婚前契約書を作成する際のポイント【テンプレート付】

最終更新日:2024年04月26日

婚前契約書についての解説記事

日本でも浸透しつつある「婚前契約書」。結婚前に、お互いが婚姻後の約束やルールを話し合い、合意した事項もしくは誓約した内容を「婚前契約書」として書面化したものですが、契約書にする場合のポイントを解説します。
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婚前契約書とは?

はじめに、「婚前契約書」に法的効力はあるのか?この点が、これから婚前の協議をし、書面としてその内容を作成するうえでの最大の関心事のひとつではないでしょうか。
結論から申し上げると、契約である以上は法的効力が発生します。しかし、その内容によっては法的に無効であったり法的強制力が発生しなかったりもします。
大事なポイントは、「婚前契約にて合意する内容のひとつひとつが法的にどうなのか?」といった点を考慮する必要があるということです。

契約書面の「タイトル」についてのチェックポイント

冒頭にて説明したとおり、「婚前契約書」の法的効力は、契約書というタイトルであるからという理由で、その中身のすべてが法的に効力のあるものとなるわけではありません。
従って、婚前の合意内容を書面として残す場合のタイトルは、「婚前契約書」であったり「婚前誓約書」であったり「合意書」であったりと自由に決めることができますが、双方が守るべきことを取り交わし残すわけですから、「婚前契約書」というタイトルで作成する方が適切な形と言えるでしょう。

「婚前契約(プレナップ)」と「夫婦財産契約」

日本においてはまだまだ馴染みの少ない「婚前契約書」ですが、欧米においては一般的なものとして浸透しているようです。
「夫婦財産契約」という財産に関する事項を主にした婚前の契約が、特に富裕層や実業家など婚前から多額の資産を保有している方々の間において取り交わされています。離婚時にトラブルがないように、あらかじめ婚姻前に財産分与について話し合っておくことが一般的であり、広く利用されてきたからでしょう。
実は、あまり一般的ではないかもしれませんが、日本においても「夫婦財産契約」は民法で規定されているので、夫婦間で独自の財産分与に関する取り決めをすることが法律的にも可能となっています。
ただし、法を無視してなんでも自由に契約内容を定められるということではありませんし、第三者に対抗するには「登記手続き」が必要となることから、実際に「夫婦財産契約」の制度を活用したい場合には、専門家に相談されることをお勧めします。
そして重要なポイントは、「夫婦財産契約」は婚姻前にしか契約できないという点です。

婚前契約書に定めておくべき内容

婚前契約書の内容については、あくまで婚姻後の夫婦生活をトラブルなく幸せなものにしていきたいといったプラスの視点で、お互いの価値観や大切にしていることを確認し合い、互いに遵守していく事柄を約し合うことが一番の目的であると考えられます。
従って、話し合う当事者によって婚前契約書の内容は千差万別となり、取り決めなければならない定型的な条項などは存在しないといえるでしょう。事前に話し合い確認しておきたいことを自由に盛り込めばよいのです。

一般的に盛り込むことが想定される内容について

役割の分担について

仕事や家事、子育てなどの役割や分担について確認し合います。
特に共働きのケースなど、仕事と家庭の両立のためにお互いに協力し合い、家事にも子育てにも対等に取り組んでいくことが時代的にも当然のこととなっています。
結婚後、あるいは子供を授かってからトラブルにならないためにも、事前に協議しておく重要なテーマではないでしょうか。

収入や家計について

家計については、収入から家計への支出の割合や管理の方法などを取り決めておきます。各家庭のお財布事情は千差万別です。共働きのケースが多い昨今ですが、お金の問題はトラブルのもととなりやすいので、最重要テーマのひとつだと考えられます。

財産について

財産については、共有財産とするべきものと、それぞれが所有する特有の財産とするものを明確にしておきます。結婚前からあまり考えたくないことかもしれませんが、離婚した際の財産分与において、婚前に所有していた個人の財産は離婚時の財産分与の対象にはなりませんので、共有財産と特有財産を明確にしておくことが重要なポイントになります。

不貞行為や暴力行為について

浮気などの不貞行為や疑われる行為、DVや暴力的な行為についての禁止については、書くまでもなく当然のこととして敢えて入れる必要がないように考えがちですが、結婚生活は長いものになります。決してそのようなことを起こさないよう約束し合う意味でも、また、万が一起こした場合にどうするかを取り決めておくことにより抑止力としての効果もありますので、盛り込むべき重要項目となります。

ギャンブルや借金などについて

ギャンブルや借金などの行為の禁止についても当然の事項にはなりますが、やむを得ない事情が発生した場合や、借金ではなくても投資行為の場合なども含めて、事前に必ず相談をし合い独断では決して行わないことなどを取り決めておきます。取り返しのつかない状態になる前に夫婦で話し合えるように、細かくルールを決めておくことが重要となる事項です。

親族や友人との関係について

お互いの親族や友人との関係を大切にすることは当然として、そのために行うべきこと、意識すべきこと、気をつけるべきことなどのルールを定め、お互い努力していくことを確認し合い取り決める事項になります。万が一、互いの両親に介護が必要となった場合のことなども含めて検討するとよいでしょう。

お互いの愛情や家庭を大切にするための行為について

お互いの愛情を確認し合うためのルールや、家庭を大切にするためのルールなどを取り決めた事項です。子作りに関しては、子供が欲しい時期なども含めてお互いの考えや計画は違うかもしれません。その点に関しても結婚後すれ違いやトラブルに発展しないためにも、重要な話し合いのテーマになるでしょう。

婚前契約書を作成する際の注意点

前述してきたとおり、婚前契約書はお互いに取り決めたことを自由に盛り込み作成することができます。しかしながら、その内容が法的な観点から見たときに有効であるとは限らないことはこれまでも述べてきました。
ここからは、どのような事項について法的な観点から注意をする必要があるかを解説していきます。

盛り込んだとしても無効となる可能性があるケース

離婚の原因について

婚前契約にて「不貞行為や暴力DVなどがあった場合には、離婚する」といった内容が盛り込まれているケースがよくありますが、争いとなった場合には最終的な判断は家庭裁判所がすることになります。従って、民法に定められた離婚事由を離婚に関する事項に盛り込んだとしても、必ずしも法的効力があるわけではないことに注意してください。

常識的な範囲を超えた高額な慰謝料など

離婚事由の内容と併せて、不貞行為を犯したことなどを原因として離婚に至った場合には、あらかじめ慰謝料の額を定めているケースが多いかと思われます。もちろん、自由にその慰謝料の額を決めて盛り込むことはできますし、敢えて慰謝料の額を高額にすることで、抑止力を働かせる効果があるかもしれません。
しかし、いくら婚前契約にて合意していたとしても裁判で争いになった際には、公序良俗に反する内容として、あまりに高額な慰謝料は無効になる可能性があります。

親権や養育費について

離婚した際の親権や養育費の取り決めについても、婚前契約にて自由に定めることはできますが、もし契約に反して争いになった場合には最終的な判断は家庭裁判所が行うことになります。親権や養育費は、子供の利益が最も重要となりますので、婚前契約にて定めていてもその内容が必ずしも法的強制力があるわけではない事に注意してください。

公序良俗について

前述の慰謝料の額でも触れましたが、公序良俗を無視したことを盛り込んでも法的効力はありません。
仮に、お互いが納得し合って取り決めた内容であっても法的強制力はありませんので注意してください。

婚前契約書は婚姻前に作成してください

婚前契約書は、その名のとおり「婚前」に契約しなければなりません。
これはどういうことかといいますと、婚姻後では「婚前契約」という形では契約できないことになります。
では、「婚姻前」と「婚姻後」の契約では一体何が違うのか?
民法では、「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。」というように定められています。
ですから婚姻後の契約は、契約したとしてもその契約はいつでも取り消される可能性があり、不安定な契約になってしまいます。

ここで、「婚前契約」の出番があるわけです!

「婚前契約」は、相手の同意がなければ「変更・取消」ができない契約となります。ここに、「婚前契約書」の効果としての重要なポイント・意味があるわけです。

結婚(婚前)契約書・離婚協議書のテンプレート紹介
婚前契約書

婚前契約書

婚前契約書とは、婚姻前に当事者同士が話し合い、合意したうえで作成する契約書です。
婚姻後の夫婦生活を円満にしていくため、お互いの考えを明確にし、双方が合意した内容を書面に残すことが一番の目的です。そのため、内容に決まりはありません。
本テンプレートでは、収入と家計の運営方法や、共有財産と特有財産の区分、役割分担や子の養育に関する方針、親族関係、また、肉体的・精神的暴力や不貞行為についての誓約など様々な項目を設けています。必要に応じてWordで追加・削除し、カスタマイズしてご利用ください。
将来的に何らかのトラブルが発生した際も、明文化した契約書があれば、解決もしやすくなるはずです。

<監修:エニィタイム行政書士事務所行政書士KIC事務所
※テンプレートには赤文字で解説が書かれています。使用時には削除してください。
※テンプレートのご利用について、当社では責任を負いかねます。ユーザー様ご自身の責任においてご利用いただきますようお願い致します。

まとめ

日本では文化や慣習などから、婚姻前から離婚を想定した取り決めをすること、財産に関する現実的なことを話し合い確認し合うことに、抵抗を感じる方も少なくないかもしれません。
まだまだ馴染みのない「婚前契約書」ですが、あくまで末永く幸せな夫婦生活を送るために、結婚後のすれ違いやトラブルを防ぐ効果的な手段として広く一般的になれば、離婚率の低下などにも効果があるかもしれません。
そして婚姻前に締結する「婚前契約書」でなくては、法的な目的を達成することができないことがあるのも事実です。
これから長い夫婦生活を送っていくにあたって、将来の幸せな家庭を創る大目的のために、「婚前契約書」の作成がその重要な役割を果たしてくれることを願っています。

執筆者情報

エニィタイム行政書士事務所 代表 中村 充(行政書士)
早稲田大学商学部卒業後大手通信会社に入社、法人営業や法務業務に携わる。2009年に行政書士資格を取得し、2017年、会社設立及び契約書作成に特化した事務所を開業。弁護士・司法書士・税理士・社会保険労務士等各種専門家との連携体制を構築し、企業活動のバックオフィス業務すべてのことをワンストップで対応できることも強み。
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行政書士KIC事務所 代表 岸 秀洋(行政書士・銀行融資診断士)
司法書士事務所での勤務を経て、2006年に行政書士試験に合格、2014年に行政書士登録開業する。司法書士事務所勤務時代から約100件以上の会社設立サポートを経験してきたなかで、単なる手続き業務にとどまらない伴走者としてのサポートをしていきたいと考えるようになる。事業計画・損益計画の作成から融資のサポートや資金繰り計画など財務支援までおこなうのが強み。
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