始末書と顛末書の違いとは?具体的な書き方や例文、テンプレートを紹介
最終更新日:2024年08月28日
始末書とは、ミスやトラブルの原因と経緯を説明し、謝罪と再発防止の誓いを記した文書です。しかし、書く頻度は少ないため、書き方に迷う方も多いでしょう。
本記事では、始末書の書き方や例文、顛末書との違いを解説します。
- 始末書とは
- 始末書を書く目的
- 始末書は強制できるのか
- 顛末書とは
- 始末書と顛末書の違い
- 始末書の内容
- 事象が起こったときの状況
- 反省・謝罪の言葉
- 再発防止策
- 始末書を書く際の注意点
- 提出期限を順守する
- 署名または押印する
- 事実を正直に書く
- 始末書のテンプレート・例文
- 始末書のテンプレート
- 始末書の例文
- まとめ
始末書とは
始末書は、業務上のミスやトラブルが発生した場合に従業員が作成する文章です。
まずは始末書を書く目的や顛末書との違いなどを解説します。
始末書を書く目的
始末書とは、業務上のミスやトラブルの事実関係を明らかにするとともに、従業員に反省の意と再発防止を表明させる目的で作成される書類です。
企業側にとっては、トラブルが起こった原因や経緯を分析することで、適切に再発防止策を講じることができます。また、万が一従業員が問題を繰り返して懲戒処分や解雇となった場合に、処分の正当性を証明する重要な資料となります。
始末書を作成する主なシーンは以下のとおりです。
正当な理由がない遅刻や欠勤
正当な理由なく遅刻や欠勤を繰り返している場合は、会社の業務遂行にも影響するため、始末書を作成するのが一般的です。
遅刻や欠勤を繰り返す理由と今後の対応や反省の意を記載して提出します。
重要データの流出や消失
個人情報や顧客情報などの重要データの流出は、会社の信頼性を低下させる大きな問題です。「いつ・どこで・何が起こったのか」を明確にし、流出・消失した経緯を時系列で書きます。また、反省と謝罪とともに具体的な再発防止策を記載します。
器物損壊
器物破損は会社の商品販売の遅延に影響するため、始末書に発生原因と再発防止策を記載します。多大な被害を与えてしまった場合は、具体的な金額を記載し、真摯に反省する文言を添えて提出しましょう。
交通事故
交通事故では、事故が起こった時間や場所のほか、事故内容や原因、相手方の損害などを詳細に記載します。相手方にケガを負わせた場合は、ケガの程度やその後の状況など、交通事故による損害状況も記載しましょう。
始末書は強制できるのか
謝罪や反省は本人の意思に委ねられており、反省する意思がない従業員に対して始末書の提出を強制することはできません。
そのため、始末書を提出しないことを理由とした懲戒処分は、処分不当として無効になる可能性があります。
【参考】福岡県 労働相談 (始末書の提出)
ただし、従業員から謝罪の意思がない場合でも、企業側が注意・指導を繰り返し行い、改善の見込みがない場合には懲戒処分が有効とされる事例もあります。
つまり、始末書の提出を要求し、それを拒否したことは本人に改善の意思がないということを証明できるため、懲戒処分の有効性を担保するものになる可能性があるということです。
なお企業側は、始末書の提出を拒否する従業員に対しては、トラブルの経緯や原因を記載した「顛末書」の提出を求めることも可能です。
始末書の提出を拒否する従業員も、顛末書であれば提出しやすくなり、その内容をもって事情聴取を行うことは再発防止の観点から有効な手段です。
顛末書とは
顛末書は、始末書同様トラブル発生時などに報告する文書ですが、「顛末」(=事の最初から最後までの事情)という言葉が表すように、その経緯報告に主眼を置いた書類です。
事態を漏れなく正確に、かつ当事者・関係者以外が読んでもわかるように報告することが重要ですから、「トラブル・事故等の概要、発生日時、場所、関係者、経緯、影響範囲、対応状況、改善策・再発防止策」等必要な情報を事実に基づいて記載します。謝罪の言葉などは入れません。
顛末書の作成目的は、発生したトラブルについて、当事者のみならず組織として情報を共有し、適切な対応を取るとともに、問題点を洗い出して再発防止策を講じるためにあります。
始末書と顛末書の違い
始末書と顛末書はどちらも問題やトラブルに関する報告書ですが、それぞれ目的が異なります。
顛末書とは、ミスやトラブルがあったときに、その経緯や原因を報告するための文書です。問題が起こるまで、また、起こったことによる影響や対応など、一部始終を報告する書類として、事態の収束後に提出します。
一方、始末書は、個人の行動が原因でミスやトラブルを引き起こしてしまった場合などに、当事者本人が謝罪の意を示す目的で作成する書類です。
顛末書と同様、トラブルの経緯や原因、再発防止策なども記載しますが、反省文のような意味合いが強くなります。
始末書の内容
始末書に書くべき内容は以下のとおりです。
- 事象が起こったときの状況
- 反省・謝罪の言葉
- 再発防止策
それぞれの内容を詳しく解説します。
事象が起こったときの状況
事象が起こったときの状況を記載する際は、「いつ・どこで・何が起こったのか」を明確にすることが大切です。
日時や場所を明確にし、状況を具体的に記載することで、トラブルの原因を明らかにするとともに再発防止につなげられます。
また、始末書は主観的な意見や推測は避け、事実を客観的に記載しましょう。文章は簡略に書き、読み手にストレスがかからないように書くのがポイントです。
反省・謝罪の言葉
反省・謝罪の言葉は、「深く反省しております」「多大なご迷惑をおかけし申し訳ございません」など、反省の気持ちを強く表現しましょう。
相手の立場に立って謝罪の言葉を表現することで、反省の意が伝わります。
ただし、長文である必要はありません。反省を示す言葉であれば簡略的な文章でも十分伝わります。
再発防止策
始末書を書く際は、必ず再発防止策を書かなければなりません。「気をつけます」など、漠然とした表現は避け、具体的な対策を記載しましょう。
たとえば、業務用のスマートフォンを紛失して情報が漏えいした場合は、「遠隔ロックの実施により情報漏えいを防ぎます」など、具体的な対策を記載することで相手方に誠意が伝わります。
再発防止策を実行する意思を示すとともに、再発防止に真剣に取り組む姿勢を示しましょう。
始末書を書く際の注意点
始末書を書く際の注意点は以下のとおりです。
- 提出期限を順守する
- 署名または押印する
- 事実を正直に書く
提出期限を順守する
始末書は、ミスやトラブルの原因を明らかにし、本人の反省の意を示すものです。提出期限を守らないとトラブルを軽視していると捉えられ、信頼を低下させる要因となります。
提出期限を守ることは、トラブルを起こした本人の責任感や誠意を示すためにも重要です。
また、提出期限を守れば、企業側はトラブルの原因を早期に把握し、適切な対応をとることができます。
署名または押印する
始末書を書いた際は、署名または押印するのが一般的です。
また、始末書は会社とのトラブルが起きたときに証拠品となる重要な書類でもあります。押印する際はシャチハタでの押印は避け、印鑑を使用するようにしましょう。
なお、押印の有無は社内ルールによって異なります。従業員は提出前に確認しておきましょう。
事実を正直に書く
始末書を書く際は、責任逃れのために事実とは異なる事象を記載したり、隠ぺいしたりしてはいけません。正直に事実のみを包み隠さず書くことを意識しましょう。
もし事実と異なることを書いた場合は、再発防止の効果がなく再びトラブルが発生してしまう可能性があります。
また、起こった経緯を整理し、事実をすべて書くことで企業側からの印象も良くなります。
始末書のテンプレート・例文
始末書のテンプレート
始末書の記載内容は以下のとおりです。
- 日時
- 場所
- 詳細
- 原因
- 反省の意
始末書の例文
寝坊による遅刻
これは私の自己管理能力の欠如が原因であり、会社の皆様には多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
今後は二度と遅刻をしないようシフト時間を前日・当日に必ず確認し、早めの行動を心がけ、与えられた業務を全うするよう全力で業務に励むことをお誓いいたします。
業務用スマートフォンの紛失
紛失に気づいてすぐに、社内の担当部署に報告し、遠隔ロックの設定を依頼いたしました。警察にも遺失届を提出しておりますが、〇年〇月〇日〇時現在も発見されておりません。
また、当該スマートフォンには顧客情報が入っており、情報漏洩の事実については、〇月〇日現在調査中です。
この度の不始末は、私の不注意によるもので、深く反省しております。今後は、このようなことのないよう、不用意に業務用スマートフォンを取り出さず、細心の注意を払い、再発防止に努めてまいります。
誠に申し訳ございませんでした。
交通事故
・日時及び場所
事故は〇年〇月〇日の〇時頃、〇〇の交差点で発生しました。
・事故の概要
私が右折しようとしたところ、直進してきた対向車と衝突してしまいました。事故の原因は私の前方不注意によるものです。
・被害状況
事故により、対向車の運転手と同乗者に軽傷を負わせてしまいました。
・警察への連絡
事故発生後、速やかに警察に連絡し、事故の状況を報告しました。その後、警察からの指示に従い、交通事故証明書の申請を行いました。
・関係者への対応
追突した相手方は軽傷で済みましたが、相手方の車両が破損したため、修理が必要となりました。会社が加入している自動車保険が適用され、相手方も納得のうえで示談が成立しています。
・対応策と今後の取り組み
今回の事故を受けて、同様の事態を回避するために時間にゆとりをもって行動するとともに、細心の注意を払って運転する所存です。
最後に、この事故によってご迷惑とご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。今後はより慎重に行動し、二度と事故を起こさないようここに誓います。
社外への始末書
誤発注の品目は、〇〇(品番:〇〇)で、数量は〇〇個、金額は〇〇円です。誤発注の原因は、発注担当者のミスで、正しい品番と数量を入力しなかったことによります。
誤発注による影響は、貴社において、〇〇(品番:〇〇)〇〇個が不足することとなります。ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
誤発注分の品物は、〇〇(品番:〇〇)〇〇個を、〇月〇日までに貴社へ発送いたします。
今後はこのようなことがないよう、発注の際にはダブルチェックで確認するとともに、管理体制の見直しと改善策を立てていきます。
この度は誠に申し訳ありませんでした。重ねてお詫び申し上げます。
まとめ
始末書は、業務上のミスやトラブルの事実関係を明らかにするとともに、反省の意と再発防止を表明させる目的で作成される書類です。
提出の強制はできませんが、従業員の行動を改善してもらうために作成する文書であり、企業側にとっても良い影響をもたらすものでもあります。
従業員側は起こしたミスやトラブルの内容や経緯を正直に書き、企業側は始末書を書く意味を適切に伝えることが大切です。
執筆者情報
きた社労士事務所 代表 北 光太郎(社会保険労務士)中小企業から上場企業まで様々な企業で労務に従事し、計10年の労務経験を経て独立。独立後は企業の労務支援のほか、Webメディアの記事執筆・監修を中心に人事労務に関する情報提供に注力。Webメディアの専門性と信頼性の向上を支援するとともに、読者にわかりやすく正しい情報を伝える社労士として活動をしている。
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