運送業の労働時間管理を怠る3つのリスク|管理方法や課題も紹介

最終更新日:2024年03月11日

運送業の労働時間管理を怠る3つのリスク
運送業は業務の性質上、労働時間の上限規制適用が猶予されていました。しかし、2024年4月よりついに運送業も労働時間の上限規制が適用されます。
中小の運送事業者で、今後どのように従業員の労働時間管理をすれば良いかわからず、困っている方もいるでしょう。

本記事では運送業の労働時間管理の概要、労働時間管理を怠った場合のリスク、徹底した労働時間管理のコツを紹介します。
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2024年から適用される運送業の労働時間規制の概要

2024年4月より、運送業にも労働時間上限規制が適用されます。事業者が労働時間管理を実施するにあたって、知っておくべき基礎知識をまとめて紹介します。

1年の拘束時間の上限は3,300時間

2024年より適用される拘束時間の上限は、年間3,300時間です。拘束時間とは休憩時間、手待ち時間を含めた業務開始から終了までの合計時間を意味します。

1日の拘束時間(労働時間)は13時間が原則

2024年以降は、ドライバーの1日の拘束時間(労働時間+休憩時間)は13時間が原則とされます。13時間には休憩時間や待機時間なども含まれます。
延長する場合でも15時間を上限とし、拘束時間の間に8時間以上の休憩が必要です。
なお、14時間を超えて労働する時間は、週2回を上限とします。

補足:長距離貨物運送かつ宿泊を伴う場合に限り、拘束時間を16時間まで延長できます。その場合も週2回を超えることはできません。

休息時間は継続して11時間

ドライバーの休息時間は、連続して11時間以上が原則となります。
4時間ずつ2回など、分割はできません。11時間以上の休息が難しい場合でも、最低9時間は継続した休息が必要です。

1日の最大運転時間は9時間以内

ドライバーの最大運転時間は、2日間の平均が9時間以内になるように調整しましょう。

連続運転時間は4時間、運転開始から4時間以内に30分以上の休憩を確保

連続して運転する時間は4時間まで、運転開始から4時間以内に30分以上の休憩を確保させなければなりません。
1回が概ね連続10分以上とした上で分割することも可能です。ただし、1回が「10分未満」の運転の中断は、3回以上連続してはいけません。

休日の取り扱い

休日とは休息期間と24時間以上の連続した時間を意味します。
休日はいかなる場合でも、30時間を下回ってはいけません。

時間外労働の上限は年間960時間まで

時間外労働の上限は年間960時間まで、この時間に休日労働は含まれません。

月45時間を上回る月の上限回数の規制は適用されない

ほかの業種は月45時間を超える時間外労働の上限回数は6回ですが、運送業は上限回数の規制が適用されません。

休日労働の回数は2週間に1回まで

休日労働の回数は2週間に1回までに制限されます。

運送業に適用される特例

2024年以降も、運送業には以下の特例が適用されます。

  • 分割休息の特例
  • 2人乗務の特例
  • 隔日勤務の特例
  • フェリー乗船の特例

運送業の仕事の性質上、労働時間の基準を遵守することが難しいこともあるため、特例が設定されています。
休息時間を分割して取ることが認められたり、2人で乗務している場合は拘束時間を20時間まで延長し、休憩時間を4時間に短縮できる場合があります。

労働時間の規制違反が認められた場合の3つのリスク

仮に労働時間管理を怠り、規制違反が認められた場合に、事業主は以下3つのリスクを抱えます。

懲役刑または罰金刑を受けるリスク

万が一労働時間の上限規制に違反した場合は、事業者に対して労働基準法違反で6ヶ月以上の懲役、もしくは30万円以下の罰金が科される可能性があります。
【参考】時間外労働の上限規制 | 働き方改革特設サイト | 厚生労働省

過労による従業員の健康リスク

労働時間の上限規制を上回る労働をさせていると、過労により従業員に健康被害が出たり、過労死につながったりする恐れがあります。
従業員を守るためにも、事業者は徹底した労働時間管理が必要です。

従業員からの訴訟・損害賠償請求を受けるリスク

万が一労働時間管理を怠り、従業員に健康被害が生じた場合は、訴訟・損害賠償請求されるおそれがあります。
また残業代や時間外労働をめぐる労使トラブルに発展する可能性もあるため、労働時間管理を徹底しましょう。

小規模運送事業者が抱える労働時間管理における課題の解決策

小規模運送事業者が労働時間管理で抱える課題と、労働時間管理方法を解説します。

IT点呼の導入

IT点呼とは、IT機器の画面を通じてドライバーと事務所にいる点呼確認者が対面で相手の状況を把握するシステムです。
ドライバーの位置はGPSで把握できますが、休憩時間か労働中なのかを正確に把握できません。IT点呼を用いれば、ドライバーが具体的に何をしているのかを確認できます。
またIT点呼の導入により、点呼確認者が事務所に残りドライバーが全員帰ってくるまで待つ必要がなくなります。

スマートフォン対応の勤怠管理システム

スマートフォン対応の勤怠管理システムで、労働時間管理をデジタル化しましょう。
運転手が出先で勤怠を打刻することもあるため、スマートフォン対応は必須です。
電話で勤怠報告している会社もありますが、時間が曖昧になったり、電話がつながらず勤怠の報告が遅れたりするリスクがあります。システムは1ユーザー数百円程度から導入可能なため、検討しましょう。

従業員への労働時間上限規制の研修・徹底周知

ドライバーにも、2024年以上の労働時間上限規制について研修・周知しましょう。
従業員が規制内容を知らないと、協力が得られないためです。制度改正についての説明と、自社で変更した労働時間管理方法について説明し、社内で一丸となって対応をおこないましょう。

その他IT化・効率化ツールの導入

労働時間管理のために、効率化ツールを導入する方法もおすすめです。例えば交通状況の共有システムがあれば、ドライバー全員で交通状況を把握し、拘束時間の上限を超えないように調整できます。
その他運行管理システムや求荷求車システムを導入し、手待ち時間の削減に取り組むことで、拘束時間内の無駄を削減し、配達に使える時間を増やせます。

ただし、システムすべてをIT化することは困難な事業者もいるでしょう。その場合は、荷物を車へ積む時間の見直しやワークフロー改善を実施することで、業務を効率化し労働時間を削減可能です。

まとめ

2024年より運送業にも労働時間の上限規制が適用されます。事業者側で労働時間管理を徹底し、従業員にとって働きやすい環境の構築が必要です。

万が一労働時間の上限規制違反が見つかった場合は、罰則や従業員の健康被害、労使間のトラブルが想定されます。

運送業の労働時間管理を徹底するためには、IT点呼やスマートフォン対応の勤怠管理システムなどの、デジタルツールの活用が有効です。
また従業員にも規制変更への理解を促し、全社で労働時間管理を徹底しましょう。

監修者情報

みのだ社会保険労務士事務所 代表 蓑田真吾(社会保険労務士)
大学卒業後、鉄鋼関連の企業に総合職として就職し、その後医療機関人事労務部門に転職。約13年間人事労務部門で従業員約800名、新規採用者1,000名、退職者600名の労務、社会保険の相談対応にあたる。社労士資格取得後にみのだ社会保険労務士事務所を開設し、独立。東京都社会保険労務士会所属(登録番号 第13190545号)。
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