実的でない条件を定めてしまうとかえってスムーズに回収できないことも想定されます。相手とよくよく協議し、実行可能な計画を立てることが重要です。

住宅ローンの負担について

昨今では、夫婦共有名義にて連帯債務を負う形で住宅ローンを契約し、マイホームを購入しているケースも多いかと思われます。このような場合には、「離婚した際に住宅をどうするのか?」、「売却処分して債務を完済するのか?完済は可能であるのか?」、「どちらか一方の名義に変更して住み続けるのか?その場合には、銀行の連帯債務はどのように解消するのか?」等々、置かれている状況と当事者の意向によって様々な取り決め内容となることが想定されます。事前に銀行側とも相談し、現実的に可能な選択肢の中で調整することが重要な条項となります。

年金分割について

年金分割については、離婚協議書内にてその内容を定めてあっても公正証書にしておかなければ、離婚協議書を提出して分割請求の手続きを行うことはできないので注意が必要です。

清算条項について

この条項を定めることによって、離婚協議書の契約内容に定めのない事項については、今後お互いに一切の金銭請求ができなくなります。
離婚協議書を作成する重要ポイントの一つとなりますので、作成する際には「清算条項」を設定すべきかどうかも含めて慎重に検討しましょう。契約内容に漏れがないかをしっかり確認しておかないと、後々になって取り返しのつかないことになる可能性がありますので、注意をしてください。

公正証書について

離婚協議書は、「公正証書」として作成することをおすすめします。
その理由は、前述のように「法的効力の担保」や「強制執行が可能となる点」、「年金分割の請求手続き」などがあります。
作成した「離婚協議書」を公正証書にすることを当事者が合意した証として、この条項を定めて、強制執行認諾約款付の公正証書の手続きを実行できるようにしておきましょう。

離婚協議書の作成におけるその他の注意点

離婚協議書テンプレートの活用

テンプレート(雛形)を活用して自身で離婚協議書を作成する際には、「本来取り決めておくべき内容を見落としていないか」、「夫婦間の特有の事情に合った内容となっているか」など、本当にこの条件でよいのかを慎重に確認し注意して作成する必要があります。
なぜなら、テンプレートは条項のバリエーションもその中身も、あくまで一般的に盛り込まれることが想定される内容で作成されていますので、個々の状況からはかけ離れた内容となっている可能性があります。
なお、修正しながら作成しているうちに、離婚協議書全体としての整合性が崩れてしまっていることも考えられますので、その点も繰り返し見直しながら注意して作成してください。

結婚(婚前)契約書・離婚協議書のテンプレート紹介
離婚協議書(公正証書前提)

離婚協議書(公正証書前提)

離婚協議書とは、夫婦が離婚する際の約束事を書面化した契約書です。
離婚する場合、様々な取り決めをおこなわなければなりません。子供の親権、養育費、面会交流、そして財産分与、年金分割、慰謝料など多岐に渡ります。それぞれについて、合意した内容を記載します。
本協議書テンプレートでは、執行文言付の公正証書についての条項を設けていますが、公正証書を作成することにより法的拘束力が高まり、たとえば合意に反した場合、裁判所の判決がなくても強制執行が可能になります。また、文書の信頼性も高まるため、取り決め事項に関する証明を求められた場合にも役立ちます。
なお、本書は子供がいる/夫婦共有名義にて住宅ローン(連帯債務)を利用している場合を想定した内容になっています。協議の内容に即してWordで適宜修正のうえご利用ください。

<監修:エニィタイム行政書士事務所行政書士KIC事務所
※テンプレートには赤文字で解説が書かれています。使用時には削除してください。
※テンプレートのご利用について、当社では責任を負いかねます。ユーザー様ご自身の責任においてご利用いただきますようお願い致します。

離婚協議書を作成するタイミング

「離婚協議書」を作成する時期については法令によって定められているわけではありません。従って、離婚届を提出する前後どちらで作成してもよいことになります。
しかしながら、離婚届を提出し、離婚が成立した後になってから諸々の条件を協議し始めた場合、万が一条件の詳細が合意に至らなかったら、結果として家庭裁判所の調停や審判が必要になってしまいます。
また、財産分与や慰謝料の請求権には、離婚の成立からそれぞれの期限内に請求しなければ消滅してしまう時効があります。先に離婚が成立してしまうと、その後に財産分与などの条件がスムーズに合意にいたらず、この期限を過ぎてしまうことも考えられます。
そのようにならないためにも、協議離婚をする場合には、離婚届を提出する前にしっかりと条件などについても合意した上で「離婚協議書」を作成しておくことをおすすめしますし、その方が一般的です。

まとめ

離婚後の新たな人生の出発に際して、その後のトラブルを心配することなくスッキリとスタートするためにも、「どのような方法で」、そして「どのような条件・内容」で「離婚協議書」を作成すべきか、その重要なポイントはご理解いただけましたでしょうか。
離婚協議書テンプレートを活用してご自身で協議離婚の合意内容を整理し「離婚協議書」として作成する場合には、本コラムも参考に、最終的には法的な効力や強制力も担保できる形にまとめ、合意できることを願っております。

執筆者情報

エニィタイム行政書士事務所 代表 中村 充(行政書士)
早稲田大学商学部卒業後大手通信会社に入社、法人営業や法務業務に携わる。2009年に行政書士資格を取得し、2017年、会社設立及び契約書作成に特化した事務所を開業。弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士等各種専門家との連携体制を構築し、企業活動のバックオフィス業務すべてのことをワンストップで対応できることも強み。
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行政書士KIC事務所 代表 岸 秀洋(行政書士・銀行融資診断士)
司法書士事務所での勤務を経て、2006年に行政書士試験に合格、2014年に行政書士登録開業する。司法書士事務所勤務時代から約100件以上の会社設立サポートを経験してきたなかで、単なる手続き業務にとどまらない伴走者としてのサポートをしていきたいと考えるようになる。事業計画・損益計画の作成から融資のサポートや資金繰り計画など財務支援までおこなうのが強み。
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